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鮮烈なカラー表現で世の中を鋭く切り取った写真家マーティン・パーが逝去 ─ 今年4月にKYOTOGRAPHYで写真展を開催

イギリスを代表する写真家、マーティン・パー (Martin Parr) 氏が2025年12月6日、自宅のあるブリストルで永眠しました。享年73歳。今年 (2025年) の春、京都で開催された「KYOTOGRAPHY」では写真展を開催。その作品を目にした方も多いことでしょう。

マーティン・パー
マーティン・パー氏

 

代表作「The Last Resort」シリーズで注目を集め、その後もカラー写真による表現で独自の作風を広く知らしめました。観光地や海水浴場に集う人々を撮ったスナップショットはユニークかつ皮肉を込めた視点で切り取られ、一部批判もありましたが社会的な目線で捉えた作品は高く評価されました。

マーティン・パー
「The Last Resort」はイギリス、ニュー・ブライトンのビーチで撮影された作品群。ビビッドな色彩で労働者階級の日常を切り取っています。 © Martin Parr

 

マーティン・パー氏は1952年、イングランドのサリー州エプソムで出生。熱心なアマチュア写真家であった祖父ジョージ・パーによって11歳のころから写真の素養を育まれ、その後マンチェスター・ポリテクニック (現マンチェスター・メトロポリタン大学) で写真を学びます。結婚後はアイルランドに移住し、当時はモノクロで作品制作をしていました。

しかしアメリカでスティーブン・ショアやウィリアム・エグルストンらがカラー写真を芸術として確立しつつあり、その影響を受けて1980年代にカラーへ転向。1986年「The Last Resort」シリーズを発表して一躍注目を浴び、これを口火に、より鮮烈な色の作品を数々生み出して、独自の世界観として認められていきます。

マーティン・パー
「The Last Resort」より。 © Martin Parr

 

「The Cost of Living」(1989年) では消費文化や階級を観察し鮮やかな色彩で提示。「Small World」(1995年) では加熱する観光を批評し、「Common Sense」(1999年) はグローバルな消費社会を独自の視点で分析した作品群です。1994年にマグナム・フォトに加入、2013~2017年には会長を務めるなど、その存在感を写真界で示し続けました。

マーティン・パー
世界各地の観光地を舞台に、風刺的な視点でユーモラスに捉えている「Small World」。 © Martin Parr
マーティン・パー
「Small World」より。 © Martin Parr

 

2014年に新進写真家の支援を目的にした「マーティン・パー財団」を設立。2017年にはギャラリーやライブラリーを備えた拠点も開館、写真文化の普及に尽力しました。2021年6月、女王誕生日叙勲にてCBE (大英帝国勲章コマンダー) を受章。パー氏は自身の作品集を140冊以上出版し、さらに30冊を編集しています。そして作品発表以外にも『VOGUE』などのファッション誌や数多くのブランドの撮影も手がけています。

消費社会や階級文化を鋭くそして風刺とユーモアに満ちた視点で切り取り、個性的で鮮烈なカラー表現は、今も高く評価されています。マーティン・パー財団とマグナム・フォトはそのレガシーを継ぎ、遺産の保存と公的継承に尽力していくと声明で発表しています。

マーティン・パー
消費文化や日常の過剰を、マクロレンズで鮮烈に撮影。現代社会の消費をクローズアップした「Common Sense」。 © Martin Parr