野田雅也さんの写真集『造船記』が発売された。
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野田さんは東日本大震災の発生から6日後、現地に入った。2004年の年末、スマトラ島沖で起きた大地震も取材し、想像を超えた自然の猛威を目の当たりにした。そのときも船が陸地に運ばれ、家屋の屋根に残された光景を撮影している。
東北でも当初は福島から青森までの沿岸部を撮影していたが、導かれるように岩手県大槌町の岩手造船所に通うようになった。そしてここを基点に、この地で生きる人々の日々と震災の記憶を記録してきた。
大槌町は鮭の定置網漁と養殖で栄え、復興に船は欠かせない。造船所も被災したが、船大工たちはすぐ再建に向けて動き出した。瓦礫から金属を集め、加工して道具を作る。船を引き上げるレールと、動力源たる船舶エンジンを見つけたとき、社長の川端さんは再建を確信したという。
誰もが家族や親しい人を亡くし、その哀しみは10年が経過しても消えることはない。息子夫婦を亡くした母親は6年を経て、初めて墓を参ることができたそうだ。大槌町でも一つずつ震災遺構がなくなり、新しい街が作られている。街の人とともに見つめたこの記録は実に貴重だ。
野田雅也『造船記』
体裁 B5判・240ページ
価格 3,850円(税込)
発売日 2023年3月11日
発行 集広舎
野田雅也 (Masaya Noda)
1974年、福岡県生まれ、写真家・映画監督。バックパッカーとして世界を放浪し、写真を始める。ライフワークとしてチベットを撮影。世界情勢や地球環境を取材して国内外で記事や映像作品を発表する。日本写真家協会 (JPS) 会員、日本ビジュアル・ジャーナリスト協会 (JVJA) 会員、Media Labo ノダグラ代表。映画に『遺言原発さえなければ』(2014年)、『サマショール遺言第六章』(2018年)、『ふるさと津島』(2020年)。共著に『災害列島・日本』(扶桑社)、『3・11メルトダウン』(凱風社) など。
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〈文〉市井康延