石塚元太良さんの写真展「Ondulatoire」が、2022年2月5日から開催される。
■展示作品ギャラリー
石塚元太良さんが今回発表するのは「デッドパン」のスタイルで制作した作品だ。デッドパンとは、作家の主観性を画面から排除したオブジェクティブ (無表情) な写真表現のこと。これによって石塚さんは“写真空間の再解釈”を行った。
作品の舞台となったのは、フランス・リヨンのラトゥーレット修道院とインドのチャンディーガル美術大学であり、いずれも開口部にカメラを向けた。ラトゥーレット修道院は20世紀の偉大な建築家であるル・コルビュジエが設計し、コルビュジエの弟子で建築家、数学家や作曲家でもあるヤニス・クセナキスが開口部をデザインしている。また、チャンディーガル美術大学も、コルビュジエとクセナキスの共同制作によるものだ。
これら二つの開口部は「オンデュラトワール (波状の)」と名付けられた不均質な幅の窓が特徴で、そのデザインは「音楽の立体化」であり、まさに「音楽の建築」といえる。石塚さんは作曲家クセナキスの見ていた揺らぐ世界を立体的に再構築した。
建築、音楽、写真という3つの領域を思考の中で再編し、「音楽を観て、写真を聴く」空間として創り上げた写真展。新作を含む17点を展示する。
石塚元太良写真展「Ondulatoire」
会期 2022年2月5日 (土) 〜3月31日 (木)
会場 KOTARO NUKAGA (六本木)
住所 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F
時間 11:00〜18:00
休館日 日曜・月曜・祝日
入場料 無料
問い合わせ KOTARO NUKAGA (TEL 03-6721-1180)
石塚元太良 (Gentaro Ishizuka)
1977年、東京生まれ。2004年に日本写真協会賞新人賞を受賞し、その後2011年文化庁在外芸術家派遣員に選ばれる。初期の作品では、ドキュメンタリーとアートを横断するような手法を用い、その集大成ともいえる写真集『PIPELINE ICELAND / ALASKA』(講談社) で2014年度東川写真新人作家賞を受賞。近年は、暗室で露光した印画紙を用いた立体作品や、多層に印画紙を編み込んだモザイク状の作品など、写真表現の空間性の再解釈を試みている。
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〈文〉鬼沢幸江