最近はスマホカメラの高画質化が目覚ましいが、なかでも注目度が高いのは、ドコモから発売されているファーウェイ「HUAWEI P20 Pro」だ。最大の特長は、高級コンパクトカメラにも匹敵する、1/1.7型の大型センサーを搭載していること。その実写レビューをお伝えしよう。
■第3の目として望遠レンズを新搭載
▲ファーウェイ「HUAWEI P20 Pro」
大手スマホメーカーのファーウェイといえば、近年はカメラ機能への徹底したこだわりが特長になっている。2016年に発売した「HUAWEI P9」ではライカと共同開発したダブルレンズを初搭載し、一段上の高画質とボケ表現を実現。さらに2017年の「HUAWEI P10/P10 Plus」では画素数アップやAFの強化、光学手ブレ補正の搭載などを図り、画質重視のユーザーから高い評価を得た。
そして今回取り上げる「HUAWEI P20 Pro」は、P10 Plusの後継として2018年6月にドコモから発売されたモデルだ。レンズはさらに強化され、世界で初めてライカブランドのトリプルカメラを採用。カラー用とモノクロ用という2つのレンズから情報を得て、より豊かな色や階調を生み出すという技術を既存モデルから継承しつつ、さらに第3の目として望遠レンズを備えたことで、高画質でのズームアップ撮影が可能になっている。
まずは、同じ場所から段階的にズームアップして撮影した写真を見て欲しい。
▲広角レンズで撮影。35mm判換算の焦点距離は27mm相当。広々とした構図で風景やスナップを撮るのに最適な画角だ。
▲望遠レンズで撮影。35mm判換算の焦点距離は80mm相当。画質劣化なしで、中望遠での撮影が楽しめる。
▲5倍のハイブリッドズームで撮影。35mm判換算の焦点距離は135mm相当。光学3倍の状態から画像の中央部を切り出すことで望遠効果を得ている。
▲10倍のデジタルズームで撮影。35mm判換算の焦点距離は270mm相当。ズーム比5.1倍以降はデジタルズームとなるため画質は劣化するが、ウェブ用途なら十分実用的な画質だ。
奥行き約7.9mmの薄型形状ながら、広角から望遠までの幅広い画角に対応することはありがたい。遠景のディテールまでくっきりと再現できる解像感の高さと、暗部から明部までの滑らかな階調性が確認できる。
この写りは、4000万画素のカラーセンサーで得た色情報と、2000万画素のモノクロセンサーで得た輝度情報が合成されることで生み出されている。モノクロセンサーは、RGBのカラーフィルターを通さないので輝度情報への感度が高く、被写体の細部までを正確に記録できるのだ。
▲ユニークなトリプルレンズを搭載。左から順に、2000万画素モノクロレンズ、4000万画素カラーレンズ、800万画素ズームレンズとなっている
▲さらに画質にこだわる場合は、RAWで撮ることも可能だ。カメラの設定メニューから「RAW形式」を選択すると、通常のJPEGファイルに加えてDNGファイルを同時記録できる。
▲記録画素数は、最大で7296×5472ピクセルに対応。A3プリントにも適した巨大な画像が得られる
▲DNG形式で撮った写真を現像ソフトLightroomで開いてみた。左が全体表示で、右がその一部分を等倍表示にした状態。非常に精細感が高く、小さく写った歩行者の姿や車のナンバープレートまで確認できる
■シーンや被写体を自動認識するAI機能
撮影機能としては、AIによる被写体の認識機能が面白い。これは「ポートレート」や「花」「フード」「夜景」「文字」といった19種類の被写体をカメラが判別し、その被写体に応じて各種の設定を自動的に最適化してくれる機能だ。例えば「花」なら色彩がいっそう際立つように彩度が強調され、「文字」なら読みやすくなるようにメリハリ感が高められる。
▲「犬」を認識。認識すると、それを示すアイコンと文字が画面上に表示される。不要の場合はオフにすることも可能だ。
