日本の“生産と消費”をひとつの空間に混成させた 土田ヒロミ写真展「ウロボロスのゆくえ」

変貌する日本の姿を長年にわたって撮り続けている土田ヒロミさんが、写真展「ウロボロスのゆくえ」を開催する。

土田ヒロミ写真展「ウロボロスのゆくえ」

日本の生産と消費の循環

この作品は約30年前、冷戦構造の崩壊や湾岸戦争、日本経済のバブル崩壊など、世界が大変革を迎えた時代に着手した2つのシリーズから成る。1つは「産業考古学」(1991-2004)、もう1つは「Fake Scape」(1995-2000)。前者は日本の高度経済成長を支えてきた基幹産業の生産現場を記録したプロジェクトで、後者は大都市郊外の国道沿いに建つ独特な意匠の店舗の風景を記録したプロジェクトだ。

「自分の尾を噛んで円環する神話的な存在である『ウロボロス』を、当時の日本の生産と消費の循環に重ね合わせてタイトルにしました。デジタルのインフラが加速度的に進行し、世界がある意味において同質のテーマを背負ってしまった今、この日本を写真を通して考察しようというものです」と土田さん。

作品はシリーズごとに4×5判のポジとネガのフィルムで撮り分けられており、その色の特徴を生かしたデジタルプリントで仕上げた。展示数は約160点に及ぶ。生産と消費、その独特なイメージが一つの空間に浮かび上がる。

土田ヒロミ写真展「ウロボロスのゆくえ」

会期 2021年11月29日 (月) ~2022年1月17日 (月)
会場 キヤノンギャラリー S
住所 東京都港区港南2-16-6 キヤノンSタワー2F
時間 10:00〜17:30 (最終日は16:30まで)
休館日 日曜・祝日・12月29日~1月4日
料金 無料
問い合わせ キヤノンギャラリー S (TEL 03-6719-9021)

 

 

土田ヒロミ

土田ヒロミ (Hiromi Tsuchida)

1939年、福井県生まれ。1963年、福井大学工学部卒。ポーラ化粧品本舗入社後、東京綜合写真専門学校で学ぶ。退社後、独立。変貌する日本社会の姿を写真で提示し、問題意識とともに描き続けている。個展、写真集多数。受賞歴は太陽賞、伊奈信男賞、日本写真家協会賞、土門拳賞。
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〈文〉鬼沢幸江