キヤノンは、デジタル一眼レフカメラのフラッグシップモデル「EOS-1」シリーズの最新機種「EOS-1D X Mark III」を2020年2月中旬に発売する。価格はオープン。キヤノンオンラインショップ直販価格は800,000円 (税別)。
<2020.1.31> 発売日が2020年2月14日 (金) に決定。
「EOS-1D X Mark III」は、Inter BEE 2019などでも展示されていた「EOS-1」シリーズの最新モデル。フラッグシップモデルとして、キヤノンの最先端技術や最高クラスの性能を備え、スポーツや報道、スタジオ撮影などプロの撮影現場に求められる高い性能と信頼性に応えたデジタル一眼レフカメラだ。プロフォトグラファーだけでなく、動画も撮影するプロフェッショナルのニーズにも応えるべく、高画質や高速連写、快適な操作性を高い次元で実現したデジタル一眼レフカメラとなっている。
■基本性能が大幅に向上
新開発の有効約2010万画素フルサイズCMOSセンサーを搭載。さらに、新映像エンジン「DIGIC X」、AF専用センサーなどのキーデバイスが一新され、従来機種よりも基本性能が大幅に向上している。
AF・AE (自動露出制御) を追従させながらの撮影では、光学ファインダー撮影時で最高約16コマ/秒、ライブビュー撮影では最高約20コマ/秒の高速連写を達成。さらにRAW/RAW+JPEGで1,000枚以上の連写を実現する。
CMOSセンサーの低ノイズ化と「DIGIC X」によるノイズリダクション性能の向上により、静止画撮影の常用ISO感度が最高ISO102400まで拡大。暗所でもノイズを抑えた撮影が可能となっている。
さらに、新開発の16点分離ローパスフィルター「GD ローパスフィルター」により、4点分離であった従来機種よりも解像感が向上。斜め方向にも分離することで、斜め方向の色モアレや縦横方向の輝度モアレも効果的に抑制するようになった。
また、それぞれのレンズ設計値に基づいた補正を行うことで、収差や回折ボケを適切に補正する「デジタルレンズオプティマイザ」がRAW現像時だけでなく撮影時から使用可能となっている (TS-Eレンズは非対応)。
人間の視覚特性に基づくHDR PQガンマによるHEIF (10bit) 記録が連続撮影時も可能で、ハイライト部での滑らかな階調や深い色合いを再現できるようになっている (電子シャッター撮影時を除く)。
■高精度AFを実現
従来機種で開発したミラー振動抑制システムをさらに発展させた新ミラー駆動システムを開発。光学ファインダー撮影時の像消失時間を短縮し、高速撮影時も被写体を追いやすいファインダー視野を実現する。
また、新たに開発したAFセンサー「High-res AFセンサー」を搭載。最大191点 (クロス測距点最大155点) の測距点から得られる高解像な信号を解析することで、光学ファインダー撮影時には高い合焦精度を実現。AF測距輝度範囲も拡大している。
ディープラーニング技術を用いて開発した頭部検出アルゴリズムにより、光学ファインダー、ライブビューのいずれの撮影時でも、顔や瞳が検出できない状況でも安定した追尾を実現する。さらにライブビュー撮影時では、被写体の瞳を検出してフォーカスを合わせる「瞳AF」も併用可能だ。
高い追尾性を実現する「AIサーボAF IV」を搭載しており、撮影する被写体に合うAF特性を選ぶだけでAIサーボAF/サーボAF撮影を行える「AFカスタム設定ガイド機能」に、「被写体追従特性」と「速度変化に対する追従性」を自動的に設定するAF特性「Case A (Auto)」が追加されている。また、動体に対するアルゴリズムの進化により、かげろうや遠ざかる被写体でも精度の高いAIサーボAF/サーボAFが可能となっている。なお、かげろうに対してはファインダー撮影時のみ対応となっている。
「デュアルピクセル CMOS AF」も進化した。ライブビュー撮影において、映像表示範囲の最大約100% (縦) ×約90% (横) でAFが可能となっている (一部非対応のEFレンズあり。AFエリアが約80%×約80%となるレンズでは、自動選択時AFエリア分割数最大315分割)。
さらに、自動選択時AFエリア分割数の細密化 (最大525分割) により、被写体を捉えて滑らかに追尾することが可能だ。新映像エンジン「DIGIC X」との組み合わせにより、ライブビュー撮影時のAF測距輝度範囲も拡大されている。
■通信機能
