キヤノンの入門者向けカメラ「EOS Kissシリーズ」。一眼レフカメラの最新モデル「EOS Kiss X10(以下、Kiss X10)」とミラーレスカメラ「EOS Kiss M(以下、Kiss M)」は何がどう違うのか? 前編では使い勝手などを中心に比較してきたが、本稿は実写を交えつつ機能面の違いを見ていこう。
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撮影性能の違い――画質面での差は少ないが、連写性能には違いがある
EOS Kiss X10とEOS Kiss Mは、有効画素数が同じで、映像エンジンも最新の「DIGIC8」を採用。ISO感度も両機とも常用でISO25600まで対応しており、画質面での差は少ないといえる。
<高感度の作例>
▲Kiss X10のISO12800で撮影。高感度でも画質の破綻が少なく、手持ちでの夜景撮影などにも適している。
連写速度(AF追従)はKiss Mの最高約7.4コマ/秒に対し、Kiss X10は最高約5コマ/秒と差があり、連続撮影枚数(JPEG/ラージ・ファイン+RAW時)もKiss Mの約10コマに対し、Kiss X10は約9コマとなっている。
ただし、JPEG/ラージ・ファインのみの場合は、Kiss Mの約33コマに対し、Kiss X10はメモリーカード容量いっぱいまでOKだ。
<AF追従連写について>
AF追従での連写を比較してみた。上はKiss X10で連写した15コマ目、下はKiss Mで連写をした12コマ目。それぞれ次のカットで先頭車がフレームアウトした。連写速度はKiss Mが速いが、高速連写できる時間はX10が長く、速度低下後の落ち込みも少ない。
そのほか、動画に関しては両機とも4K24p(Kiss X10は25pにも対応)に対応していて、本体での静止画切り出しも可能と、同等の性能になっている。ただ、Kiss X10は一眼レフの宿命として、ファインダーを見ながらの動画撮影は行えないので、動画を撮る機会が多いならEOS Kiss Mのほうが様々な条件に対応しやすいだろう。
ダブルズームキットの違い――広角重視か望遠重視かで選ぶこともできる
ボディ以外で注目しておきたいのが、コスパが高く購入者が多いと思われる、ダブルズームキットのレンズの違いだ。Kiss X10は、標準ズームに「EF-S18-55mm F4-5.6 IS STM」、望遠ズームに「EF-S55-250mm F4-5.6 IS STM」を採用し、35mm判換算で28.8~400mm相当までをカバーする。
一方、Kiss Mは標準ズームに「EF-M15-45mm F3.5-6.3 IS STM」、望遠ズームに「EF-M55-200mm F4.5-6.3 IS STM」を採用。35mm判換算で24~320mm相当までをほぼカバーする。
<キットレンズの比較:広角端(ワイド端)編>
「EF-S18-55mm F4-5.6 IS STM」(Kiss X10のキットレンズ)のワイド端(上)と「EF-M15-45mm F3.5-6.3 IS STM」(Kiss Mのキットレンズ)のワイド端(下)。広角で撮るならKiss Mが有利だ。
<キットレンズの比較:望遠端(テレ端)編>
「EF-S55-250mm F4-5.6 IS STM」(Kiss X10のキットレンズ)のテレ端(上)と「EF-M55-200mm F4.5-6.3 IS STM」(Kiss Mのキットレンズ)のテレ端(下)。望遠はKiss X10が有利だ。
つまり、ダブルズームの2本のみで完結する場合は、広角重視か望遠重視かで選ぶこともできるということだ。スナップ撮影や記念写真などが中心ならKiss Mがサイズや重さ、レンズの面で有利。逆に風景やスポーツ撮影など、望遠を使って撮ることが多いなら400mm相当をカバーでき、カメラを安定して構えられるKiss X10が有利だ。
<Kiss X10作例>
Kiss X10を用い、250mmで高速連写。ダブルズームキットは望遠に強く、連写も途切れにくいので、結果的に動きモノ撮影も行いやすく感じた。
<Kiss M作例>
Kiss Mを用いて15mmで撮影。レンズが沈胴式ということもあり軽快に持ち運べる。24mm相当の広い画角で撮れ、広い風景やスナップ撮影に最適だ。
まとめ――一眼レフとミラーレスの違いが良い形で出ている
今回、改めて比較してみて、Kiss X10とKiss Mは、操作性などは似ているものの、一眼レフとミラーレスの違いが良い形で出ていると感じた。
Kiss X10は、一眼レフとしては軽量ながら撮影時の操作性が高く、連写なども含め、実用上のバランスが高い次元で取れている印象。エントリーユーザーからハイアマチュアまで、使って不満が出ることは少ないと思う。
一方のKiss Mは、ミラーレス機の魅力といえる小型・軽量である点を最大限に生かしつつ、小さなボディに機能や性能を詰め込んだ印象だ。ボタンのカスタマイズ機能なども備えているので、慣れは必要でも使い勝手も犠牲にはなっていない。そのため持ち歩きに適していて、使い込んで行くほど快適に使えるようになる。
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