キヤノンの入門者向けカメラ「EOS Kissシリーズ」の新作として、2019年4月25日に一眼レフカメラ「EOS Kiss X10」が発売された。“バリアングル液晶モニター搭載一眼レフカメラ”としては世界最軽量の約449g(バッテリー、カード含む/ブラック、シルバー)を実現しつつ、連写や高感度など性能的にも優れ、エントリーユーザーを中心に注目を集めている。
ここでふと気になるのは、同じEOS Kissシリーズのミラーレスカメラ「EOS Kiss M」の存在だ。2018年3月発売の同機は、軽さという点でいえばでEOS Kiss X10よりも軽い約387g(バッテリー、カード含む/ブラック)でサイズも小さい。
EOS Kiss X10とEOS Kiss Mは、一眼レフカメラとミラーレスカメラという構造上の違いはあれど、どちらも同じエントリーモデル。初めてカメラを買う人にしてみれば、どちらを選ぶべきか悩みどころだろう。そこで本稿では、この2機種をさまざまな角度から比較。その違いをチェックした。
▲EOS Kiss M(左)とEOS Kiss X10(右)。EOS Kiss X10も十分小型・軽量だが、EOS Kiss Mは、さらにひと回りほど小さく感じられる。両機ともワイド3型のバリアングルモニンター採用で、有効画素数も2410万画素と同等だ
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ファインダーの違い――クリアな光学式と失敗の少ないEVF
まず両機で構造的に違っているのは、ファインダーだ。EOS Kiss X10(以下、Kiss X10)は光学式(OVF)で、視野率は約95%、倍率は約0.87倍。一方のEOS Kiss M(以下、Kiss M)は約236万ドットの電子ビューファインダー(EVF)で、視野率は約100%となる。Kiss Mの倍率は非公表だが、実際に覗いた印象ではKiss Mのほうが大きく感じた。
視野のクリアさでは光学式のKiss X10が優れるが、Kiss MのEVFも十分な解像感があり、ホワイトバランスや明るさなどが反映されるので、失敗を防ぐという意味ではKiss Mのほうがベターだろう。
<ファインダー比較(写真上:Kiss X10、写真下:Kiss M)>
ファインダー撮影では、Kiss X10の測距点は9点に限られる一方、Kiss Mは背面モニター使用時同様の最大143点から選べる。
携行性の違い――システムとしてのコンパクトさはKiss Mが優位
外観上での両機の最大の違いは、やはり大きさ・重さだろう。単純に小さく、軽いカメラという意味ではKiss Mの圧勝。システムとして捉えても、Kiss Mは交換レンズも小さく、ダブルズームキットで比べてみるとその大きさや軽さの差はより広がる。例えば旅行や山登りなど長期間の携行を想定しているのであれば、このコンパクトさは非常に重宝するだろう。
<ボディ+ダブルズームの重さ比較(写真上:Kiss X10、写真下:Kiss M)>
それぞれ、ダブル―ズームキットの状態(メモリーカード、バッテリー込み)での重さを実測してみた。Kiss X10(上)の1㎏強に対し、Kiss Mは約0.77㎏と1.5倍近い差がついた。
操作性の違い――大きさに余裕のあるKiss X10の長所が見えてくる
単純な重さ比較ではKiss Mに軍配が上がるが、操作性まで含めて考えるとKiss X10の長所が見えてくる。
Kiss X10は適度な大きさがあり、ボタンなどのレイアウトにも余裕があるため操作しやすい。グリップも大きく、安定してカメラを構えられる。Kiss Mも、ボディサイズを考えると十分大きなグリップを採用しているので、軽量なダブルズーム程度なら問題なく使用できるものの、大柄な大口径望遠レンズなどの使用時はやや心もとない。
<グリップ比較(写真上:Kiss X10、写真下:Kiss M)>
グリップ部は、Kiss M(下)もボディサイズを考えると大きめで深さもあるが、サイズに余裕のあるKiss X10にはかなわない。特に重量のあるレンズを装着すると、Kiss X10の持ちやすさが際立つ。
<操作系比較(写真左:Kiss X10、写真右:Kiss M>
配置は似ているが、Kiss X10はボタン数がわずかに多く、スペースに余裕がある。対してKiss Mはスペースが詰まって見える。ただし、ボタンのカスタマイズの自由度はKiss Mのほうが高い。
<ガイド表示について>
撮影モード変更時などの「ビジュアルガイド」(上)は両機ともに装備され、使いこなし方がわかるようになっている。加えて、Kiss X10は、各効果を得るための「操作ガイド」(下)も表示。より初心者向きの仕様となっている。
交換レンズシステムの違い――レンズバリエーションの豊富さではKiss X10
Kiss X10とKiss Mは、マウントが異なっている。
まず、EOS Kiss M専用のEF-Mレンズは現時点で交換レンズが7本(内2本はダブルズームのキットレンズ)しかなく、種類の豊富なEFレンズやEF-Sレンズを使うにはアダプターが必要になる。その点、Kiss X10はEF-Mレンズは使えないものの、EFレンズやEF-Sレンズはアダプター無しで使用できる。
<EFレンズの装着について(写真上:Kiss X10、写真下:Kiss M)>
試しにフルサイズ対応のEF70-200mm F4 L IS Ⅱ USM(実売価格/17万1750円)を両機に装着してみた。EOS Kiss M(下)は、専用アダプターが必要だ。
▲EFレンズやEF-SレンズをKiss Mなどに取り付けるための別売アダプター「EF-EOS M」。実売価格/10800円。
つまり、EF-Mレンズのラインナップにはない大口径望遠レンズや望遠マクロレンズなどを使いたいなら、アダプターの必要ないKiss X10のほうが使い勝手がよく、ボディとレンズを組み合わせたときのバランスもよい。
▲Kiss Mボディ(メモリーカード、バッテリー含む)とEF-EOS Mアダプターの重量を実測。結果、537gとなりKiss X10の同条件でのボディ重量、約449gを88g超える結果となった。
次回は、実写を交えつつ両モデルの違いを見ていこう。
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