機材レポート

ポケットに入る超望遠!ソニー渾身の高倍率ズーム機「HX99」レビュー【後編:実写チェック!】

2018年11月、ソニーから小さなボディに高倍率ズームレンズを搭載したコンパクトデジタルカメラ「DSC-HX99(以下HX99)」が登場した。本モデルは同社の高倍率ズーム機のフラッグシップにあたる。後編では実写を交えたレビューをお届けする。

 

→ 前編では外観と操作性に着目!

 

↑RX100シリーズを思わせるデザインを持つHX99(実売価格5万6900円)
 

RX100シリーズにも通ずる画作りの上手さを実感

撮像素子は1/2.3型の裏面照射型CMOSセンサー、Exmor R。有効画素数は1820万画素だ。画像処理エンジンはBIONZ Xを搭載する。ワイド端24mm相当は、絞り開放では画面中心部と周辺部で解像力の差がややあるが、よほど拡大しなければ気にならないレベル。F5.6に絞ると均一感が増す。

 

↑24mm相当。広角レンズらしい誇張された遠近感を狙った。高い解像力で窓枠をシャープに再現した。また明暗差が大きいが、ハイライトからシャドーまでの階調も豊かだ
 

↑最短撮影距離は、24mm側でレンズ先端から5cm。ここではそれを生かし、塀の上に置かれていた大きさ数センチの動物を置物に迫った。絞りは開放。ここまで近づくと、1/2.3型の撮像素子でも背景がボケる
 

テレ端720mm相当は、絞り開放でも画面全体で安定した描写だ。またズーム全域で絞り開放でも周辺光量低下が見られないので、空が大きく入るようなシーンでも安心して絞りを開けられる。

↑カラフルなボートが反射する水面を背景に、池の杭にとまっていた鵜を720mm相当で撮影した。EVFを覗きながら、鵜が横を向いた瞬間にシャッターを切った。動物や鉄道などの望遠撮影が手軽に楽しめる
 

ただ正直なところを言えば、ピクセル等倍で見ると細かい部分の解像力は決して高いとはいえない。それでも拡大しなければ全く気にならず、逆に解像力は高く感じるほど。Webへのアップやスマホでの鑑賞、あるいはA4サイズ程度のプリントなら十分実用的な画質だ。RX100シリーズにも通ずる画作りの上手さを実感した。

また高感度は主観にもよるが、ISO1600までは常用の範囲内。ISO3200以上は、被写体のディテール再現が苦手になるようだ。1/2.3型のCMOSセンサーとしては上々だろう。

 

↑高感度にすると、ノイズリダクションの影響で被写体のディテールが損なわれるが、ISO1600なら十分実用的。服の質感もしっかり再現されている
 

720mmの超望遠域でいきなり構えると、画角の狭さでどこを見ているのかわからなくなることがある。その場合はワイド側へズーミングして、被写体を画面に捉えた状態でクローズアップするのがおすすめだ。ポケットに入るほど小さなボディで、肉眼を超えた超望遠の世界が楽しめる。

 

欲張りな人にこそおすすめなカメラ

現在のコンパクトデジタルカメラ市場は、iPhoneをはじめとするスマートフォンの普及で苦戦しているが、HX99のような携帯性と高倍率を組み合わせたスマホは存在しない。またカメラらしい質感と操作感も魅力だ。スマホのカメラ機能では撮れない写真が楽しめて、しかも携帯性に優れ、カメラらしい味わいを持つボディが欲しい、という欲張りな人に、HX99は注目のカメラだ。

 

↑チルト式の背面モニターを活かして、ローアングルで撮影した。しかもタッチパネルなので、ピントは画面上の靴にタッチして合わせている
 

↑高倍率ズームレンズは、極端な画角の変化を楽しむだけでなく、画面整理にも役立つ。自転車と黄色い壁に映った影に視点を集中させるため、画面に余計なものが入らないよう、ズーミングで調整した