▲「フード」を認識。より鮮やかで見栄えのする色合いになった。
▲「花」を認識。彩度がアップし、色彩感がいっそう際立った。
▲「日の出/日の入り」を認識。濃厚な夕焼け空に仕上げることができた。
トリプルカメラを生かした機能としては、ポートレートモードやアパーチャモードにも注目したい。ポートレートモードは、カメラが人物の顔を認識したうえで、背景にぼかしを加えて人物のみを引き立たせる機能だ。
▲ポートレートモードで撮影。輪郭に沿って人物と背景が分離され、背景のみにぼかし効果が加わることで、立体感のある写真となった。
ポートレートモードでは、こうした背景ぼかし効果に加え、人肌を滑らかに表現するビューティ(美肌)効果や、光を当てたように写真を補正するライティング効果も適用できる。いずれの効果もリアルタイムで画面に反映するので、補正状態を目で確認しながら撮影できる点も便利といえる。
一方アパーチャモードは、絞り値を変更するような感覚でボケの度合いを調整したり、ピント位置を撮影後に変更したりできるモードのこと。ポートレートモードとは違って、人物に限らず、静物や風景に背景ぼかしの効果を加えることも可能だ。
▲アパーチャモードの操作画面。撮影後、絞りのスライダーを動かしてボケ量を調整することができる。
▲アパーチャモードでは、再生時に画面上をタップすることで、ピント位置を後から変更もできる。
■最高ISO102400の高感度撮影に対応
撮像素子には、1/1.7型の裏面照射型センサーを搭載。多くのスマホカメラが採用している1/2.9~1/2.3型のセンサーに比べると面積が一回り以上大きく、その分だけ光を多く取り込むことができ、高感度に有利になっている。最高感度はISO102400に対応。薄暗いシーンでも被写体ブレを最小限に抑えられる。
次の写真は、水族館の水槽を撮影したもの。感度をISO6400まで上げることで、シャッター速度は1/500秒の高速となり、魚をぶらさずに捉えることができた。
▲ISO6400の高感度でもノイズは目立たないように低減されている。
▲ISO800で撮影。薄暗いシーンでのスナップ撮影にも打って付けだ。
▲手ブレ補正には、AIを利用した独自のAIイメージスタビライゼーションを搭載。暗所でも手持ちでシャープに写すことが可能だ。
▲マニュアルモードでは、ISO感度やシャッター速度を手動設定できる。ここでは画質を優先するため、暗所ながらあえて低感度のISO100を選択した。
AFには、像面位相差AFとコントラストAF、レーザーAF、さらにトリプルレンズの深度情報を利用する「デプスAF」という4方式を組み合わせた「4-in-1ハイブリッドフォーカス」を既存モデルから継承している。その上で、動く被写体の動きを予測してピントを合わせる「4D予測フォーカス」機能を新搭載。動きのある被写体にもスムーズに合焦する。
▲ピントを合わせた足元の部分はシャープに解像。地面の質感もリアルに再現できている。
今回の試用では、これまでのスマホカメラに比べて一段上の高画質を満喫することができた。特に、RAWで撮影したときの細部表現力の高さと、高感度画質の美しさは特筆に値するレベルだ。
惜しいのは、RAW記録ができるのは広角レンズのみで、望遠レンズ選択時は通常のJPEG記録になること。またLightroom mobileなどのサードパーティ製カメラアプリを使った場合、望遠レンズに切り替えられない点も少々物足りなく感じる。
とはいえ、純正カメラアプリを使ってJPEGで運用する範囲では、不満や不都合はない。スタイリッシュな薄型デザインや防水防塵性能、バッテリー持久力の高さなども気も入った。画質重視でスマホを選ぶなら、有力な候補になるだろう。
▲高品位な薄型デザイン。ノッチが小さく画面占有率が高いので、写真を大迫力で鑑賞できる。
〈写真・文〉永山昌克