視覚に頼った“現実”に縛られないイメージを描く 鶴巻育子写真展「芝生のイルカ」

鶴巻育子さんの写真展「芝生のイルカ」が、2022年12月25日までコミュニケーションギャラリーふげん社で開催される。

鶴巻育子写真展「芝生のイルカ」

■展示作品ギャラリー

 

「ガラスは透明ではない」「月は穴ぼこ」「第六感はない」「芝生のイルカ」

2020年から視覚障害者の外出をサポートする「同行援護」という仕事に携わるようになった鶴巻育子さんは、これまでに延べ100名以上の視覚障害者と関わり、言葉を交わす中で、その独特な言語表現に着目した。彼らの情景描写は晴眼者の鶴巻さんにとって新鮮に映り、時にシュールで、時に詩的なものに感じたという。

本作は、視覚障害者の言葉を手がかりに、中判カメラで撮影された。言葉や感触、聴覚、臭覚のほか、空気の流れなどによって、彼らの中でイメージが形成されていく過程を体現すべく、フィルムをデジタルカメラでデュープ (複製) するという2段階の工程を経て制作されている。

視覚に頼った “現実” に縛られないイメージは、自由で創造的だ。視覚障害のある無しに関わらず、それぞれの人が捉える “現実” の違い、揺らぎ、不確かさ、そして、想像の翼を広げることの純粋な喜びを伝える。

会期中の12月10日に、視覚障害者と写真にまつわるワークショップの運営に長年携わっている、インディペンデント・キュレーターの菅沼比呂志さんを招いたギャラリートークも開催。

鶴巻育子写真展「芝生のイルカ」

日時 2022年12月1日 (木) 〜25日 (日)
会場 コミュニケーションギャラリーふげん社
住所 東京都目黒区下目黒5-3-12
時間 12:00〜19:00 (土日は18:00まで)
休館日 月曜
入場料 無料
問い合わせ コミュニケーションギャラリーふげん社 (TEL 03-6264-3665)

ギャラリートーク

日時 2022年12月10日 (土) 14:00〜15:30
会場 コミュニケーションギャラリーふげん社
出演 鶴巻育子、菅沼比呂志 (インディペンデント・キュレーター)
参加費 1,000円 (税込)
備考 オンライン配信あり (参加費は会場観覧と同額)
※アーカイブ視聴可能期間は 2023年1月8日 (日) まで
申し込み WEBサイトより
https://fugensha.jp/events/221210talk/

 

 

鶴巻育子

鶴巻育子 (Ikuko Tsurumaki)

1972年、東京生まれ。写真家、JamPhoto Gallery主宰。広告写真、カメラ雑誌の執筆のほか、写真講師など幅広く活動。近年取り組んでいるシリーズの一つに、日常の一瞬を捉えたスナップ作品がある。個展・グループ展多数開催。主な写真集に『THE BUS』(2018年 自費出版)、『PERFECT DAY』(2020年 冬青社)、『幸せのアンチテーゼ』(2022年 Jam Photo Gallery Books) など。
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〈文〉鬼沢幸江