ニコンは、業界最高水準となる1000コマ/秒でHDR特性110dB、4K×4Kの高解像度での撮像を実現する、総画素数約1784万画素の「積層型CMOSイメージセンサー」を開発。アメリカ・サンフランシスコで2021年2月15日から開催されたISSCC (国際固体素子回路会議) で発表した。新たなデジタルカメラの開発にもつながる新技術だ。
■高速・高解像・広ダイナミックレンジでの撮影が可能に
新開発の「積層型CMOSイメージセンサー」は、2.7um画素サイズに対応可能な微細ピッチの積層接続技術を採用する。これにより、撮像素子のあるトップチップをボトムチップのロジック回路から直接制御することができ、1型 (1インチ) のセンサーサイズでありながら、4K×4K画素の高解像度で110dBの広ダイナミックレンジ、さらに秒1000コマの高速動画撮影を実現する。高速読み出しにより、秒最大1000コマのスーパースローモーション撮影が可能になる。また秒60コマの撮影であれば、134dBの広ダイナミックレンジを実現する。
トップチップは16×16ピクセルを1ブロックとしており、1画面に264×264ブロック (4224×4224ピクセル) が分割配置されている。これらのブロックをボトムチップから画面内の領域ごとに露出時間を細かくコントロールすることを可能にした。この機能により、広いダイナミックレンジを表現することができ、明暗差の大きな被写体でも、暗部が潰れたり明部が露出オーバーになることなく、画面全体を明瞭に撮影することができる。
イメージセンサーは、デジタルカメラやスマートフォンといった映像分野に止まらず、自動車など多くの産業分野で用いられている。いずれの分野でも、小型・軽量、高フレームレート、広ダイナミックレンジ、高解像の全てを実現するイメージセンサーが求められているのが実情だ。ニコンは、光学機器メーカーとして、光学技術、精密計測・加工技術や材料技術などをベースに、映像技術の中核となる最先端イメージセンサーの研究開発にも取り組んでいる。イメージセンサーの技術開発はニコンにとって不可欠で、今後も市場の要望を踏まえてセンサーの研究開発を継続していくとしている。
〈文〉柴田 誠