写されたモノが写真の中で永遠に生き続ける「フィリア ─ 今 道子」展

一見ファンタジックなイメージだが、よく見ると魚や動物、昆虫などが組み合わさっている。最初の写真集『EAT』(1987年刊) から一貫した作風で制作し続けている写真家の個展「フィリア ─ 今 道子」が、神奈川県立近代美術館 鎌倉別館で開催中。会期は2022年1月30日まで。

フィリア ─ 今 道子
今 道子《金魚+イクラ+歯ブラシ》1985年 ゼラチン・シルバー・プリント 作家蔵 © Michiko Kon, Courtesy PGI

 

鎌倉に生まれ育ち、水揚げされた魚は幼いころから身近にあった。それは今道子さんにとってきれいで怖いものだった。絵画から版画を経て写真にたどり着き、写真専門学校を卒業後、自らの世界観を形にしていったという。

撮影は自宅の窓際で、自然光で行なう。魚は朝、新鮮なものを買い求め、さばき、夕方までには撮り終える。そのほか気になるモチーフを見つけると、加えていく。タコやメロン、繭玉、または靴や帽子などなど。

本展のタイトルである「フィリア」は、ギリシャ語で愛を意味する。写されたモノたちは、写真に定着されたことで永遠の存在として生き続ける。全ての写真に共通するのは、そんな今さんのフィリアだ。

日本の美術館で初となるこの個展では、初期の代表作から近作まで、今さんの軌跡をたどる。展示はモノクロ70点余とカラー7点、ポラロイド16点。

フィリア ─ 今 道子

会期 2021年11月23日 (火) 〜2022年1月30日 (日)
会場 神奈川県立近代美術館 鎌倉別館
住所 神奈川県鎌倉市雪ノ下2-8-1
時間 9:30〜17:00 (入館は16:30まで)
休館日 月曜 (1月10日は開館)・12月29日〜1月3日
入場料 一般700円、20歳未満および学生550円、65歳以上350円、高校生100円
問い合わせ 神奈川県立近代美術館 鎌倉別館 (TEL 0467-22-5000)

 

 

今 道子 (Michiko Kon)

1955年、神奈川県生まれ。創形美術学校版画科卒業後、東京写真専門学校にて写真を学ぶ。野菜や魚などの食材、花や昆虫、靴や帽子といった日常的なモノを素材としてオブジェを制作し、印画紙に焼き付ける独自の手法で作品を発表している。1991年、第16回木村伊兵衛写真賞受賞。

 

〈文〉市井康延