情報過多の時代だからこそ重要になる、自分の考えをまとめる力。人の意見を聞き、自分の考えをまとめ、組み写真を制作する高校生ワークショップ「PHOTO STADIUM (フォトスタジアム)」が、2019年8月に岡山県倉敷市で開催された。その写真漬けの2日間をレポートする。
写真撮影と作品づくりのテクニックをプロから学ぶ
「良い写真とは何かを皆で考え、今時点の自分の考えを持つ」ことを目的に作品制作に取り組む高校生ワークショップが「PHOTO STADIUM」だ。これは倉敷フォトミュラル(大型布にプリントされた写真を倉敷駅前アーケードに展示するフォトイベント)の関連イベントで、岡山県立大学北山研究室のSAKURA Projectによって運営される。13回目となる今年は倉敷市芸文館で、8月15・16日(A)と8月17・18日(B)の日程で2回開催された。
講師は、審査員を務める写真評論家の飯沢耕太郎氏をはじめ、フォトクラシック代表の山崎信氏、日本旅行写真家協会理事の川名廣義、倉敷フォトミュラルを主宰する北山由紀雄氏の4名。カメラレクチャーや撮影、講評などを行なって、A4プリント10点以内の組み写真と、倉敷フォトミュラル公募のテーマ「艶」の作品を制作する。
1日目は貸し出し機材である「キヤノン EOS Kiss X8i」のレクチャーを受け、倉敷の美観地区とその周辺を2時間ほど撮影。その後、グループごとにSAKURA Projectのメンバーが進行役となり、プリントした写真について話し合いを繰り返し、関連作品をさらに出力し並べて検討していく。そして、テーマとストーリーを考えることがこの日の宿題となる。配布資料には組写真の作り方テキストもあり、予習や復習が欠かせない。
2日目は、ストーリーに沿う作品を講師の助言も合わせて自分で判断し、さらに出力して組写真を完成に近づけていく。同時に倉敷フォトミュラルの公募作品も選択。自分でまとめた作品はA4に出力してテーマ、タイトル、ストーリーを講師陣の前でプレゼンし、講評を受けて提出となる。最後に山崎さんの古い写真や写真の歴史についての講義があり終了だ。PHOTO STADIUMならではの独特で厳しいカリキュラムである。
グランプリと佳作は全員が高校1年生!
今年、A日程は台風10号の影響で初日の15日は中止となり、16日も開始を1時間繰り下げた。その中で23名の参加者は、撮影と出力プリントの組写真をなんとかまとめていた。B日程は、1日目30名が参加し、2日目は4名欠席で26名が作品を提出。テーマやタイトルを考えるには語彙も必要となる。人の作品も見て講評を聞くことで高校生たちは、写真は撮って見せればいいというものではなく、「何を伝えるのかが重要」としっかり学んだようだ。
そして、9月5日に本ワークショップで制作した作品の中からグランプリと佳作を飯沢氏が選考。グランプリは、坂出商業高等学校1年の湯之前杏樹さんの作品「迷い旅」に決まった。受賞者は講評会で表彰され、入賞作品は倉敷フォトミュラル開催中に天満屋倉敷店で展示される(2019年11月2日〜11日)。
PHOTO STADIUM 参加高校
岡山県立岡山一宮高等学校、岡山県立岡山東商業高等学校、岡山県立総社高等高校(初参加)、岡山県立西大寺高等学校(初参加)、岡山県立水島工業高等学校、岡山県立津山工業高等学校(初参加)、岡山県立備前緑陽高等学校、倉敷高等学校(初参加)、岡山県立玉野光南高等学校、香川県立坂出高等学校、岡山県立倉敷青陵高等学校、香川県立坂出商業高等学校
PHOTO STADIUM 選考結果
<グランプリ>
「迷い旅」湯之前杏樹さん (香川県立坂出商業高等学校1年)
グランプリ選評
「他の作品は、どちらかといえば偶然性に頼って撮影し、なんとなく選んだというものが多かったのですが、湯之前さんはきちんと狙いを定めて作品として完成させています。自分の手や足を画面の中に効果的に取り入れ、ちょっとミステリアスな世界に見るものを誘いこみます。高校1年生にもかかわらず、観察力、表現力がとても高いことに驚きました。このやり方をうまく発展させていけば、さらに高度な作品作りに結びついていくのではないでしょうか。」
審査員:飯沢耕太郎氏
<佳作>
「2人の女性の生き方」藤本愛永さん (香川県立坂出商業高等学校1年)
「光と陰の帰り道」濱田聖斗さん (岡山県立水島工業高等学校1年)
「青」長岡充希さん (岡山県立岡山一宮高等学校1年)
「白昼夢」中村優奈さん (岡山県西大寺高等学校1年)
倉敷フォトミュラル
■商店街部門
開催場所:倉敷駅前アーケード
日程:2019年10月25日(金)~ 11月13日(水)
展示内容:大型布プリント57点
■PHOTO STADIUM 作品展
開催場所:天満屋倉敷店2F
日程:2019年11月2日(土)~ 11日(月)
展示内容:16×24アクリルフレーム
■作品講評会
開催場所:倉敷市芸文館会議室
日程:2019年11月3日(日)13:00〜(予定)
講師:飯沢耕太郎
参加無料、自由参加
〈取材〉川名廣義