文化庁が支援する新進芸術家海外研修制度を利用した作家を紹介する「DOMANI (ドマーニ)・明日2020 傷ついた風景の向こうに」が開かれる。
この制度は1967年度から実施され、これまでに約3500名が参加している。1998年から研修の成果を発表すべく、年に一度、展覧会を開いてきた。
研修制度の対象分野は美術や音楽、演劇など多岐にわたり、例年、多くのジャンルの作家が並ぶ。2019年は「平成の終わりに」、2018年は「寄留者の記憶」をタイトルに掲げた。今回は文化庁芸術文化調査官の林洋子さんがキュレーションを行ない、表題をテーマに写真家5名(石内都さん、米田知子さん、藤岡亜弥さん、畠山直哉さん、栗林慧さん)を含む11名を選んでいる。
石内都さんは女性の身体の傷や母の遺品などをモチーフに、時間の堆積や埋もれた記憶を掘り起こす作品を制作してきた。2007年からは広島平和記念資料館で遺品の撮影を継続する。
米田知子さんはロンドンを拠点に活動中。記憶と歴史をテーマに、写真には写っていない「見えないもの」を想起させる作品を制作。近作には「アルベール・カミュとの対話」がある。
藤岡亜弥さんは2007年から海外研修でニューヨークに滞在。その後、故郷の広島を捉え直した写真集『川はゆく』で木村伊兵衛写真賞と林忠彦賞を受賞している。
また、都市と自然をテーマに取り組む畠山直哉さんと、小型昆虫の接写技術を確立した栗林慧さんが出品する。
会期中、アーティストトークなどのイベントも行なわれる。1月12日には石内さんと小説家の千早茜さんが「からだと風景の傷をめぐって」、18日には「歴史の痕跡をめぐって」と題し、米田さんと東京都写真美術館学芸員・藤村里美さんが語る。
なお、過去に研修生となりDOMANI展に参加した写真家には原直久さん、三好耕三さん、澤田知子さん、北野謙さん、今井智己さんらがいる。
■出展作家
石内 都 (写真)、畠山直哉 (写真)、米田知子 (写真)、栗林 慧 (写真)、栗林 隆 (現代美術)、日高理恵子 (絵画)、宮永愛子 (現代美術)、藤岡亜弥 (写真)、森 淳一 (彫刻)、若林 奮 (彫刻)、佐藤雅晴 (現代美術)
DOMANI・明日2020 傷ついた風景の向こうに
会期 2020年1月11日 (土) ~2月16日 (日)
会場 国立新美術館 企画展示室2E
住所 東京都港区六本木7-22-2
時間 10:00~18:00 (金曜・土曜は20:00まで 入館は閉館30分前まで)
休館日 火曜 (祝日の場合は開館し、翌平日休館)
料金 一般1000円 大学生500円 高校生・18歳未満無料 (初日は入場無料)
問い合わせ 国立新美術館 (ハローダイヤル TEL 03-5777-8600)
アーティストトーク
いずれも写真展会場にて。参加無料、予約不要。
- 1月12日 (日) 14:00〜15:30 石内都、千早茜 (小説家)
- 1月12日 (日) 16:00〜17:30 栗林慧、栗林隆
- 1月13日 (月・祝) 14:00〜15:30 日高理恵子、細川俊夫 (作曲家)
- 1月18日 (土) 14:00〜15:30 米田知子、藤村里美 (東京都写真美術館学芸員)
- 1月18日 (土) 16:00〜17:30 青山悟 (アーティスト)、鬼頭早季子 (トーキョーアーツアンドスペース学芸員)
- 1月19日 (日) 14:00〜15:30 藤岡亜弥、加治屋健司 (美術史家、東京大学大学院准教授)
- 1月19日 (日) 16:00〜17:30 森淳一、小田原のどか (彫刻家 / 彫刻研究)
- 1月25日 (土) 14:00〜15:30 淀井彩子 (画家 / 若林奮夫人)、神山亮子 (府中市美術館学芸員)
- 2月9日 (日) 16:00〜17:30 宮永愛子、港千尋 (写真家 / 著述家 / 多摩美術大学教授)
〈文〉市井康延