独自の美学を貫いてきた写真家の軌跡を辿る「細江英公の写真 : 暗箱のなかの劇場」展

細江英公さんのデビューから近作までを展観する「細江英公の写真 : 暗箱のなかの劇場」が、清里フォトアートミュージアムで開幕した。

細江英公の写真 : 暗箱のなかの劇場
細江英公《鎌鼬 作品17》1965年 © Eikoh Hosoe

 

細江英公さんは1969年にアメリカで個展を開くなど、早くから国際的に注目されてきた写真家だ。高校時代は外交官を目指し、英語を学ぶために米軍キャンプを訪ねた。そこで遊ぶ子どもを撮影した写真が富士フォトコンテストの学生の部最高賞 (1951年) に選ばれ、写真の道を進むことになる。カメラは父から譲られた英ソルントン・ピッカード社の中判カメラだ。

細江英公の写真 : 暗箱のなかの劇場
細江英公《ポーディちゃん》1950年 © Eikoh Hosoe

東京写真短期大学 (現・東京工芸大学) 時代に前衛美術家の瑛九をはじめ、幅広いジャンルの美術家と交流する。それが、その後の創作活動に大きな影響を与えている。写真は「写真家と被写体との関係性において作り出していくものだ」と考え、制作に取り入れていった。

1960年代には「性の解放」が世界的に文学、芸術で取り上げられ、細江さんは写真という方法論で『おとこと女』を描いた。男女のモデルがテーマに添って動き、その存在感と関係性を写真に定着させた。これまでにないライティングとその表現に、発表当初は賛否両論が渦巻いたようだ。

そして、三島由紀夫の依頼で始まった共同作業『薔薇刑』、舞踏家・土方巽を被写体に東北地方の霊気と狂気が立ち上る幻想世界を創造した『鎌鼬』などにつながっていく。

アメリカでの個展をきっかけに、写真がアート作品として扱われることを知り、オリジナルプリントの概念を日本に知らせたのも彼の功績の一つだ。本展では約160点を展示する。代表作をヴィンテージプリントで見せるほか、初のデジタル撮影による〈人間ロダン〉の立体作品 (画帖・屏風・軸装) も併せて発表する。

細江英公の写真 : 暗箱のなかの劇場

会期 2020年7月17日 (土) ~12月5日 (日)
会場 清里フォトアートミュージアム
住所 山梨県北杜市高根町清里3545-1222
時間 10:00~18:00 (入館は17:30まで)
休館日 7〜8月は無休、9月以降は火曜休館 (11月23日は開館)
料金 一般800円、大学生600円、高校生以下無料
問い合わせ 清里フォトアートミュージアム (TEL 0551-48-5599)

 

 

〈文〉市井康延