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ここから次世代のクリエイターが誕生するかも? 学生たちが挑戦したPR動画作りに密着

「T3 STUDENT PROJECT」とソニーマーケティングによる動画制作ワークショップ「T3 学生による中央区の映像制作&上映イベント supported by ソニーマーケティング」が2025年9月13日~15の3日間、東京都内で開催された。

学生による中央区の映像制作&上映イベント

「T3 STUDENT PROJECT」と「CREATORS’ CAMP」とのコラボイベント

このワークショップは、東京・八重洲、日本橋、京橋エリアで開催されるアートフェスティバル「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2025」のイベントの一つとして企画されたもので、「T3 STUDENT PROJECT」とソニーの動画制作ワークショップ「CREATORS’ CAMP」とのコラボイベントだ。

学生による中央区の映像制作&上映イベント

 

「CREATORS’ CAMP」は、地域のPR映像を制作するワークショップで、第一線で活躍するプロの映像クリエイターから直接レクチャーを受けながら、チームで映像制作に挑むというもの。過去に6回開催されており、今回は3日間で動画制作について学びながら、中央区の観光PR動画を完成させるのがゴールだ。最終日には上映会と講評会が行われ、優秀作品は10月4日にスタートする「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2025」の会場で上映される予定になっている。

学生による中央区の映像制作&上映イベント
参加者の中には写真の知識はあるものの、動画の撮影や編集をほとんど経験したことがないという人もいるようだ。また、日本で撮影の勉強をしている留学生の姿もあった。

今回のワークショップに参加したのは、主に写真を学んでいる19名の学生たち。顔ぶれをみると女性の参加者は9名で、全体の1/2ほどだった。参加校は「T3 STUDENT PROJECT」参加経験のある学校を中心とした美術系の11校で、都内での開催にもかかわらず関西方面からの参加もあるなど幅広い。同世代の学生ばかりなので、会場はこれまでの「CREATORS’ CAMP」とはちょっと違って、学園祭前夜のような熱気を感じる雰囲気だった。

チームで映像制作に挑む3日間がスタート

参加者2〜3名に講師とサポートスタッフが加わった8チームが編成され、チーム単位で映像制作に挑むという「CREATORS’ CAMP」ならではのスタイルだが、チーム分けは同じ学校の学生が一緒にならないように配慮されていた。動画に詳しくない学生もいるということで、完成させる動画は30秒〜3分と、幅のあるものになっている。

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今回の講師陣。
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講師や参加者の紹介後、クライアントである中央区観光協会事務局から、今回の依頼内容とともに中央区の魅力スポットや事前に撮影許可等を得たロケ候補地が紹介された。

■学生たちで撮影プランを練る

どんな映像にするか、チームごとに企画を詰めていく。初対面のメンバーとキーワードを出し合ったり、参考になる動画を探したりする。まだ少し遠慮がちで、緊張も感じられた。

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ロケ候補地のWEBサイトやストリートビューなどをチェックして、撮影シーンに合わせてロケ地を選んでいく。3日目午後の上映会までに動画を完成させなくてはいけないので、撮影できるのは2日目だけというタイトなスケジュールを考えながらの作業だ。

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30か所にもなるロケ候補地は、事前にT3のスタッフが撮影許可を取っていた。撮影できる時間が限られていたり、チーム同士の撮影時間がかぶらないようにするため、撮影の順序や時間なども細かく決める必要があるからだ。

 

東京駅や日本橋、築地といった、ただでさえ人の多いエリアを抱える中央区での撮影は、何が起こるか予想できない。天気の大きな崩れはなさそうだが、週末であることや中央区の一部が世界陸上のマラソンコースに入っていることも不安材料になる。スタッフと講師も一緒になって、さまざまな点を考慮しながらロケ地や撮影順序を絞り込んだ。

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ラフ画コンテ作りや撮影の進行表作りに取り掛かっているチームも。現場で悩んでいる余裕はないため、どんなシーンをどこでどんなふうに撮影するのか、決めておくための重要な作業だ。衣装や撮影に使う小道具の準備も、撮影当日では間に合わない。持っていくものを確認したり、撮影中にどこで購入できるのかなど、細かくチェックしていた。

