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学校対抗戦…ではなく写真を通して学生同士が交流! 例年と様子が違うニコン「TopEye全国高校生写真サミット」をレポート

2020年1月31日(金)~2月2日(日)の3日間、横浜美術館をメイン会場に開催されたニコンイメージングジャパン主催の「TopEye全国高校生写真サミット2020」。同社が全国の中・高校写真部に配布しているフリーマガジン『TopEye』の誌上フォトコンにおいて年間ポイント上位の15校を招待して毎年開催されているイベントだが、今年は大きな異変が。いったい、何が起こったのだろうか?

 

講師の写真家5名を5チームに分け、各校シャッフルされた9名1チームで写真の「ワークショップ」

このニコン「TopEye全国高校生写真サミット」はこれまで、1校3名の学生と顧問1名の4名が1チームとして、作品を求めて横浜の街を駆け回り、講師の写真家たちによる審査によってグランプリ、準グランプリ、優秀賞などを顕彰するイベントとして行われていた。

 

しかし今年は趣旨を大きく変更。講師の写真家5名(藤岡亜弥、秋元貴美子、秋山華子、水咲奈々、ミゾタユキの各氏)それぞれに学生が9名ずつ振り分けられ、5チームに分かれて2日間、撮影からセレクトまでアドバイスするワークショップ形式となった。なお、同じ高校のメンバーが同じチームにならないよう振り分けられた。

しかも作品のプレゼンは、チーム単位ではなく選手個人で行うことに。さらにチーム単位での順位付けは行われず、前述の写真家5名に加え、TopEyeフォトコンテストの審査員・熊切大輔氏を加えた6名の審査員が、それぞれ選んだ個人作品を表彰する。主催のニコンイメージングジャパンによると「写真を通して力を磨く場を提供し、高校生たちの出会いや共有、共感、成長の場を提供することが目的」としている。

初日は開会式と各写真家チームのグループ活動(指導・撮影・制作指導)。そして2日目には、自由度の高いグループ活動(撮影)が行われた。早くもチームごとに違う高校の学生同士が仲良くなり、撮影同行して協力し合う姿があちらこちらに見られた。その後、横浜美術館に戻った各チームは、写真家のアドバイスをもとに全員が各3~4点の組写真をセレクトし、エプソン販売株式会社の協力によってプリント作業が行われた。

プリントされた作品は、横浜美術館アートギャラリー1の壁面に設置された各自のスペースに、自らの手で貼り付けて展示。

そして同じ会場にて、それぞれの作品についてスライドを使っての発表会&講評が行われた。各チームを率いた写真家が、それぞれ作品の意図を知っているため、学生の発表に補足するような講評内容となっていた。

発表会終了後は懇親会が行われ、講師の写真家や他校の学生との交流を深めた。

 

他校の仲間と作品を作り上げていく未知の体験で学生たちは大きく成長

最終日は写真家・熊切大輔氏による特別講演からスタート。

続いて表彰式が行われた。挨拶に立ったニコンイメージングジャパンの代表取締役 兼 社長執行役員の北端秀行氏は「今回から個人戦という形で組み合わせも変えさせていただいた。去年まで以上に大変盛り上がったと聞いている。写真を撮るというのは、単なる記録だけではなく、記憶に残す行為。1枚1枚に魂を込めて撮った作品は、時代背景を写し、その時代の自分自身がどういう思いで撮ったかが必ず記憶に残る。そして将来、写真を見返して思い出す日が来る。それまで大変だろうがカメラを使い続けてほしいというのが、我々の強い思いだ」とコメント。

その後、2019年度のTopEyeフォトコンテスト年度賞の表彰式が行われ、最優秀賞の和歌山県立神島高等学校に賞状とトロフィー、副賞としてニコンD5600の18-140 VRキット、エプソンカラリオEP-10VAが贈られた。

▲TopEyeフォトコンテスト年度賞グランプリの和歌山県立神島高等学校のメンバー

 

