戦前に活躍した写真家の一人が安井仲治だ。その大回顧展「生誕120年 安井仲治-僕の大切な写真」が、愛知県美術館に続いて兵庫県立美術館、東京ステーションギャラリーを巡回する。
大正期には絵画的な写真から、カメラ、写真だから描ける新しい表現を探求する新たな潮流が生まれた。そこで一躍注目を集めたのが安井仲治だ。10代末で浪華写真倶楽部に入会すると、その才能を開花させた。本展では38歳で病没するまで約20年間の活動をたどる。展示されるのは作者自身が手掛けたビンテージプリント141点と、モダンプリント64点の計205点。
1931年にドイツからもたらされた「独逸国際移動写真展」でマン・レイらの写真が紹介され、ダダイズム、シュルレアリスムが広がった。安井は実験的な撮影を試みつつ、当時、時代遅れになりつつあったブロムオイル印画にも取り組み続けた。
兵庫県立美術館では写真家の野口里佳さんを講師に、ピンホールカメラの制作、撮影、現像を行なうワークショップや、島袋道浩さんによる記念トーク「美術家から見た安井仲治」など関連イベントを行なう。また、1月13日から催される「コレクション展III」では連動企画として、戦前の関西で活躍した写真家たちの作品も展示予定。
生誕120年 安井仲治-僕の大切な写真
<神戸>
会期 2023年12月16日 (土) 〜2024年2月12日 (月・祝)
会場 兵庫県立美術館 企画展示室
住所 兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1 HAT神戸内
時間 10:00〜18:00 (入館は閉館30分前まで)
休館日 月曜 (1月8日、2月12日は開館)、12月29日~1月2日、1月9日
入場料 当日 一般1,600円、大学生1,000円、70歳以上800円、高校生以下無料
※各プレイガイドにて12月15日まで前売あり
問い合わせ 兵庫県立美術館 (TEL 078-262-1011)
<東京>
会期 2024年2月23日 (金・祝) ~4月14日 (日)
会場 東京ステーションギャラリー
住所 東京都千代田区丸の内1-9-1
時間 10:00〜18:00 (金曜は20:00まで、入館は閉館30分前まで)
休館日 月曜 (4月8日は開館)
入場料 一般1,300円、高大生1,100円、中学生以下無料
問い合わせ 東京ステーションギャラリー (TEL 03-3212-2485)
神戸展 関連イベント
記念トーク「美術家から見た安井仲治」
日時 2024年1月28日 (日) 15:00~16:30
会場 兵庫県立美術館 ミュージアムホール
出演 島袋道浩 (美術家)
定員 150名 (先着順)
野口里佳さんによるワークショップ
日時 2024年1月20日 (土) 10:15~17:00
会場 兵庫県立美術館 アトリエ2
講師 野口里佳 (写真家)
対象 高校生以上
定員 12名
参加費 1,500円 (材料費)
申し込み 2023年12月20日 (水) 10:00までにWEBサイトより。応募多数の場合は抽選。
https://www.e-hyogo.elg-front.jp/hyogo/uketsuke/form.do?id=1701397077274
こどものイベント特別編 野口里佳さんによるワークショップ
日時 2024年1月21日 (日) 10:15~17:00
会場 兵庫県立美術館 アトリエ2
講師 野口里佳 (写真家)
対象 高校生以上
定員 12名
参加費 1500円 (材料費)
申し込み 2023年12月20日 (水) 10:00までにWEBサイトより。応募多数の場合は抽選。
https://www.e-hyogo.elg-front.jp/hyogo/uketsuke/form.do?id=1701239102955
ゆっくり解説会 in Winter
日時 2024年1月14日 (日) 13:00~14:35
会場 兵庫県立美術館 レクチャールーム
定員 60名 (先着順)
学芸員によるレクチャー
日時 2024年1月6日 (土)、2月10日 (土) 各日15:00~15:45
会場 兵庫県立美術館 レクチャールーム
定員 60名 (先着順)
ミュージアム・ボランティアによる解説会
日時 神戸展の会期中毎週日曜11:00~ (約15分)
会場 兵庫県立美術館 レクチャールーム
定員 60名 (先着順)
安井仲治 (Nakaji Yasui)
大正期から太平洋戦争勃発に至る激動の時代に、写真のあらゆる技法と可能性を追求し、心震わせるような忘れがたいイメージの数々を印画紙に焼き付けた写真家。1903 (明治36) 年、現在の大阪市中央区に生まれた安井は、親から与えられたカメラに魅せられ、10代にして同好の士が集う関西の名門・浪華写真倶楽部の会員となり、瞬く間に日本全国にその名を知られる写真家となる。ピグメント印画の技法を駆使した作品や、1930年前後の日本で流行した新興写真と呼ばれる絵画とは異なる写真ならではの画面を志向する作品など、安井の作品は時代の潮流に敏感に反応しながらも、カメラを介して世界と向きあった時に生じる心の震えを繊細に、時には激しく受け止めている点において一貫していた。卓越した作品とともに温厚篤実な人柄から人々に慕われたが、1942 (昭和17) 年、病によりこの世を去る。38歳の若さだった。
〈文〉市井康延