機材レポート

トリプルレンズ&瞳AF搭載スマホ「Xperia 1」をプロカメラマンがガチ体験レポ

先日、2019年初夏の国内発売がアナウンスされているソニーの最新スマートフォン「Xperia 1」の体験会が催された。本機種はカメラ機能、そしてモニター性能が大幅に強化されたということで、カメラ誌関連にも声がかかった。ということで早速、そのときのインプレッションをカメラマン目線でお届けしよう。

 

Xperia 1の新しいカメラ機能に迫る

3つのカメラの意味

外見的な特徴といえば、やはり背面に並んだ3つのカメラ。ダブルレンズはすでに多くの機種で採用されているので珍しくはないが、Xperia 1では、それが3つ。

 

レンズが複数台搭載されているというと、両方とも同じ焦点距離で片方がモノクロセンサーで云々…、という機能を思い浮かべがちだが、Xperia 1では焦点距離の違うレンズ(フルサイズ換算で26mm相当、52mm相当、16mm相当)が3つ並んでいるという極めてシンプルな分け方だ。

上から常用広角レンズでフルサイズ換算26mm相当、明るさはF1.6。真ん中がポートレート/望遠用で、フルサイズ換算52mm相当で明るさはF2.4。下が超広角で、フルサイズで16mm相当で明るさはF2.4。上2つとなる26mm、52mm相当のレンズは、レンズ群が動く光学式手ブレ補正(OIS)も搭載され、電子手ブレ補正(EIS)の双方で強力な手ブレ補正を行う。

 

レンズは3つ、どの焦点距離も6枚構成となっているようだ。この薄い中で高画質を徹底的に追求しているのがわかる。さらに26mm、52mm相当のレンズには、レンズ群の一部を動かす光学式手ブレ補正(OIS)機構も搭載されている。

 

デジタルズーム操作時には26mmから52mmへの切り換えは自動的に行い、最大260mmまでズームアップでき、ズーム比は10倍となる。

 

特に注目したいのは、いわば広角スペシャルとして搭載された16mm相当の超広角レンズ。広く撮りたい! 後ろに下がるスペースがない……といった場合などにワイドコンバーター要らずで、大活躍しそうなレンズだ。

 

ひとつ気になるところは、この超広角レンズが1番下に付いているので、指やホルダー使用時にカブリがちなのは、ちと残念なところ。モニターサイズが21:9と細長くなったとはいえ、不注意を招くこともあるだろう。このあたり、縦並びのデザインにこだわらず、横並びにできなかったものだろうかと個人的には感じた。

 

以下の動画ではレンズを切り替えながら撮影している。同じ場所から1台のスマホでここまで違う切り取り方ができるのだ。

ちなみに、すべてのレンズに1220万画素の撮像素子(26mm相当レンズ:1/2.6型、52mm&16mm相当レンズ:1/3.4型)が付く。既存のXperiaは画素数イケイケで、これまでには2300万画素機まで登場していたが、今回はスタンダードで使いやすい画素数に落ち着いたようだ。

 

1点補足すると、今回は撮像素子がデュアルPD(フォトダイオード)となっている。一眼レフユーザーであれば、キヤノンのデュアルピクセルCMOSなどでお馴染みだが、要するに1画素が2個1対(つい)になっているタイプ。これは位相差AFに活用され、AF速度の点でかなり有利に働く。この後にもじっくり紹介するが、新たに搭載されたトラッキング可能な瞳AFにも大きく活用されることになる。

 

カメラファンなら、いずれミラーレス一眼のαにもこのデュアルPDが採用されるのか…、このあたりにも興味が広がっていくだろう。

 

強力な OIS&EIS による手ブレ補正機構

前述の通り、手ブレ補正は26mm/52mm相当の2つのレンズで光学式手ブレ補正(OIS)、そして電子手ブレ補正(EIS)がデュアルで効く仕様になっている。この効果はかなり強力で、写真撮影はもちろんのこと、動画撮影でもその効果をしっかりと実感できた。ちょっとした撮影であれば、スタビライザー要らずといってもいいほどだ。

 

次の動画ではわざと手ブレさせながら撮影している。画面の内と外の揺れ具合を見比べてもらえば、その補正効果の高さがわかるだろう。

ただし、16mm相当の超広角使用時は、一切補正が効かなくなる。これはおそらく、超広角で相対的なブレ量が少なくなり目立ちにくくなることや、超広角レンズでのOISの組み込みにくさ、中央部と周辺部でのブレ量が大きくなることでのEISでの処理のしにくさ(仕上がりの不自然さ)などが関係していると考えられる。

