時代の空気を鋭敏に察知してきた写真家の作品が一堂に「瀬戸正人 記憶の地図」

東京都写真美術館は2020年12月1日から2021年1月24日まで、「瀬戸正人 記憶の地図」を開く。デビュー作から最新作まで、時代の空気を鋭敏に察知し写真に定着させてきた写真家の変遷が見て取れる。

瀬戸正人 記憶の地図
「Silent Mode 2020」より 2019-2020年 作家蔵

 

瀬戸正人さんは日本人の父とベトナム人の母のもと、タイで生まれた。8歳で日本に移り、写真家としては日本とタイなどアジアを行き来しながら、人にフォーカスしてきた。

1980年代は故郷のバンコクと、母の生地であるベトナム・ハノイを訪ね、自らのルーツを探った。その後、東京に住むタイ人のアパートで部屋がタイ流の空間になっていたことに驚き、さまざまな国から来た人の部屋を撮影する。この作品で東京が内包する多様な文化と生活を見せた。

このほか、公園で過ごすカップルの姿に興味を持った「picnic」や、夜の台湾郊外で煌々とネオンを光らせる小さな店、ビンラン・スタンドを写した「binran」などを写真集としてまとめている。

木村伊兵衛写真賞の受賞作にもなった「Silent Mode」は、シャッター音が消せるカメラを手にして、かねてより撮りたかった電車内で無意識でいる人たちを捉えた。本展では最新作である「Silent Mode 2020」も展示する。スタジオで人の表情を長時間露光で収める。時間が経過すると、撮られていることを忘れ、素の表情が現れてくるのを狙っている。

また、シリーズによって使うカメラを替える瀬戸さん。初期のスナップはローライフレックス、「Silent Mode 2020」はコニカ・ヘキサーで、8×10判の大型カメラや、昨今は富士フイルムやシグマなどのデジタルカメラも使う。そうした表現の違いも見どころの一つだ。

瀬戸正人 記憶の地図

会期 2020年12月1日 (火) 〜2021年1月24日 (日)
会場 東京都写真美術館 2F展示室
住所 東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
時間 10:00〜18:00 (入館は閉館30分前まで)
休館日 月曜 (祝日の場合は開館し翌平日休館)、12月29日〜1月1日
料金 一般700円、学生560円、中高生・65歳以上350円、小学生以下および都内在住・在学の中学生無料
問い合わせ 東京都写真美術館 (TEL 03-3280-0099)

 

 

 

〈文〉市井康延