リコーイメージングは、CP+2020で参考展示を予定していた開発中の製品を紹介する「CP+2020 まぼろしの参考展示PENTAX製品」の動画を2020年5月15日に公開した。マーケティンググループの川内拓さんが司会を務め、商品企画担当の岩﨑徹也さんが3本の新レンズを、若代滋さんがAPS-Cフラッグシップ一眼レフカメラの開発状況をそれぞれ紹介する内容となっている。
なお、約40分の動画はライブ配信ではないため、リコーイメージングの公式サイトからいつでも見ることができる。また動画の公開に合わせて、レンズロードマップが更新されている。
■妥協のない高性能レンズ「HD PENTAX D FA★85mmF1.4ED SDM AW」
「HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW」は、2020年03月24日に開発発表されたKマウントのデジタル一眼レフカメラ用交換レンズ。85mmのレンズは、デジタル時代になってラインナップから抜けていた焦点距離ということで、岩崎さん曰く「とにかく早く出したかった」レンズだ。フィルム時代にあった「FA★85mmF1.4ED [IF]」が良い描写をするレンズだっただけに、要望の高い85mmをどのようなものにするか、ワクワクしながら開発を進めていたとのこと。
「HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW」は、4本目となる新世代のスターレンズで、単焦点レンズとしては「HD PENTAX-D FA★50mmF1.4 SDM AW」に続く第2弾となる。ポートレート撮影に使ってもらいたいレンズということで、色収差を徹底的に排除している。また、前玉に凹レンズを採用することで、なるべく光を曲げずにセンサーまで届ける工夫をしているそうだ。望遠系で凹レンズを使うのは珍しい。後方のボケをなだらかにするように、球面収差の形を注意深く設計しているとのことで、最高の85mmを目指している。
「PENTAX official」サイトの#おうちで楽しむPENTAX「大事なものを撮る ~家族編~」では、「HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW」のベータ機で撮影した作品も公開されている。また、開発発表時に告知された2020年後半の発売予定も問題なさそうだ。
■初お披露目となる「HD PENTAX-D FA 21mm Limited (仮称)」
今回の動画で初めて紹介された「HD PENTAX-D FA 21mm Limited (仮称)」は、フルサイズ対応のリミテッドレンズ。D FAレンズとしては初のリミテッドレンズで、ブラックとシルバーの2色で展開される。フルサイズのレンズということで、「PENTAX K1」シリーズのユーザーが使っているFAレンズにはない焦点距離を出したかったとのこと。超広角スナップを撮ってもらえるように、24mmよりもさらにグッと寄れる21mmに決定した。
岩崎さんによると、被写体に寄って立体的に写し出すような描写のレンズにしたいと思っているとのこと。被写体を際立たせながら、背景が雰囲気を残しながらボケていくレンズを目指しており、超広角ながらボケにこだわったレンズとなるようだ。レンズ駆動はDCモーターを採用して、防滴仕様になっている。サイズ感も手頃で、鏡筒はアルミの削り出しになっている。2021年中の発売を目指して開発が進められている。
■最高性能を目指して開発中の大口径標準ズームレンズ「HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8 ED PLM AW (仮称)」
開放F値2.8固定の大口径標準ズームレンズ「HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8 ED PLM AW (仮称)」も今回の動画で初めて登場した。こちらはAPS-Cフォーマット、KAF4マウントのレンズとなる。サイズが大きくなるため大口径レンズへの搭載が難しかったパルスモーター (PLM) を採用している。パルスモーターによるAFの高速化や静音性は期待してもらっていいとのこと。
画質に関しては、スターレンズの称号を与えており、最高レベルの性能となるように開発を進めているとのことだ。岩崎さんによると、現行の「smc PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED AL [IF] SDM」とは方向性の違うレンズになるとのこと。しかも次期APS-Cフォーマットのフラッグシップ一眼レフカメラにマッチするように開発しているそうなので、完成度の高さは充分期待できそうだ。
2021年のなるべく早い時期の発売を目指して開発が進められていということなので、2020年中に発売が予定されているAPS-Cフラッグシップモデルの発売から間を置かずに登場することになるのかもしれない。
現在 APS-Cフォーマットのレンズには、高性能なスターレンズをはじめ、個性的なDAリミテッドレンズ、扱いやすいズームレンズと計29本がラインナップされているが、「HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8 ED PLM AW (仮称)」を含めて、さらにバリエーションに富んだラインナップを作り上げていきたいと岩崎さんは語る。
また、最近発表されているレンズは性能を重視したものとなっているが、コンパクトなレンズ、扱いやすいレンズについても検討しているとのことだ。
■開発発表から8か月、APS-Cフラッグシップ一眼レフの気になる開発状況は?
2019年9月に開発発表されたAPS-Cフラッグシップ一眼レフカメラの開発状況については、商品企画部の若代さんが紹介してくれた。APS-Cフラッグシップ一眼レフは、「PENTAX K-7」以降の最上位機のコンセプトを踏襲して、トップクラスの高性能を小型ボディに凝縮すること、小型でありながら堅牢性や優れた操作性のあるボディにすることを大切にして開発されている。そのうえで、持てる技術を余すことなく投入するのが、開発中のAPS-Cフラッグシップ一眼レフだ。APS-Cクラスのカメラの中で、最高のカメラと呼ばれることを目指しているとのこと。
一番のこだわりは、光学ファインダー。気持ちよく撮影できて、想像力をかき立てるようなカメラにしたいという考えから、ファインダーの“見え味”にこだわって開発されているのだそうだ。
ファインダー倍率を1.05倍にまで高めるために、ペンタプリズムに高屈折率のガラス素材を採用している。これにより、フルサイズの「PENTAX K-1」シリーズと同等の広視野角を実現するという。ファインダー像も「K-1」並みのレベルで、ピントも合わせやすいとのこと。また、ファインダー性能のアップのために、ファインダー光学系を全面的に見直しており、覗きやすさなどにも工夫が施されている。
デザインは「 K-1」と同様、ペンタプリズムの面構成をモチーフにしたデザインを採用している。これはペンタックス共通のデザインアイデンティティとなるフィルム一眼カメラの造詣をオマージュしたもの。APS-Cフラッグシップモデルならではの個性的な部分として、動体性能の向上や小型軽量ボディをアクティブに使うことをイメージした、躍動感を感じさせるデザインとなっているとのことだ。
背面の操作系では、測距点レバーの操作性を見直した。駆動制御系やシステムなど、あらゆる点で見直しを図っているので、動体性能に関しても期待してもらっていいと、若代さんは力強く語っている。
さらに、新たなアクセサリーとして、専用のバッテリーグリップもお披露目された。ボディに合わせて開発されたもので、縦位置での握り心地や操作性で違和感がないように、部材の配置やグリップの形状などの検討を何度も繰り返したそうだ。
2020年中とされている発売予定に関しては、新型コロナウイルスの影響で困難な状況ではあるものの、発売を遅らせないような努力を続けているということだ。今後、開発発表の新しい情報に関しては、PENTAXオフィシャルのサイトやSNSなどで発信していくとのこと。第2弾、第3弾の動画配信にも期待したい。
〈文〉柴田 誠