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その後、使用する撮影機材の詳しい解説が行われて1日目が終了となった。今回は動画の撮影や編集を経験したことがない学生もいるため、これまでの「CREATORS’ CAMP」よりも時間をかけて説明が行われた。

■撮影機材はソニーのレンズ交換式シネマカメラ

カメラはソニー Cinema Lineの「FX2」2台と、16mmから200mmまでをカバーする4本の交換レンズが用意されていた。マイクやジンバル、NDフィルターをセットするためのマットボックスなど、普段の写真撮影では使うことのない機器の操作も確認する。

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タブレットで複数カメラの映像をモニタリングしたりリモートコントロールすることができるアプリ「Monitor & Control」の操作もチェック。撮影している映像を大きな画面で確認できる、映像制作の現場で活躍するアプリだ。

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2日目のロケに密着!

2日目。ビデオグラファーのエムスタさんが講師を務めるHチームに同行して撮影の様子を取材させてもらうことにした。メンバーは山田涼介さん (成安造形大学)、野上依史さん (大阪芸術大学)、百崎楓丘さん (東京藝術大学大学院) の3人。打ち合わせの段階から積極的に意見を出し合っていて、どんどん企画がまとまっていく印象があった。野上さん、百崎さんが企画案を出し合い、山田さんがテンポよくまとめていく感じだ。

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左から山田涼介さん、百崎楓丘さん、野上依史さん、講師のエムスタさん、サポートスタッフの渡邊昭仁さん。

 

3人のチームなので、撮影シーンやロケーションによってディレクターとカメラマンが入れ替わったり、演者として出演したりする必要がある。ここでは百崎さんの出演シーンなので、野上さんがディレクター、山田さんがカメラマンを担当。しっかりと三脚を立てて撮影に臨んでいた。

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■プロさながらの撮影にチャレンジ!

兜町・茅場町まちかど展示館のある公園で、オープニングに使う足元の撮影。昨日作ったラフ画コンテに合わせて、順序よく撮影を進めていく。百崎さんと野上さんがそれぞれの役割を入れ替わっている。

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イチマス田源 呉服問屋ミュージアムでの撮影。店頭や店内でのシーンに加えて、落語鑑賞会も撮影する。ここでは野上さんが出演するため、百崎さんがディレクターを務める。山田さんも通行人役として登場する場面もあった。

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椙森 (すぎのもり) 神社での撮影。境内は広くはないので、余計なものが映り込まないようにしたい。3人のイメージするシーンになるように、エムスタさんがカメラ位置や高さをアドバイスしていた。

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東京駅の八重洲グランルーフ・グランルーフガーデンでは重要なシーンの撮影が行われた。通行する人のじゃまにならないようにしつつも、一般の人が写り込まないように配慮する必要がある場所だ。

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何度か撮り直しをしたものの、撮影は予定よりも短時間で終了。むしろ苦労したのは、タクシーを止めて機材を積み下ろしすることだった。

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撮影機材も多いので、移動にはワゴンタクシーが使われた。移動中のタクシーの中で打ち合わせや撮影の段取りを確認する場面も見られた。

■撮影を通してメンバーたちの距離感もグッと近づく

ラストシーンは永代橋の上での撮影。撮影の終了予定時間も迫る夕方の雰囲気の中で撮影が行われた。1日一緒に撮影をした3人の距離感はグッと近くなっていた。

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隅田川の中洲、月島側にある公園まで移動して、永代橋の全景をカメラに収めて撮影終了となった。3人ともやり切ったという感じだが、これから編集作業が待っている。

■撮影のあとは動画編集

ほかのチームはすでに編集作業に取り掛かっていた。2日目に作業できるのは21時までで、3日目日の午前中いっぱいで編集作業を終えなくてはいけない。

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Hチームも機材の片付けを済ますと、さっそく編集作業に取り掛かる。動画編集ソフト「DaVinci Resolve 20」を使って、エムスタさんのレクチャーを受けながら作業が進められていた。

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パソコンを主に操作するのは野上さん。カット割のタイミングを百崎さんと2人で決めていくというかたちで、編集作業が進められていく。2人が迷ったら山田さんに判断を委ねるという感じで、うまく役割分担ができていた。

