“戦争は終わっても終わらない” 悲劇の地を記録し続ける大石芳野写真展「戦世をこえて」

大石芳野さんの写真展「戦世 (いくさよ) をこえて」が、2023年6月17日より開催される。

大石芳野写真展「戦世をこえて」
清水ツル子の被爆した指 (広島 1984年)

 

戦争は対岸の火事ではなく、ほんの80年ほど前、日本でも起きたこと。今なおその被害に苦しむ人々がいる。大石さんは1960年代より、戦争や内乱などで傷ついた市民たちの声を聞き、その姿を写真に収めてきた。

かつて東南アジアで、日本を恨む人に出会った。戦時中、日本軍に家を焼かれ、家族や知人を殺された人だ。戦争は加害と被害の側面が共存し、それぞれ受け止め方が全く異なる。「戦争は終わっても終わらない」と大石さんは当時の取材ノートに綴っている。

ベトナム、カンボジア、アウシュビッツ、そして広島、長崎、沖縄へ繰り返し足を運んできた。戦争に正義の要素はなく、国家による犯罪でしかない。大石さんの写真はその事実を重く、静かに語りかけてくる。

会期中には大石さんによるトークショーを開くほか、8月5日には富山大空襲を語り継ぐ会・佐藤進さんのお話会などを開く。

カメラ200点を展示する「WAR and CAMERA 200 -戦中戦後のカメラたち-」も開催

ミュゼふくおかカメラ館のカメラ常設展では、コレクション展「WAR and CAMERA 200 -戦中戦後のカメラたち-」を開催。2023年6月17日から12月24日まで。1850年代のクリミア戦争で、初めて戦場写真が撮られた。戦争とカメラに焦点を当て、過去最多200点のカメラ資料から時代背景や軍との関わりなどを紹介する。

大石芳野写真展「戦世 (いくさよ) をこえて」

会期 2023年6月17日 (土) ~8月20日 (日)
会場 ミュゼふくおかカメラ館
住所 富山県高岡市福岡町福岡新559
時間 9:00~17:00 (入館は16:30まで)
休館日 月曜 (祝日の場合は翌日休館)
入場料 一般800円、65歳以上640円、高校・大学生400円、中学生以下無料
※土・日・祝日・夏休み期間は高校生無料
問い合わせ ミュゼふくおかカメラ館 (TEL 0766-64-0550)

関連イベント

いずれもミュゼふくおかカメラ館にて、予約不要、参加無料。

大石芳野 ギャラリートーク

6月17日 (土)・7月9日 (日)、各日14:00〜。

お話会「富山大空襲の体験と当時の暮らし・世相」

8月5日 (土) 14:00〜。講師は佐藤進さん (富山大空襲を語り継ぐ会)。

コンサート「レクイエム」平和への祈り

8月13日 (日) 14:00〜。演奏はトロイ・グーギンズさん (ヴァイオリン / OEK)。

 

 

大石芳野

大石芳野 (Yoshino Oishi)

東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒。2004年世界平和アピール七人委員会委員。現在の研究課題は「フォトジャーナリズムの変遷と動向」「フォトジャーナリズムから見た戦争と平和における民衆」。人々の生活が戦争や紛争で妨げられて命を奪われている惨状を世界に伝えている。主な著作に『沖縄に活きる』『沖縄 若夏の記憶』『それでも笑みを』『HIROSHIMA半世紀の肖像』『カンボジア苦界転生』『ベトナム凜と』『夜と霧は今』『子ども戦世のなかで』『隠岐の国』『福島FUKUSHIMA 土と生きる』『戦争は終わっても終わらない』『戦禍の記憶』『長崎の痕』『わたしの心のレンズ 現場の記憶を紡ぐ』など。日本写真協会年度賞 (1982年)、芸術選奨新人賞 (1994年)、土門拳賞 (2001年)、紫綬褒章 (2007年)、日藝賞 (2008年) を受賞。

 

〈文〉市井康延