写真家が偶然選んだモチーフは家族だった。そこから導かれるように出会いが広がり、家族の絆、一枚の写真が持つ力と重さに気づいていく。写真愛好家必見の映画『浅田家!』が2020年10月2日より全国東宝系にて公開される。
■二宮和也さんが演じる主人公は写真家の浅田政志さん
主人公は写真家の浅田政志さん。父と母、兄の家族4人で大真面目にコスプレした写真集『浅田家』(赤々舎) で話題を呼んだ。消防士やレーサーなど、家族が全力で違う姿に身を投じた。2008年に出版され、第34回木村伊兵衛写真賞を受賞する。
そして3年後、東日本大震災が起きる。東日本大震災では津波で流された家族の写真を洗浄し、持ち主に戻す活動が行なわれており、主人公も参加する。この震災で父親を失った少女に出会い、「家族写真を撮ってほしい」と依頼される。写真家にできることは何か。何を撮ればいいのか。悩み抜いた末、主人公はある被写体を選びシャッターを切る。
■劇中の写真は浅田さん本人が撮影
この映画ではそんな写真家の実話を基にしたストーリーが展開する。写真ファンにとって見どころの一つは、家族写真の撮影シーンだろう。劇中では19点の写真が登場し、撮影シーンも再現される。「撮っていくうちにどんどん家族らしくなっていくのが不思議だった」と父役の平田満さんは話す。
その19点の撮影は、浅田さん本人が実際に現場で行なった。主人公の幼馴染役を演じた黒木華さんはその撮影する姿を見ながら「こうして映画になっている自分をどういう目線で見ているのか」興味深く観察していたそうだ。
■映画の原作小説も発売中
また、この映画の原作小説『浅田家!』(徳間文庫) も発売中。作者は同映画を監督した中野量太さん。小説版だけのエピソードや心理描写もあり、映画とは別の物語が描かれる。
〈文〉市井康延