中村文夫の古レンズ温故知新「MAMIYA SEKOR MACRO C 80mm F4 N」
「マミヤ セコール マクロ C 80mm F4 N」は、中判一眼レフの「マミヤ M645」用標準マクロレンズ。35mmフルサイズ機に組み合わせると中望遠マクロとして利用できる。初代は単層コートだったが、1985年にバック交換式を採用した「マミヤ M645 スーパー」の発売を機にレンズのマルチコート化がスタート。商品名の最後にNが付いた製品が誕生する。
1975年のマミヤM645発売から約3年遅れて登場したマクロレンズ。このレンズがマルチコートのNタイプに切り替わったのは1987年ごろだ。
手動の近距離補正機構を搭載した中判マクロ! マウントアダプターで美味しい部分を味わう
レンズ単体の最大撮影倍率は1/2倍。専用接写リングを組み合わせれば等倍までの接写ができるが、このときレンズ先端のリングをNからS位置に切り替えると近距離補正機構が作動。レンズ前群がわずかに繰り出され、接写時の像性能低下を防いでくれる。
現在のマクロレンズは、レンズ単体で等倍の接写ができるうえ近距離補正機構も自動的に作動するが、このレンズの発売時、特に中判カメラ用レンズでは手動切替式が当たり前だった。いずれにしても最先端の技術を駆使して高倍率撮影時の画質アップを図った画期的な製品だが、当時このすごさを理解できたユーザーはほんの一握り。知る人ぞ知る佳玉と言えるだろう。
専用接写リングを装着したレンズを、KIPON製マミヤM645→ペンタックスKアダプターを使用して「PENTAX K-1」に装着。カメラに焦点距離を入力すればボディ内手ブレ補正が利用できる。
専用接写リング(AUTO MACRO SPACER)を使用する際はレンズ先端のリングをS位置にセット。近距離補正機構が作動するほか、ヘリコイドに連動してリングが回転し撮影倍率を知ることができる。
接写リングを使用してネイチャーフォトに挑戦。美しいボケとちょっと柔らかな描写が郷愁をそそる。
PENTAX K-1 F5.6 1/640秒 ISO3200
〈文・写真〉中村文夫