中東のアラブ首長国連邦(UAE)でフォトフェスティバル「Xposure(International Photography & Film Festival 2025)」が開催されるのを知ったのは昨年末のこと。コロナ禍で開催が見送られていた国内外のイベントが、少しずつ戻ってくるようになったこともあって、海外取材のチャンスがないか探していたときのことだ。
■超豪華な中東のイメージしかなかったが果たして。。。
開催期間は2025年2月20~26日で、 2月27日から始まる「CP+2025」の直前になる。今回が9回目のフォトフェスだが、日本であまり紹介されていないイベントなのでネットで検索してもほとんど情報が出てこない。それでも公式サイトで入場登録をすることができた。
UAEといえばドバイが有名だが、開催地はドバイに隣接するシャルジャ首長国(Sharjah)。いったいどんなフォトフェスティバルなのか、正直まったくイメージが湧かない。しかしそれだけに見てみたい気がする。そんな興味だけで、「CP+2025」の直前に行われた某社の内覧会を諦め、公式サイトの情報を頼りにとにかく行ってみることにした。
経由地の香港まで約4時間、香港からドバイまで約10時間。日本との時差が5時間あるので、朝に成田を発てば、その日の夜にはドバイに着ける計算だ。「CP+2025」の取材も外せないので、最終日までいることは諦め、開催日の前日にドバイ入りすることにした。
■ゆったりとした空間で作品鑑賞ができる「Xposure」の展示会場
想定外のトラブルがいくつかあったものの、とりあえず会場に到着することができた。駐車場脇では屋外展示が行われていて、「Xposure」の幟がはためいている。その先には広大な砂漠が広がっている。
展示会場の「GALLERY X」は作品保護のためか、照明が落とされていて薄暗い。「GALLERY X」は「Xposure」のために作られた建物で、簡素なつくりではあるがとにかく広く空調も効いている。平日の午前中のせいなのか、来場者は想像以上に少なかった。
数百メートの細長い4本の展示ホールで構成された「GALLERY X」。いくつかの通路でつながっているので、自分の居場所を見失いそうになることが何度もあった。
展示エリアは、出品しているおよそ100組の作家ごとに仕切られていて、それぞれの仕切りには作家の紹介パネルが掲げられている。日本人の名前を探したが見当たらない。中国や韓国など、アジア人作家の作品を見つけることはできなかった。展示されている作品は、値段がつけられているものあったがオリジナルプリントではなく主催者によってプリントされたもの。作家ごとに額装やプリントサイズが統一されていて整然として見える。
作品のジャンルはフォトジャーナリズム、自然、ドキュメンタリー、美術、コンセプチュアルフォトなど。ヌードやファッションフォトは排除されている。昨年ドバイで起きた洪水の写真や世界各地の鷹匠のポートレート、モスクの天井を真下から撮ったものなど、興味深い作品も多かった。紛争地で撮影されたものもあったが、報道というよりはドキュメンタリー色が強い印象だった。
「Xposure」主催のフォトコンテストの入賞作品も展示されていた。どのくらいの賞金が出るのか気になったが、それについてはどこにも書かれていなかった。
■100年のライカの歴史を振り返る「ライカI」誕生100周年のパネル展示
ホールの一角で、「ライカI」誕生100周年を記念した展示が行われていた。この100年間に登場したライカカメラを紹介するものだが、いくつか実物のカメラも展示されている。
タイミングよく会場を訪れていたライカカメラ社の中東を統括しているマネージングディレクターで、ライカUAEのマネージングパートナーでもあるアサド・アブード氏に、「ライカM11」の特別限定モデル「ライカM11 100 YEARS OF LEICA」の「UAEモデル」を見せてもらうことができた。シリアルナンバーは58/100だった。
展示されていた実物のカメラの一つ。フードにSharjah(シャルジャ)の刻印のある「ライカQ2」について尋ねたところ、シャルジャ政府から受託した「Q2 Monochrom Sharjah Edition」ということだった。昨年開催された「Xposure 2024」の会期中に納品された150台限定のモデルだ。
■作品展示のほかにもあった会場のあれこれ
会場の奥には小規模ながら撮影機器を販売するトレードショーもあった。参加していたメーカーはニコン、富士フイルム、EIZO、サムスンの4社で、販売店のブースがいくつかあった。
ニコンブースの推し機材は「Z6III」。エクステリアを張り替えたZfのバリエーションやDXフォーマット機も展示されていた。

ニコンのカメラで記念撮影をしてくれるコーナーもあった。
ボディのチェックとセンサークリーニングをしてくれるメンテナンスコーナーもあった。
富士フイルムブースにはカフェが併設されていた。コーヒーは無料。さらに富士フイルムのSNSに登録した来場者にはロゴ入りのバッグとマグカップが配られていた。
展示機材はGFXシリーズが多い印象だったが、新機種の「X-T5」もしっかりハンズオンできた。ブースのあちこちにカウンターが配置されていて、そこにカメラが置かれているのだが、ワイヤーなどの盗難防止が施されていない。いつの間にかなくなったりしないか、こっちが心配になってしまう。
オープンスタイルのセミナールーム。会場の広さに対して来場者が多くはなく、BGMもないので、会場はとても静かだ。
海外の空港や駅などで見かける礼拝室も設けられていた。
ロゴ入りのオリジナルグッズも販売されていた。トートバッグの柄にもなっている文字の使い方がかっこいい。また飛行機で持って帰るのはちょっと無理そうな、かなり分厚い図録が用意されていた。写真はハードカバー仕様のスペシャルエディション。
■Leica Store Dubaiに行ってみた
シャルジャには電車や地下鉄がないので、移動にはタクシーを使う。「Xposure」の展示会場からLeica Store Duba(ライカストア・ドバイ)のあるドバイモールまでは、40分ほどで到着した。入り口脇にレンズを模した円筒形のショーケースがあるのが特徴的だ。絞りリングや絞りの指標のような模様が刻まれていて、中心近くに見える0.95の文字は、ライカファンにはお馴染みのオリジナルフォントが使われている。ちなみにドバイモールには、キヤノンやソニーのショップも入っていた。
店外に向けたショーケースには、「ライカSL3-S」が展示されていた。
「ライカI」誕生100周年の記念イベントが、2025年1月にドバイで開催されたのを皮切りに世界6カ国で開催される予定になっている。最初の開催地ドバイで「ライカM11」の特別限定モデル「ライカM11 100 YEARS OF LEICA」が発表され、ドバイ限定100台の「DUBAI UAEモデル」がお披露目された。展示されていたのは「Xposure」の会場でアサド・アブード氏に見せてもらったのと同じ85/100だった。ちなみに「ライカM11 100 YEARS OF LEICA」は、記念イベントの開催地である”MILAN ITALY”、”NEW YORK USA”、”SHANGHAI CHINA”、”TOKYO JAPAN”、”WETZLAR GERMANY”の刻印入りで、各都市100台ずつ、それぞれの国限定で販売される。
シュタイフとのコラボレーションによる限定コレクターズ・ベア「Ernst」と「Elsie」もショーケースの中に展示されていた。価格は日本円で1体12万円程度。2体セットだと少し安くなるのだそう(日本での販売価格は未定)。なお、100周年を記念した「100 YEARS OF LEICA」 アクセサリーコレクションの入荷はこれからということで、実物を目にすることはできなかった。
こぢんまりとした店内には、カメラやレンズだけでなく豊富なアクセサリーも展示されていた。奥にはミニギャラリーもあった。どんなお客さんが訪れるのか興味深かったが、滞在中に入店する人はいなかった。