ライカカメラ社が毎年開催している国際写真コンテスト「ライカ・オスカー・バルナックアワード」の2021年度受賞者が決定しました。
「ライカ・オスカー・バルナックアワード」は、今年度で41回目。一般部門の受賞者には賞金40,000ユーロと10,000ユーロ相当のライカ製品、新人部門の受賞者には賞金10,000ユーロと「ライカ Q2」が贈呈されます。
一般部門は中南米で女性受刑者の姿を捉えた作品が受賞
一般部門である「ライカ・オスカー・バルナックアワード」を受賞したのは、ベネズエラ出身のの写真家 アナ・マリア・アレバロ・ゴセンさんで、受賞作は「Días Eternos」。ベネズエラとエルサルバドルの刑務所に収監されている女性たちの凄惨な生活環境を「ライカ Q」で捉えた作品です。収監の理由とその結果を、受刑者自身とその家族、そしてラテンアメリカの社会という観点から浮き彫りにしています。
アナ・マリア・アレバロ・ゴセンさんは1988年生まれ。ドキュメンタリータッチの写真で女性の人権と環境問題をテーマにしたプロジェクトの制作に取り組んでいます。受賞に際して「この作品は女性収監者の生活がテーマですが、人権などないに等しいかのようなその環境に胸を痛めずにはいられません。私にそれを改善できる力があるとは思いませんが、少なくともこの作品を通して悲惨な状況が存在している事実を伝えることはできると思っています」と語っています。
新人部門はロシア強制労働の悲劇を追った作品が受賞
30歳未満の若手写真家を対象とした新人部門「ライカ・オスカー・バルナック・ニューカマーアワード」を受賞したのは、ドイツ出身のドキュメンタリー写真家 エミール・ドゥッケさんで、受賞作は「Kolyma – Along the Road of Bones」。スターリン時代のソ連において、強制労働の果てに膨大な数の人が命を落とした「骨の道」と呼ばれる連邦道路を辿って撮影した作品です。
エミール・ドゥッケさんは1994年生まれ。モスクワに拠点を置き、世界中の新聞やニュース誌などに作品を提供しています。受賞作については「ロシア極東の地、グラーグ (強制労働収容所) に収容された強制労働者によって建設されたコリマ道路。その道路に沿って旅したのが本プロジェクトです。その過程で出会った過去の悲劇の生存者やそれを知る関係者には心を大きく揺さぶられました」と語っています。
写真の殿堂「ライカ・ホール・オブ・フェイム・アワード」にラルフ・ギブソンさん
また、ライカカメラ社は、アメリカの写真家ラルフ・ギブソンさんの生涯にわたる功績を称えて「ライカ・ホール・オブ・フェイム・アワード (Leica Hall of Fame Award)」を授与しました。「ライカ・ホール・オブ・フェイム」は、独自の世界観をもって何かを動かし、何かを変えた写真家たちを迎える写真の殿堂です。
ラルフ・ギブソンさんは、1939年ロサンゼルス生まれ。ドロシア・ラングやロバート・フランクの助手を務めたほか、出版社「ラストラム・プレス」を設立して個人作品集や多くの写真家の作品集を出版してきました。ドイツ・ウェッツラーのライカギャラリーでは、ギブソンさんの栄誉をたたえる作品展を2022年2月まで開催しています。
〈文〉佐藤陽子