これからの時代を担う写真家たちの作品を展示「第38回写真の町東川賞受賞作家作品展」

第38回写真の町東川賞受賞作家作品展が、2022年8月30日まで開催される。

第38回写真の町東川賞受賞作家作品展

■展示作品ギャラリー

 

2022年 第38回写真の町東川賞が決まった。国内作家賞は鷹野隆大さんに贈られた。鷹野さんは1998年より日々写真を撮ることを自らに課し、写真表現の特性と限界について考察を続けてきた。その成果である写文集『毎日写真』(2019年、ナナロク社) などが評価された。「現在、写真の輪郭が急速に崩れています。しかしこのような状況だからこそ、わたしの地味な活動が評価されたのだと考えています」と鷹野さんは受賞の喜びを語っている。

第38回写真の町東川賞受賞作家作品展
2018.11.14.#05 「毎日写真」シリーズより 2018 © Takano Ryudai, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

 

新人作家賞は73名がノミネート。菅実花さん、笹岡啓子さん、林典子さんの3名が最終候補に残り、笹岡さんに決まった。海岸線をメインフィールドに撮影を行ない、『Remembrance 三陸、福島 2011-2014』(2021年 写真公園林) など、「強度に満ちた作品の説得力」が認められた。

第38回写真の町東川賞受賞作家作品展
「Remembrance」より 2011 © Keiko Sasaoka

 

飛彈野数右衛門賞は、独創的な野生動物写真を撮影し続けている宮崎学さんを選んだ。宮崎さんは自らのスタンスについて、「自然という相手側から、人社会と生命を目撃しながら作品制作を続けてきた」と話す。さらに、地方でマイペースに制作する自分が受賞したことは、全国で同様に活動するプロ、アマに「勇気と希望を与えるに違いない」と語っている。

第38回写真の町東川賞受賞作家作品展
墓地で供物を盗むニホンザル 「イマドキの野生動物」より 2010 © Manabu Miyazaki

 

特別作家賞は、京都府在住のエレナ・トゥタッチコワさんが受賞。彼女はさまざまな土地を訪ね、そこに秘めた物語を探ってきた。2014年、東川町国際写真フェスティバルで個展を開き、そのきっかけで知床を訪ねた。「知床は自分にとって、今生きる世界に対して何ができるかを確認する場所でもある」と語る。

第38回写真の町東川賞受賞作家作品展
「ひつじの時刻、北風、晴れ」より from the series “Hour of the Sheep, North Wind, Sunny” 2015 © Elena Tutatchikova

 

海外作家賞は対象国のベトナムから、ハ・ダオさんに贈る。カメラを使い、ジェンダーなどの概念や文化の変化について考察を行なっている。

第38回写真の町東川賞受賞作家作品展
from the series “The Mirror” 2016 © Ha Dao

第38回写真の町東川賞受賞作家作品展

会期 2022年7月30日 (土) ~8月30日 (火)
会場 東川町文化ギャラリー
住所 北海道上川郡東川町東町1-19-8
時間 10:00〜17:00 (初日は15:00~21:00)
休館日 会期中無休
入場料 100円 (7月30日・31日は無料開放) 中学生以下無料
問い合わせ 東川町文化ギャラリー (TEL 0166-82-4700)

 

 

写真の町東川賞

写真文化への貢献と育成、東川町民の文化意識の醸成と高揚を目的とし、1985年に設立。これからの時代をつくる優れた写真作品 (作家) を毎年表彰するもの。東川町長が依頼するノミネーターにより推薦された作家を、東川町長が委嘱した委員で構成する「写真の町東川賞審査会」において審査している。今回は安珠さん (写真家)、上野修さん (写真評論家)、神山亮子さん (学芸員 / 戦後日本美術史)、北野謙さん (写真家)、倉石信乃さん (詩人 / 写真批評)、柴崎友香さん (小説家)、丹羽晴美さん (学芸員 / 写真論)、原耕一さん (デザイナー) が審査委員を務めた。

海外作家賞は年毎に対象地域を移動させ、その地域の作家を対象とする。国内作家賞および新人作家賞は、写真史上あるいは写真表現上、未来に意味を残すことのできる作品を発表した作家が対象。特別作家賞は、北海道在住または出身の作家、もしくは北海道をテーマ・被写体とした作品を撮った作家が対象。飛彈野数右衛門賞は長年にわたり地域の人・自然・文化などを撮り続け、地域に対する貢献が認められる作家が対象。

 

〈文〉市井康延