Wi-Fi/Bluetoothに対応し、スマホなど携帯端末との連携が可能。また、GPS機能も搭載されている。有線LAN機能では高速インターフェースを採用し、従来機種より高速に画像データの転送が可能となっている。ネットワーク接続に関するユーザーインターフェースが改善され、通信機能の設定から活用までをメニューのネットワークタブから選択・設定が可能。通信設定をオフラインで編集可能で、複数ネットワークの設定も効率化されている。
FTP、FTPSに加え、SFTPでの転送が可能で、最新の認証・暗号化通信技術に対応した安全性に優れる通信を実現。LAN接続の認証規格「IEEE 802.1X」にも対応し、スポーツイベント会場など、EAP認証が求められる環境にも対応する。
タブレット端末上で、ほとんどの撮影操作、設定が完結できる機能「Browser Remote」(2020年4月ファームアップ予定) により、タブレット端末とカメラ本体の接続時にSSL暗号化通信に対応し、遠隔操作時の安全性が向上。従来の「EOS Utility」に加え、「Browser Remote」でも主要な新聞社/通信社の参画するIPTC (国際新聞電気通信評議会) のメタデータが編集可能となる。「ロボティックカメラシステムCR-S700R」(2020年2月下旬発売予定) にも対応し、「EOS-1D X Mark III」の遠隔操作が可能となる。
■操作性
ボディには、堅牢性と軽量化を両立できる高い剛性を備えたマグネシウム合金製ボディが採用され、高い信頼性を確保。カメラ本体の外装部品に新構造を採用するなどして、従来機種より約90gの軽量化を実現。重さ約1,440gとなっている。
シャッターユニットは、50万回の作動試験をクリアしたものが搭載されている。カードスロットは、CFexpress用のダブルスロットを搭載。CFexpressカード採用による書き込み速度の向上と、RAW+JPEGでも余裕ある連続撮影可能枚数を実現した。
電源には「バッテリーパック LP-E19」を使用する。電力消費マネジメントの見直しにより、撮影可能枚数が約2,850枚に増加している。
AFスタートボタン内部に指の動きを光学的に検知するポインティングデバイス「スマートコントローラー」を新たに導入。ボタンから指を離さずに、すばやくAF測距点位置を設定することが可能となっている。
暗所でのメニュー操作や再生操作をサポートするため、背面の一部の操作ボタンにバックライトが採用されている点も見逃せないポイントだ。
■動画性能
動画性能も大きく進化した。YCbCr 4:2:2/10bit/Canon Log に対応しており、階調と色彩の再現性に優れた動画の内部記録が可能となっている。また、RAWデータによる動画の内部記録も可能で、RAWデータの解像度や階調性、編集耐性の高さを生かし、高度な動画編集や静止画切り出しを実現する。
クロップ (切り出し) なしのオーバーサンプリングによる4K/60p動画撮影を実現することで、レンズの画角を生かした動画撮影が可能。また、設定を変更することで、クロップした4K動画の撮影にも対応し、クローズアップした迫力のある撮影が可能だ。
■別売アクセサリー
「ワイヤレスファイルトランスミッター WFT-E9B」(希望小売価格 税別80,000円) も2020年2月中旬発売。従来機種の「WFT-E8B」と同様に、2.4GHz帯と5GHz帯の無線LANに対応する。5GHz帯の高速通信規格「IEEE802.11ac」で新たに2×2 MIMOに対応し、従来機種より高速に画像データの転送が可能となっている。最大約150mの長距離無線通信に対応し、デジタルシネマカメラ「EOS C500 Mark II」にも装着可能だ。
Canon EOS-1D X Mark III 主な仕様
有効画素数 約2010万画素
撮像素子 CMOSセンサー
マウント キヤノンEFマウント
ISO感度 ISO 100~102400 (拡張 ISO 50相当、ISO 204800相当、ISO 409600相当、ISO 819200相当)
シャッター速度 1/8000~30秒 (メカシャッター)、バルブ
ファインダー ペンタプリズム使用、アイレベル式光学ファインダー 倍率 約0.76倍
画像モニター 3.2型 約210万ドット TFT式カラー液晶モニター (タッチパネル)
記録媒体 CFexpressメモリーカード (タイプB:2カードスロット)
サイズ (幅×高さ×奥行き) 約158.0×167.6×82.6mm
質量 約1250g (本体のみ)/ 約1440g (バッテリー、メモリーカードを含む)
付属品 バッテリーパック LP-E19、バッテリーチャージャー LC-E19、ケーブルプロテクター、インターフェースケーブル IFC-100U、ワイドストラップ L7
〈文〉柴田 誠