ソニーのコンパクトデジカメ「サイバーショット」。そのなかで、1.0型(13.2×8.8mm)以上の大型センサーを採用しているのがRXシリーズだ。今回紹介する「RX0 II」も、そこに属する製品である。だが、このカメラは、ほかのRXシリーズとは外観や仕様が大きく異なっている。
ソニー
RX0 II
実売価格84,880 円(税別)従来モデルRX0と同様のキューブ型ボディが印象的な二代目モデル(2019年4月発売)。高画質設計でありながら、高い防水性能や堅牢性も備えている。
一般的に「アクションカメラ」と呼ばれている、防水性や耐衝撃性を備えた小型カメラ。RX0 IIのボディ形状やサイズは、それらに近いものである。しかし、このカメラ、中身はあくまで高画質や高機能を追求した高級コンパクトカメラなのだ。前身は2017年10月に発売された「RX0」で、その基本スタイルや仕様を受け継ぎつつ、より高機能でアクティブな製品へと進化している。
▲コンパクトな直方体ボディには、必要最低限の操作パーツが配置される。背面には、上下左右の4つのボタンを2方向に分けて配置。上面には、電源ボタンとシャッターボタンが配置される。
二代目「RX0」、その印象と操作フィーリング
RX0 IIを手にすると、その小ささと同時に、剛性の高さも実感する。水深10mの防水と防塵、高さ2.0mからの落下衝撃に耐える耐衝撃、最大200kgfの耐荷重性能。こういった高い堅牢性を備えているのである。メモリーカード/端子カバーやバッテリーカバーの開閉時には、カバー部のパッキンの反発が感じられ、そういった点からも防水・防塵性の高さをうかがい知ることができる。
▲59×40.5×35mmのRX0 IIは、実際に手にするとその“小ささ”を実感する。
▲背面の「メモリーカード/端子カバー」を開くと、HDMIマイクロ端子、マルチ/マイクロUSB端子、マイク端子、と3つの端子が並ぶ。記録メディアは、microSDメモリーカードかメモリースティックマイクロ。
電源ボタンによる起動はまずまずの速さで、終了は瞬時に完了する。シャッターボタン半押しによるピント合わせ(AF駆動)やシャッターを切った際の挙動は、RX100シリーズに近い印象だ。
また、液晶モニターの表示もそれらに近い。ただし、液晶モニターが1.5型と小さいので、筆者のような老眼が気になる世代にはややツライ…。また、このカメラには十字ボタンがなく、4方向のボタンが上下と左右に分けて配置されている。そのため、十字ボタン操作に慣れた人だと「直感的な操作ができない」と感じるかもしれない。
▲RX0 IIの液晶モニターのサイズは1.5型。その横に、3.0型の液晶モニターを搭載するミラーレス一眼のα7 IIIを並べてみる。その大きさの違いと同時に、両者のメニュー表示がほぼ同じであることに驚く。
▲撮影時の液晶モニターの表示(ファンクションメニュー表示も含め)は、ほかのRXシリーズと大きな違いはない。
ツァイスT*レンズや1.0型センサーなどが高画質の決め手
搭載されるレンズは、単焦点の広角レンズ「ツァイス テッサーT*24mmF4」(※焦点距離は35mm判換算)。広角レンズで気になることが多い周辺部の歪みを抑えた設計で、画面の隅々まで高解像で高コントラストな描写が得られる。また、定評のあるツァイスの最高級・多層膜コーティング「T*コーティング」が施されていて、逆光時などでもクリアな写りだ。
撮像センサーは、高感度で低ノイズや広いダイナミックレンジを実現する、集光効率の高い裏面照射タイプの有効約1530万画素のメモリー一体1.0型積層型「Exmor RS(R)CMOSセンサー」を採用。
このレンズと撮像センサーの組み合わせに加え、進化した画像処理エンジン「BIONZ X」も、このカメラの高画質性能に貢献している。進化した画像処理アルゴリズムで、解像感と低ノイズを両立させ、質感描写を追求した高画質を実現する。また、自然な質感を細部まで再現する「ディテールリプロダクション技術」や、暗所でも高い解像感を維持しながらノイズを抑える「エリア分割ノイズリダクション」。こういった先進技術により、高感度撮影時でも高い質感表現を可能にするのである。
<作例>
春の青空に映える新緑。こういった細かい絵柄の被写体だと、カメラやレンズの性能がハッキリ表れる。新緑の一部を切り出してみたが、一枚一枚の葉がしっかり描写されていることがわかる。
ソニー RX0 II プログラムオート F4 1/800秒 WB:オート ISO125
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<部分拡大>
<作例>
夕方、周囲が暗くなり始めたので、手ブレを起こさないシャッター速度が得られるよう、感度をISO3200まで上げて撮影した。撮像センサーが小さめ(1/2.3型など)のカメラだと、高感度ノイズやディテールの消失が目立つ感度である。だが、このカメラは大型の1.0型センサーを採用しているだけあって、その細部描写は格段に上質である。
ソニー RX0 II プログラムオート F4 1/50秒 WB:オート ISO3200
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<部分拡大>
▲撮影モードに関して、搭載されている露出モードはプログラムとマニュアルのみ(シャッター優先オートや絞り優先オートは非搭載)。今回のレビューではプログラムオートを多用した。
小さなボディからは想像できないスピード性能
画質だけでなく、スピード性能についても小さなボディからは想像できない健闘ぶりだ。
前述のメモリー一体1.0型積層型「Exmor RS(R)CMOSセンサー」は、高速信号処理回路を画素領域と別の層に配置する「積層構造」の採用により処理回路部分を大幅に拡張でき、信号処理のスピードが飛躍的に向上。そして、センサーからの大量の出力信号をDRAMチップ(メモリー)に一時保管することで、高速データ読み出しを実現する。
それにより、最高1/32000秒のアンチディストーションシャッター(動体歪みが極めて少ないシャッター)や最高約16コマ/秒の高速連写、最大960fps(40倍)のスーパースローモーション動画といった高度な撮影表現を可能にしている。
<作例>
撮影モードをマニュアルにして1/8000秒に設定。そして、最高約16コマ/秒の高速連写(速度優先連続撮影)で、目の前を高速で通過する特急列車を撮影。通常の電子シャッターのような動体歪みは目立たない。アンチディストーションシャッターの優秀さを実感!
ソニー RX0 II マニュアル露出 F4 1/8000秒 WB:オート ISO3200
後編では、初代モデルからの進化点を中心に紹介する。