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写真は伝えにくいメディアなのか? “見ること”を通して問う 普後均写真集『WATCHERS』

普後均さんの写真集『WATCHERS』が、ふげん社より発売された。

 

普後均写真集『WATCHERS』

 

普後均さんは、「FLYING FRYING PAN」や「ON THE CIRCLE」(2010年度伊奈信男賞受賞作) に代表されるように、物や人、場所が持つ意味を抽象化し、独自のイメージを追求し続けている。

この『WATCHERS』(見る人) は、「写真は伝えにくいメディアだ」という思いに端を発するもので、「WATERFALL」(滝を見る人) と「CITY」(都市を見る人) の2つのシリーズから成る。前者は華厳の滝とナイアガラの滝を見る人を対にした作品、後者はニューヨークと東京を見る人を対にした作品だ。1994年に「滝を見る人」を撮影したあと、2001年にアメリカ同時多発テロ事件が起こり、当初は予定のなかった「都市を見る人」を2006年と2008年に追加撮影した。

滝と都市、それぞれに性質の異なる対象物を対比した重層的な本書は、「対象物 ─ 見る人 ─ 見る人を撮る写真家 ─ 鑑賞者」という重なりを通して、「見ること」の不確かさや揺らぎを浮き彫りにする。と同時に、写真というメディアに対して根源的な問いを投げかけている。

 

普後均写真集『WATCHERS』
300×216mm
本体 10,000円(税別)
500部限定 エディション・サイン入り
2020年3月5日発売
ふげん社

 

 

〈文〉鬼沢幸江