中村文夫の古レンズ温故知新「AVENON SUPER WIDE 21mm F2.8」
1951年に創業した交換レンズ専門メーカー、コムラー。安くてよく写るレンズの提供に加え、望遠レンズ用コンバーターの「テレモア」の大ヒットにより、多くのアマチュアカメラマンの支持を獲得したが、一眼レフのマルチモード化の波に乗り遅れ1980年に倒産した。
アベノン光機はコムラーで営業を担当していた阿部さんが1982年ごろに設立した会社。商品開発をコムラーOBが担うなど、まさにコムラーの正統を受け継ぐ光学メーカーだ。
ライカブームのころに脚光を浴びたリーズナブルな国産Lマウントレンズ
「アベノン スーパーワイド 21mm F2.8」は、28mmF3.5に次いでアベノンが手掛けたライカスクリューマウントレンズ。今でこそライカ以外の会社がライカ用レンズを扱うのが当たり前になっているが、アベノンはまさにその先駆者と言えるだろう。
このほかアベノンはライカ用ピンホールレンズ、広角レンズ用ビューファインダーなどのアクセサリー、さらにコンタックスGマウント用レンズのライカMマウント改造など、数多くのライカ関係の商品を手掛け、日本におけるライカブームのリーダー的な存在を目指していた。だがその途上で阿部社長が急逝。それから数年してアベノンは多くのライカファンに惜しまれながら解散した。
1994年、銀座松屋で開催された中古カメラ市で220本の限定発売と発表されたが、反応が大きかったことから通常品として発売された。価格は専用フード付で6万8800円。
距離計連動用カムは傾斜カムではなく平行に前後する高級タイプ。レンジファインダー機で正確な測距ができるが、最短撮影距離が1mとスクリューマウント仕様なのが残念。なお2000年に発売された記念モデルでは0.75mに変更された。
レンズ構成は6群8枚で前玉に大口径の凹レンズを採用したレトロフォーカスタイプ。このタイプはディストーションが大きくなる傾向が強いが、直線ラインが歪まず良好に補正されている。
ソニー α7 III F4 1/125秒 ISO250 AWB
〈文・写真〉中村文夫