≪ Tough TG-5の製品概要 ≫
オリンパスのT(Tough)シリーズは、使う場所や環境を選ばないタフネス系のコンパクトデジカメである。そのシリーズの最上位モデルは、今年6月に発売された『Tough TG-5』になる。広角端の開放F値がF2.0と明るい光学4倍ズームの搭載や、防水15m・防塵・耐衝撃2.1m・耐荷重100kgf・耐低温−10℃…といった優れたタフネス性能は従来モデルの「STYLUS TG-4 Tough」から継承されている。
そして、イメージセンサーには、高速かつ高感度性能に優れた新開発のHi-speed裏面照射型CMOSセンサー(有効画素数は1200万画素と抑え気味)を採用し、画像処理エンジンはデジタル一眼カメラのフラッグシップモデル「OM-D E-M1 Mark II」と同じTruePic VIIIを採用している(STYLUS TG-4 Toughのセンサーは有効画素数1600万画素のCMOSセンサー)。
また、前述の “優れたタフネス性能” がさらに進化。レンズ部の保護ガラスをダブルガラス構造にすることで、温度差の大きな環境でも結露しにくい「耐結露」も実現したのである。
≪ 基本仕様&機能をチェック ≫
広角端がF2.0と明るい光学4倍ズームは、広角25mmから中望遠100mm相当(※)までをカバーする(※35mm判換算)。この点は、従来モデルSTYLUS TG-4 Toughと変わらない。だが、画素数を抑えた新しい裏面照射型CMOSセンサーと新画像処理エンジンの採用によって、高画質化やノイズレベルの改善(ISO感度1段分とのこと)が図られている。もちろん、1.0型の大型センサーほどの高画質は望めないが、1/2.3型センサー機でも “画質向上の努力” を惜しまない点は評価したい。
また、JPEGだけでなく「RAW記録」にも対応、デジタル一眼カメラと同様の仕上がり設定「ピクチャーモード」を搭載…といった従来モデルから継承する “基本仕様の充実ぶり” も、このTough TG-5の魅力的な部分だと思う。
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Natural
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Vivid
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Flat
共通データ:オリンパス Tough TG-5 25mm相当で撮影 プログラムオート F8 1/160秒 −0.3補正 WB:オート ISO100 4000×3000ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
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RAWデータを現像(新規JPEGデータ)
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RAW+JPEG撮影でのJPEGデータ
共通データ:オリンパス Tough TG-5 100mm相当で撮影 プログラムオート F6.3 1/400秒 −0.3補正 ISO100 4000×3000ピクセル JPEG
Tough TG-5のフィールドセンサーシステムは、移動中の位置情報(緯度・経度)や気温・水温、標高(水深)、方位のトラッキングデータを記録することが可能(上面のレバーをLOGに設定すれば記録開始)。そして、INFOボタンを押すと、現在の取得データが表示される。…ただし、LOG記録設定にすると、電池の減りがドーンと早くなるんだよなぁ。
≪ 驚異のマクロ機能&アクセサリー ≫
Tough TG-5の撮影機能で最も魅力があるのが、マクロ撮影に関連する4種類の撮影モードと、後述する接写用アクセサリーからなるバリアブルマクロシステムである。この撮影モードとシステムを活用すれば本格的なマクロ撮影が…というより、肉眼を超えた “ミクロの世界” が捉えられるようになる。
「顕微鏡モード」は、レンズ先端から1cmの距離までの被写体にピントが合うモード。光学ズームも使用でき、倍率7倍(35mm判換算の倍率。以降、同様)の大きさで撮影できる。
「顕微鏡コントロールモード」は、被写体がレンズ先端から1cmの位置にあるときの表示倍率が表示され、さらに表示倍率を1倍、2倍、4倍に切り替えられる。最大の表示倍率は44.4倍なので、1mmの被写体なら、モニター上に44mmまで拡大して表示できることになる。なお、撮影倍率そのものは28倍である。
「深度合成モード」は、ピントをずらしながら撮影した複数の画像を使用して、被写界深度の合成を行うモード。このモードで撮影すれば、被写体の手前から奥までピントが合ったマクロ写真を撮る(作る)ことができるのだ。ちなみに、これら4つの撮影モードはSTYLUS TG-4 Toughにも搭載されていたが、TG-4の深度合成モードだと画素数が800万画素以下に。だが、TG-5ではフル画素での撮影が可能である。
「フォーカスブラケット」は、シャッターを1回押すと、ピントの位置を少しずつずらしながら最大30コマまで撮影ができるモード。撮影の後から、ピントの位置を見ながらベストショットを選ぶことができる…というメリットがある。ピントの移動量は3種類から選択でき、最大撮影倍率は7倍。
バリアブルマクロシステムには、カメラ内蔵のLEDライトを均一に照射する「ライトガイド LG-1」と、カメラ内蔵のフラッシュ光を拡散・照射する「フラッシュディフューザー FD-1」がある。後者のFD-1なら、より速いシャッタースピードで撮影でき、動きのある被写体も止めて写せる…というメリットがある。なお、今回の撮影では、この「フラッシュディフューザー FD-1」を使用した。
モードダイヤルを顕微鏡のアイコンに設定すると、4種類のマクロ撮影に関連する撮影モードが選択できる。
Tough TG-5に「フラッシュディフューザー FD-1」を装着。光量切り替えレバーにより、約1.4段分の光量調節が可能。
温室内のベゴニアの花…ではなく、葉の裏側(葉脈)。「顕微鏡モード」+「フラッシュディフューザー FD-1」使用でのフラッシュ発光で撮影した。オリンパス Tough TG-5 100mm相当で撮影 プログラムオート(顕微鏡モード) F4.9 1/100秒 フラッシュ発光 WB:オート ISO100 4000×3000ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