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和気あいあいムードで編集作業を進める各チーム。どのチームも順調に作業が進んでいるのか、余裕さえ感じられる雰囲気があった。

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映像と音声がうまく合っているかをチェックしたりして、終了時間ギリギリまで粘る様子も見られた。

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あっという間に3日目! 上映会と審査に臨む

編集作業ができるのは3日目の午前中まで。映像の細かい調整だけでなく、BGMを選んだり、ナレーションやテロップを入れて同期させる作業もある。締め切り時間ギリギリまで最後の調整が行われていた。

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■締め切り時間ギリギリまで粘ってクオリティにこだわる

Hチームは、画面が切り替わる場面で出演する2人の動きをうまくシンクロさせる必要があるので、何コマ目でカットするのかというタイミングにギリギリまでこだわっていた。

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各チームのテーブルでは疲れた表情も見せずに作業する姿が見られた。テーブルの上に並んだペットボトルが、作業の大変さを物語っている。

■学生ならではの感性で仕上げたユニークな作品がズラリ

いよいよ上映会と審査が始まる。審査員は8人の講師陣と中央区観光協会事務局の草野さん、「T3 STUDENT PROJECT」事務局の日賀野さんの10名。ただし、講師は自分のチームの採点には参加しない。「映像美 (映像表現力)」「企画構成」「自治体PR動画としての質の高さ」「自治体の魅力の発信力」に着目し、900点満点で評価される。

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最前列で上映作品を審査する講師陣。

 

Aチームから順に、制作された中央区の観光PR動画が上映されていく。PR動画というと、おとなしい優等生的な作品が多いと思いがちだが、そんなことはない。テンポのいいコミカルな動画があったり、SFテイストの動画があったりと、ユニークなストーリー展開のものが多かった。また、見せ方にも工夫が凝らされていて、縦動画を制作したチームもあった。

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作品について語るHチーム。

 

トップに輝いたのは、映像クリエイターのUssiyさんが講師を務めたBチーム。サラリーマンが通勤途中で中央区のあちこちに迷い込むというコミカルな内容で、カメラワークやBGMもあいまって、リズミカルなストーリー展開の作品。小野篤司さん (バンタンクリエイターアカデミー) と滑川由記さん (東京藝術大学大学院) がディレクターとカメラマンを担当し合い、主役のサラリーマン役は同行したスタッフが担当して制作された。820点の高得点を獲得し、特に企画構成力が高く評価された。

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Bチームの小野篤司さん (左) と滑川由記さん (右)。

 

何人かに今回の動画制作ワークショップの感想を尋ねたところ、最新の機材を使って撮影できたことや、3日間と短い時間の中で1つのPR動画を完成させたことに充実感を感じたとのこと。

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中央区観光協会事務局の草野さん。どのチームの作品も短い時間での制作ながら、中央区の魅力をしっかり引き出してくれていたと感想を述べた。
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同行したHチームの講師を務めたビデオグラファーのエムスタさん。今回が「CREATORS’ CAMP」の講師デビューということで戸惑うこともいろいろあったそうだが、楽しんで撮影する学生たちに刺激を受けたとコメントしてくれた。

■チームで撮るって楽しい! また参加したい!

Hチームは惜しくもトップ3入りとはならなかったものの、3人とも充実した3日間を過ごせたようだ。仲間に恵まれて楽しく動画作りができたと語った百崎さんは、普段使っていないソニーのカメラに興味を持ったようだ。動画撮影にも興味がわいたという野上さんは、次回の「CREATORS’ CAMP」にもぜひ参加したいと意気込みを見せていた。また、普段から動画編集をしているという山田さんは、チームで作品作りをする機会があまりないということで、それができたことが楽しかったそうだ。

学生による中央区の映像制作&上映イベント
左から山田涼介さん、百崎楓丘さん、野上依史さん、講師のエムスタさん。

 

今回の動画制作ワークショップ「T3 学生による中央区の映像制作&上映イベント sapported by ソニーマーケティング」の優秀作品は、2025年10月4日に開幕する「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2025」の企画として、10月24日に京橋エドグラン地下1階大階段にて上映予定。また、10月中旬以降からはソニーのWEBサイトでも公開される。

学生による中央区の映像制作&上映イベント
参加した学生、講師、スタッフ全員で記念撮影。