「楽しく撮れるレンズ」とは――スナップ撮影で実感したこと
ここまでレンズの性能を検証してきたのだが、李氏が言っていた「楽しく撮れるレンズ」とはいったいどんなことなのだろう?と風景写真で性能の検証をしている間は、正直、実感がわいてこなかった。しかし、LAOWA 9mm F2.8 ZERO-DをX-H1にセットして街のスナップを始めたら手に取るように実感することができた。
ちょうど良い周辺の落ち方
上述の通り、筆者はLAOWA 9mm F2.8 ZERO-Dの周辺落ち方が嫌いではない。むしろ大好物である。この落ち方を生かして撮るにはストリートスナップをおいてほかにはない!と思い、北海道の街並みをスナップしてみることにした。
X-H1はLAOWA 9mm F2.8 ZERO-Dとの組み合わせでもボディ内手ブレ補正が有効で、良好に手ブレを補正していた。手ブレ補正が効いてくれると、アングルの自由度が増し、撮影の時間帯も幅広くなり行動の自由度も増す。
まるで「写ルンです」のようだ!
絞っても面白い撮影ができる。
被写体からおよそ2mも離れ絞りもf8くらいまで絞ると、ほとんどの場所にピントが合いパンフォーカスとなる。そうなると「あ!いい!」と思った瞬間、難しいことなんか考えずにガンガンシャッターを切りまくることができる。
「一写入魂」じっくりと構図を考え、切ったフレームに入ってくるものを待ち、作りこんで撮影することも大事だということは身に沁みて知っている。・・・が、反面、インスピレーションの赴くまま条件反射のごとくガンガンシャッターを切っていく面白さがあることも筆者は知っている。
あれ・・・この感じどこかで・・・ん?「写ルンです」だ!
あぁ・・・とにかく撮るだけで楽しかった時代、撮影を仕事にする遥か昔のこと、写真は好きだけど・・・カメラを買うこともできず「写ルンです」片手に街並みを切り取っていたな・・・と、そんなことを思い出した。「写ルンです」の焦点距離は32mmだからLAOWA 9mm F2.8 ZERO-Dと画角はかなり違うのだが、なんだかノスタルジックな楽しさが蘇ってきたのだ。しかもテスト機材のFUJIFILM X-H1には、「写ルンです」のフィルム巻き上げダイヤルのあった位置と同じような位置にリヤダイヤルがあって、撮影後つい回してしまっている自分がいた(笑)。
なるほど・・・筆者にとっての「楽しく撮れる」はこんなところにあったかと、しみじみした気分で実感したのであった。
マニュアルフォーカスでもピント合わせは楽ちん
さて、最後にピント合わせの話をしておこう。
マニュアルフォーカスというと敷居が高く感じてしまう方もいるかもしれないが、昨今のカメラはとてもフレンドリーでMFにアシストがある。
FUJIFILM X-H1の場合、メニュー画面→AFMFの項目からMFアシストを選び、次にアシスト内容を選ぶ。筆者はフォーカスピーキング(レッド弱)が使いやすいので、いつもこれを使っている。このアシストはピントが合っている場所に赤い縁取りが施され、マニュアルフォーカスでもピンボケになることがほとんどない。また、ミラーレスはデジタル一眼レフとは違いファインダーで拡大し確認することができるので老眼の入り始めた筆者の眼でも非常に楽である。
ちなみに最短撮影距離は12cmとかなりの接近戦が可能。思い切り被写体に寄って、背景も広く入れ込むという広角レンズならではの画も得意なレンズである。
今回テストしたレンズLAOWA 9mm F2.8 ZERO-Dは、2月28日からパシフィコ横浜で行われるカメラと写真の祭典CP+にも出展される。筆者も講師としてLAOWAのブースに登壇する予定で、セミナーでは撮影裏話やLAOWA 9mm F2.8 ZERO-DとX-H1の組み合わせで撮影する場合、どんなカメラセッティングで撮影するとより面白く撮影できるのか、など実践的なお話もさせていただくことになっている。ご興味があれば、ぜひお越しいただきたい。