「生と死に対するまなざしの変容」写真家・熊谷直子の第二作品集『レテに浮かんで』の刊行記念写真展を開催

写真家・熊谷直子さんの第二作品集『レテに浮かんで』の刊行を記念し、東京都・三鷹市井の頭のbook obscura(ブックオブスキュラ)で写真展を開催します。関連イベントとしてトークイベントも実施されます。

©熊谷直子

熊谷さんは商業写真、特にポートレイトにおいて、被写体の人物の対話を重ねつつ、内面の核を片手で掴み取るような写真表現を模索してきた作家です。

『月刊 二階堂ふみ』『杉咲花ファースト写真集 ユートピア』といったメジャーフィールドの仕事から、大駱駝館、イ・ランといった独創的な表現者の方々との撮影者/被写体という区分を超えた共創、そして友人知人との関わりに至るまで、多岐にわたる人々との「関係」をカメラに収めてきました。

その中でも近年、熊谷さんが重要な被写体としてきたのは、東日本大震災のあとに出会った宮城県気仙沼の人々と、認知症を患い施設に暮らす母親でした。

©熊谷直子

多くを失いながらも今を強く生きる被災地の人々と、生の証である記憶を日々失いながら毎日を「あたらしい生」と共に生きる母。熊谷さんはそこに自身の「今」へと流れ込むひとつの河の流れを見出した第一作品集『赤い河』(TISSUE PAPERS、2017年)を発表しました。

それから7年の歳月が経ち、コロナ禍を挟む期間に母がこの世を去り、実家が解体されて更地になったり、更には友との別れを経験をしました。

これまで築き上げてきた「関係」そのものの喪失の中で、「忘れたくないから写真を撮っていると思っていた」という作家自身の価値観も少しずつ変化が訪れます。

人生の中で経験した喪失と忘却の中で、生と死に対する「まなざしの変容」の過程を記録した渾身の一作が、本作の『レテに浮かんで』です。

『レテに浮かんで』・カラー128P、モノクロ8P ・サイズ230mm×182mm ・カバー銀紙仕様 ・定価¥8,800(税込) 写真・テキスト:熊谷直子  編集・デザイン:安東嵩史(TISSUE PAPERS)

熊谷さんが到達した新境地。「そこに何が写っているか」を超えた「固有の目」の置きどころに注目です。写真という表現の本質とは何なのか。ぜひ、本書及び写真展から存分にご堪能ください。

熊谷直子の第二作品集『レテに浮かんで』 刊行記念展示

会期 2024年8月29日(木) 〜2024年9月23日(月)
会場 book obscura ブックオブスキュラ
住所 東京都三鷹市井の頭4-21-5 #103
時間 12:00 – 19:00(定休日:火・水)※9月16日(月)、9月22日(日)、23日(月)の祝日も営業致します。

トークイベント

日時 2024年9月14日(土)19:30~21:00
会場 book obscura ブックオブスキュラ
定員 先着15名(店舗閲覧は要予約)
参加費 無料
出演 熊谷直子(写真家)、安東嵩史(TISSUE Inc.)、黒﨑由衣(book obscura店主)

 

熊谷直子(くまがい なおこ)

写真家。1976年生まれ。幼少期よりカメラに触れ、写真を撮りはじめる。20歳でパリに渡り、写真・芸術を学ぶ。ドキュメンタリー性のある作風を生かしたポートレイト撮影を得意とし、雑誌・webなどさまざまなメディアで活動する。2017年に作家として『赤い河』を発表。また、『月刊二階堂ふみ』『杉咲花ファースト写真集・ユートピア』、『Bailar 山本舞香1stフォト&スタイルブック』、『川上なな実・すべて光』などアーティスト・俳優等の人物に焦点を当てた写真集も多く担当し、発表している。
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