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写真界の奇才は何が見たかったのか? 最晩年の作品をまとめた深瀬昌久写真集『私景』

深瀬昌久さんの写真集『私景』が発売された。

深瀬昌久『私景』

 

写真界の奇才による最晩年の作品をまとめた。深瀬さんは主に家族を被写体にしてきたが、最後は自らも素材に選んだ。旅先や日常の中で、自分の身体を画面に入れて撮影。今でいうセルフィ―だ。

1990年にはモノクロで、1992年にはモノクロプリントに水彩絵具で着色した写真をニコンサロンで発表。本書ではそのプリントを忠実に再現した。

自らを偶発的に写真の中に落とし込むことで、何が見たかったのか。既存の写真という枠組みを壊そうとする深瀬さんの執念を感じる。

深瀬昌久『私景』

体裁 190×240mm・192ページ
価格 5,500円(税込)
発売日 2023年8月4日
発行 赤々舎

 

深瀬昌久 (Masahisa Fukase)

1934年、北海道美深町生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。日本デザインセンターや河出書房新社などの勤務を経て、1968年に独立。1974年、アメリカ・MoMAで開催された歴史的な日本写真の展覧会「New Japanese Photography」への出展を皮切りに、世界各国の展覧会に出展多数。1992年、不慮の事故で脳障害を負い、20年間の闘病の末、2012年没。享年78歳。代表作「鴉」は日本写真の金字塔として世界的に高い評価を得ている。

 

〈文〉市井康延