そして、いよいよTopEye全国高校生写真サミット2020の表彰式に。審査員それぞれが選んだ各賞は以下の通り。

◆熊切大輔賞:山口県立下松高等学校・秋山遥香さん

◆藤岡亜弥賞:群馬県立富岡実業高等学校・石井百香さん

◆秋元貴美子賞:沖縄県立浦添工業高等学校・大城聖南さん

◆秋山華子賞:島根県立大田高等学校・小笠原利香さん

◆水咲奈々賞:沖縄県立知念高等学校・山内優輝さん

◆ミゾタユキ賞:群馬県立富岡実業高等学校・篠原謙吾さん

 

▲水咲奈々賞を受賞した沖縄県立知念高等学校・山内優輝さん(左)

 

表彰後の閉会式で壇上に立った熊切大輔氏は「今回、皆さんの作品はすごく良かった。どの作品も個性があり、表現力豊かでクオリティが高く、驚いた。可能性を感じて、今後がとても楽しみだ。濃厚な3日間を過ごせたのだろうと思う。今年は学校対抗戦ではなく、みんなが一緒になって作品を作り上げていくシステムに変えた。これは、われわれ写真家やニコンのスタッフが、どうにかして参加したみんなに得るものを持ち帰ってもらうか、いい経験にしてもらうか考え、準備を進めてきた。初めてのことなので、みんなに楽しんでもらえるか不安もあったが、みんなの写真を撮影する姿を見て、われわれの想像を遥かに超えて、良い作品を生み出してくれたと思う。この経験を今後も活かし、周りの人にも覚えたこと、体験したことを伝え、写真の楽しさを広げてほしい」と総括し、全日程を終了した。

 

なお、今回のTopEye全国高校生写真サミット2020の全作品展は2020年3月24日(火)~30日(月)にニコンプラザ新宿「THE GALLERY2」で、4月9日(木)~15日(水)にニコンプラザ大阪「THE GALLERY」で展示会が行われるので、近くに立ち寄った際は観てみてはいかがだろうか。

▲群馬県立富岡実業高等学校からは石井百香さん(左・藤岡亜弥賞)と篠原謙吾さん(右・ミゾタユキ賞)の2名が個人賞を受賞

 

イベント終了後に個人賞を受賞した学生に話を聞いた。ミゾタユキ賞を受賞した群馬県立富岡実業高等学校の篠原謙吾さんは「受賞してビックリしましたが、めちゃくちゃ嬉しかったです。自信はありました。写真部には行事を撮る程度かなと思って入部したのですが、とてもアートな作品を撮る部活ですごい。これからも撮り続けていきます」とコメント。

 

また、藤岡亜弥賞の同校・石井百香さんは「団体戦と違い、私個人はファンタジーな作品が好きで、今回はそういった作品を制作しました。まさか受賞できるとは思いませんでした。和歌山県立神島高校の子とか、グループで一緒になってやっぱりすごいなと刺激をもらいました。写真は一瞬を切り取る作業だけど、後で見返したら撮ったときの気持ちが蘇るので、とても好きです」と話してくれた。

▲写真家の熊切大輔氏(左)と、熊切大輔賞を受賞した山口県立下松高等学校の秋山遥香さん(右)

 

また、熊切大輔賞を受賞した山口県立下松高等学校・秋山遥香さんは「コンテストを気にせずに撮っていた写真ばかりだったので、賞をもらえるとは思ってもいませんでした。こういった作品は初めての試みで、どうかなと思ったんですが、好きな写真で受賞できたのが初めてですごく嬉しい。イベントの内容が変わったのは、以前に参加した先輩の話と違っていたので戸惑いもありましたが、講師の写真家の先生に気軽にアドバイスを聞くことができて良かったです。できれば、他校の人たちともっと写真を見せ合うことができればよかったと思います。写真は私の世界を広げてくれる“ツール”。これからも続けていきたいです」とのことだった。

 

■参加校一覧

宮城県農業高等学校、宮城県白石工業高等学校、新潟県立長岡農業高等学校、群馬県立富岡実業高等学校、千葉県立四街道高等学校、神奈川県立瀬谷高等学校、福井県立丹生高等学校、大阪府立成城高等学校、和歌山県立神島高等学校、島根県立大田高等学校、山口県立下松高等学校、愛媛県立今治北高等学校 大三島分校、八代白百合学園高等学校(熊本県)、沖縄県立浦添工業高等学校、沖縄県立知念高等学校