こ〜んな地味な被写体も、顕微鏡モード+フラッシュディフューザー FD-1で観察すれば、興味深い “マクロの世界” が捉えられる。
「深度合成モード」の設定画面。この撮影機能は、オリンパスのデジタル一眼カメラでも、フラッグシップモデルの「OM-D E-M1 Mark II」と、ファームウェアVer.4.0を適用した前モデル「OM-D E-M1」にしか搭載されてないんだよなぁ。
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深度合成モード
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通常モード
レリーズの “約0.5秒前” から10コマ/秒の連写撮影が可能な「プロキャプチャーモード」も搭載。通常の撮影モードでは難しい一瞬が捉えられる、高度な撮影機能である。
≪ コンバーターで撮影領域を拡大 ≫
魚眼と望遠の2種類のコンバーターレンズ(別売)が使用できる。それもTough TG-5の魅力的な要素である。
「フィッシュアイコンバーター FCON-T01」を装着すれば、レンズの明るさを落とさずに、よりワイドな画角(18.5mm相当)で、周辺部が湾曲するな魚眼レンズの描写を得ることができる。
一方、「テレコンバーター TCON-T01」を装着すると、レンズの明るさを落とさずに、望遠効果を高めることができる(170mm相当)。それにより、遠くの風景や被写体を、画面内に大きく写すことができるようになる。実際に撮り比べてみると、通常の望遠端100mm相当と、テレコン使用時170mm相当との差は、かなり大きく感じる。まあ、前者は “標準ズームの領域” で、後者は “望遠ズームの領域” だからね。
どちらのコンバーターも、装着するには「コンバーターアダプター CLA-T01」の併用が不可欠である(ボディ付属のレンズリングを外して)。そして、どちらも防水性能を備えていて、水中での使用が可能。また、窒素ガスの充填により、温度差による内部曇りを防止する。ちなみに、このアダプター “だけ” をTG-5に装着することで、市販の40.5mmフィルターが使用できるようになる。
ちょっと径がデカい「フィッシュアイコンバーター FCON-T01」。まあ、許せないほどのデカさじゃないけど。
コンバーターを使用する際には、ファンクションメニュー「アクセサリー」の項目内で、該当コンバーターを設定する。そうすれば、コンバーター使用によるレンズ焦点距離(の変化)が、Exif情報に反映される。
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フィッシュアイコンバーター FCON-T01使用(18.5mm相当)
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通常撮影での広角端
(25mm相当)
径が小さくて、Tough TG-5ボディとの組み合わせバランスも良好な「テレコンバーター TCON-T01」。
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テレコンバーター TCON-T01使用(170mm相当)
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通常撮影での望遠端
(100mm相当)
オリンパス Tough TG-5 プログラムオート 25mm相当で撮影 F8 1/250秒 WB:オート ISO100 4000×3000ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
オリンパス Tough TG-5 プログラムオート 170mm相当で撮影(テレコンバーター TCON-T01使用) F6.3 1/400秒 −0.3補正 WB:オート ISO100 4000×3000ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
オリンパス Tough TG-5 プログラムオート 100mm相当で撮影 F4.9 1/100秒 WB:オート ISO320 4000×3000ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
オリンパス Tough TG-5 深度合成モード 30mm相当で撮影 F3.2 1/125秒 −0.3補正 WB:曇天 ISO250 4000×3000ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
オリンパス Tough TG-5 プログラムオート 18.5mm相当で撮影(フィッシュアイコンバーター FCON-T01使用) F2 1/20秒 WB:オート ISO400 4000×3000ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
オリンパス Tough TG-5 プログラムオート 18.5mm相当で撮影(フィッシュアイコンバーター FCON-T01使用) F2.8 1/400秒 −0.3補正 WB:晴天 ISO100 4000×3000ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
オリンパス Tough TG-5 顕微鏡モード 100mm相当で撮影 F4.9 1/125秒 WB:晴天 ISO400 3000×4000ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
オリンパス Tough TG-5 プログラムオート 25mm相当で撮影 F2.8 1/800秒 −0.3補正 WB:オート ISO100 4000×3000ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
≪ 伝統のタフネス性能に、先進の機能も搭載! ≫
普及し続けるスマホ(スマートフォン)に搭載されるカメラ機能の進化により、多くの “普通のコンデジ” は存在意義が薄れてしまった。だが、そんな現在のコンデジ事情にあっても、防水・防塵・耐衝撃・耐低温性能を備えるタフネス系コンデジは、独自の存在感を放っている。元々、オリンパスはこのジャンルのカメラ作りに長けたメーカーだが、最近のモデルではタフネス性能に加え、デジタル一眼カメラ顔負けの先進的な機能も搭載している。そんな点も「Tough TG-5」の魅力的な部分である。