 

スマホでは初となる「瞳AF」に対応

AF関連ではデュアルPDによる位相差AFのほか、スマホでは世界初となる瞳AFが搭載されている点もトピックだ。αではすでに実用化され、その機能の効果の高さが認識されているが、Xperia 1ではそれがどこまで再現されているのか、体験会でちょっとしつこく使ってみた。ちなみに瞳AFは、切り替えなどは必要なく、自動的に効くようになっている。

動画をご覧いただければわかるとおり、確かにしっかりと瞳にフォーカスがきている。もう少し深くつっこむとするならば、顔の振りに対して、αシリーズを使っているときには面白いほどスムーズに左右の目の切り換えが行われるのだが、会場で試した限りXperia 1ではまだそこまでは実現できていないように感じた。

 

スマホの場合、レンズの被写界深度から考えて、左右の目で片方がぼけてしまうという状況は、よっぽどのアップでの撮影でない限りない、といっていいだろう。デュアルPDを持ってしても、横位置バストアップ程度での左右の距離差を検出することは、やはり難しい印象だ。実際にぼけてはいないのだからしょうがない。

 

ただし、切り替えが追いついていなくとも、ピントはしっかり合っている。また、極端に振りが大きい場合などは、スムーズに手前の目に合わせにいってくれるので安心感はあるだろう。

 

連写時も瞳を追い続ける「瞳トラッキング」

上記の瞳AFを効かせたまま連写できる「瞳トラッキング」も注目ポイントだ。次の動画を見てもらえばわかると思うが、追従はスムーズで、押しっぱなしの連写でも瞳を追い続けてくれているのがよくわかる。途中、回転するなどして後ろ向きになったときにピントをロストしても、顔が見え始めればすぐさま再認識してくれ、認識の確度は非常に高い印象だ。

 

高感度性能が進化したワケ

高感度性能もアップしている。ここでの注目ポイントは3つ。ひとつは画素数が少なくなり、1画素あたりのピッチが広がって約1.4μm(XZ3は1.12μm)になった点(26mm相当レンズ使用時)。次にレンズがF1.6に明るくなった点。そして最後にRAWノイズ低減処理によりS/N比で2倍に良くなった点だ。

特にノイズリダクションに関しては、今まで現像処理済み画像に対して行っていたものを、現像処理前のRAWに対して行うことになった。α同様、より効果的にノイズ低減が行えるようになったといえる。

 

オーバースペックに思えるほどの高性能モニター

モニターは4K有機EL、アスペクト比が21:9とシネマサイズを意識した横長のものになっている。その色域はBT.2020と極めて広く、マスターモニター同等。一般的には、かなりオーバースペックだが、ハリウッドなどのプロの現場での連携なども視野に入れたスペックで開発されているようだ。

ちなみにBT.2020は、写真撮影で広色域を得る際に設定できるAdobeRGBよりもさらに広い色域、あくまでも現在は動画用の色空間となる。上は後述の

 

横長、あるいは縦長なので、2画面などマルチ表示はもちろん、絵柄の表示エリアと操作エリアを分けるなど、様々な使い方が考えられる。

 

シネアルタとXperia 1

Xperia 1は“見る”だけでなく“撮る”ほうでも映画を意識している。標準搭載されている、シネアルタによる「Cinema Pro(シネマプロ)」というアプリでは、シネアルタのカメラ「VENICE」譲りのLook(プリセット色相)設定を利用して本格的な動画撮影をすることができるのだ。

 

シネマプロでのLookの操作、及び3つのレンズによる画角の変化は、次の動画を参照願いたい。

 

【まとめ】αのワイヤレスモニターとしての活用も視野に入る!?

印象としては、単なるハイエンド機というよりは、さらに上を目指したスペックに感じた。カメラもそうだが、特に気になったのはモニタースペックの凄さで、ここまでいろいろできて使い勝手がいいとαのワイヤレスモニターとしての活用も視野に入れてもよさそうだ。

 

カメラに関しては、瞳AFは被写界深度からいってもなかなかその機能を生かし切ることは難しいかもしれない。スムーズに左右の切り替えが効かないのは逆にややじれったくもあり、現状では、バストアップレベルの寄りでは顔認識のままでも十分にも思えた。

 

ほかには、今回はまだ見ることができなかったポートレートのボケ機能がどのくらい自然に仕上がるのか、これが今後気になる部分だ。