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2025年 第20回「名取洋之助写真賞」が決定! 板谷めぐみさんの作品「京大吉田寮」が受賞、奨励賞は木村孝さん

公益社団法人 日本写真家協会(JPS)が、2025年 第20回「名取洋之助写真賞」の受賞者を発表しました。

板谷めぐみ「京大吉田寮~記憶と想起の結節点~」(カラー30点) より

「名取洋之助写真賞」は、主にドキュメンタリー分野で活躍している40歳までの写真家を対象とした、新進写真家の発掘と活動を奨励するための写真賞です。第20回の応募は18名19作品が寄せられ、最終選考6作品より、板谷めぐみさんの「京大吉田寮~記憶と想起の結節点~」が選ばれました。「名取洋之助写真賞奨励賞」は、木村 孝さんの「アマタ―『永遠の街』の肖像」が受賞しています。

選考は、写真家の熊切大輔さん、清水哲朗さん、専修大学教授の山田健太さんの3名が担当。受賞作品展は、2026年1月16日~1月22日に富士フイルムフォトサロン東京、2026年1月30日~2月5日に富士フイルムフォトサロン大阪にて開催予定です。

選考風景。写真左から清水哲朗さん、熊切大輔さん、山田健太さん。

第20回「名取洋之助写真賞」受賞 「京大吉田寮~記憶と想起の結節点~」(カラー30点) 板谷めぐみ

板谷めぐみ「京大吉田寮~記憶と想起の結節点~」より

現存する日本最古の学生寮である京都大学吉田寮を撮影した作品。1913年に設立された吉田寮は、対話の精神をもとに自治で運営されてきました。板谷さんは寮を撮影するなかで、戦死した寮生や当時戦争に加担していく京都帝国大学とその学生に思いを巡らせます。

そして、多くの学生寮が廃寮に追い込まれるなか、吉田寮は廃寮阻止の最前線に立っています。日本社会にとって知の共有財産である大学が、経済や軍事に従属するような道筋をたどっているように思える今の姿に、第二次世界大戦時の大学と寮の歴史を想起させます。

 

板谷 めぐみ(Megumi Itaya)

大阪府生まれ。看護師としてケニアのスラム、スリランカ、インド農村部で国際保健医療活動を行う。退職後、故福島菊次郎に師事。現在は京都大学大学院の人間・環境学研究科文化人類学分野修士課程で「原爆の社会的集合記憶と忘却」をテーマに研究する傍ら、国内外の戦争体験者や京都大学寄宿舎「吉田寮」を撮影。

第20回「名取洋之助写真賞奨励賞」受賞 「アマタ―『永遠の街』の肖像」(カラー30点) 木村 孝

木村 孝「アマタ―『永遠の街』の肖像」(カラー30点)より

「アマタナコーン(永遠の街)」と呼ばれるタイの新興工業団地と隣接するニュータウンは、かつて野原でした。今では700以上の企業の工場やオフィスが立ち並び、都市へと変貌しています。この街の特質に興味を持った木村さんは、ランドスケープから撮りはじめ、2017年からは街の人々を彼らのプライベートルームで撮影します。

出稼ぎ労働者や周辺エリアの戸建て住宅に住む家族やその子ども、コロナ禍以降に存在が目立つようになったカンボジアやミャンマーなどの外国人労働者。さまざまな背景を持つ彼らの姿とパーソナルな空間を通してこの街の「らしさ」、さらには現代アジアの「いま」そのものを表した作品です。

 

木村 孝(Ko Kimura)

日本大学文理学部および日本写真芸術専門学校卒業。株式会社角川グループパブリッシング写真室およびスターツ出版株式会社スタジオレイファクトリー勤務後、フリーランスとして独立。2020年よりgallery176メンバー。第2回PITCH GRANT グラント受賞。