高橋伸哉さんの写真集『impermanence』が発売された。
■収録内容 (タップ/クリックで拡大します)
人や風景をスナップショットで切り取った写真が並ぶ。女性たちの多くは自らの内面に沈み込み、他者との交わりを避けているようにも見える。
都心の交差点に居合わせた群衆がそれぞれスマートフォンをかざし、同じ被写体を収めようとしている光景がある。皆が同じものを見て、密に並んでいても、一人一人は誰とも交わりを持たない。クーラーの室外機が外に飛び出した古いビルやひなびた温泉街、昼下がりのビジネスホテルの室内などは、そこだけ時間が止まったまま。得体の知れない寂しさを感じつつ、なぜか引かれる。
「この世に永遠はなく、いつかは消えゆく運命にある」と高橋さんはあとがきに記す。母や、母親代わりだった叔母を早く亡くした経験によって、そうした諦念を深く感性に染み込ませることになったのだろう。自分でも理解しきれず、制御することもできない感情や思いは、意図して形にできるものではない。日常のふとした瞬間や、モデルと相対する中で探っていく。
高橋伸哉写真集『impermanence』
体裁 A4判変型・144ページ
価格 3,850円(税込)
発売日 2023年12月1日
発行 玄光社
高橋伸哉 (Shinya Takahashi)
写真作家、フォトグラファー。人物、光景、日常スナップなど、フィルムからデジタルまでマルチに撮影する。作家活動のほか、ライフワークとして海外、国内と旅をしながら写真を撮り歩く日々。shinya写真塾や教室などを定期的に開催している。著書に『写真からドラマを生み出すにはどう撮るのか』(インプレス)、『情景ポートレートの撮り方』(玄光社) などがある。
→ WEBサイト
→ X (旧Twitter)
→ Instagram
〈文〉市井康延