2019年7月11日、東京都内でシグマの新製品発表会が行われた。この発表会では、同社のLマウントの新製品レンズの発売がアナウンスされたが、これと合わせてLマウントのカメラボディの開発についても発表された。
それはライカLマウント規格に基づいたフルサイズミラーレスカメラで、独自の「Foveon(フォビオン)X3センサー」ではなく、同社初のベイヤー式センサー採用のレンズ交換式カメラだ。しかも、大きさが112.6×69.9×45.3mmとフルサイズ機としては極めて小さく、重量も422g(メモリーカード、バッテリー含む)と軽量。この新製品「SIGMA fp」について、その魅力や使い勝手などについてお伝えする。
▲小型かつシンプルなデザインの「fp」。フォビオンX3センサー採用機では難しい「小型化」が、ベイヤー式センサーの採用で達成された。本機は静止画撮影はもちろん、動画撮影にもこだわった仕様となっているのが特徴の1つだ。
フォビオンX3センサーではなくベイヤー式センサーを採用した理由
従来のシグマのデジタルカメラといえば、「フォビオンX3」という独自センサーを採用しているのが大きな特徴だった。だが、今回の「fp」では「ポケッタブル・フルフレーム」「シームレス」「スケーラブル」という、3つの新しいコンセプトを持ったレンズ交換式カメラを考案。結果として、フォビオンX3センサーよりも発熱量が少なく小型化に向く、約2460万画素のベイヤー式センサーを採用したという。
しかも小型化・軽量化に有利、かつ静止画撮影と動画撮影をシームレスに楽しめるようにするという理由から機械式シャッターをあえて採用せず、電子式シャッターのみを採用。とはいえ、高速処理タイプのセンサー採用により、ほとんどのケースで電子式シャッターの弱点である、ローリングゆがみは発生しないとしている。
▲マウントはライカLマウントで、有効約2460万画素のフルサイズ裏面照射型ベイヤーCMOSセンサーを採用。現状フォビオンセンサーでは達成できていない、高い常用感度(ISO25600)などを実現。マウントサイズとボディの高さがほぼ同じことからも、このカメラの小ささがわかる。
基本スペックも、画素数は前記のとおり2460万画素と十分で感度は常用でISO100~25600、拡張感度ではISO6~102400まで対応。電子式シャッター採用により、連写も約18コマ/秒と高速でシャッター速度も1/8000秒まで対応している。このほか、防塵防滴仕様のボディで過酷な環境にも耐えうる仕様になっている点も見逃せない。
シンプルな小型ボディながら独自機構で拡張性は◎
本機の外観は、前面から見ると四角いボディにマウントと電子ダイヤルというシンプルさ。上面も電源ボタンとシャッターボタンのほか、静止画・動画の切り替えボタンと動画のRECボタンのみ。背面でさえ9つのボタンとダイヤルだけだ。
▲ボディ正面だけでなく、上面や背面も極めてシンプル。細かい設定は事前に行う必要があると思うが、撮影時に操作で迷うことはなさそうだ。
ここまでシンプルだと、拡張性が不安になるが、左右の側面と底面に三脚ねじが配置され、グリップやホットシューユニット、LCD VIEW FINDER(ルーペ付きモニターフード)などが装着可能。しかも、本機の設計サイズを同社のホームページで公開予定とのことで、サードパーティーによるアクセサリー開発も期待できるという。
▲ボディ左右側面のストラップホール基部が三脚ねじになっている。拡張アクセサリーを装備する際はストラップホールを外し、三脚ねじを用いて、アクセサリーを固定できる仕様だ。
▲別売のホットシューユニット HU-11。シグマ純正ストロボに対応のホットシューを装備。ユニットにはHDMI端子のホルダーも用意され、外部レコーダー記録やホットシューに外部マイクを装着しての動画撮影にも配慮されている。
▲別売のLCD VIEW FINDER LVF-11。ルーペが付き、大きくクリアな画像を見ながら撮影できる。
機能性・操作性ともに動画撮影用途を意識
動画撮影機能は4K30pでの記録に対応。その上、記録フォーマットはMOVのほか、動画用RAW撮影モードである12bitのCinemaDNG記録(4K24p、USB経由でポータブルSSDに記録)も可能という。
▲ボディ上面に配された静止画撮影と動画撮影の切り替えスイッチ。コンセプトに基づき、素早くシームレスに静止画と動画の撮影が変更できるようにしたという。
▲動画撮影時のUI。切り替えボタン1つで静止画と動画、それぞれに最適なUIに変わる。動画撮影時は、スタンバイ・レック表示やマイクゲイン、フレームレートなどが見やすく表示される。
▲特に動画撮影では、センサーや画像処理エンジンからの熱が問題となる。これを小型ボディで解決するため、fpではヒートシンクを配置。効率的に熱を逃がすことで、CinemaDNG記録を含む、長時間の動画撮影に対応している。
【実際に触ってみた】反応がスムーズで快適。別売グリップでホールド性も向上
今回の発表会では試作機を手にすることができたが、AFやレリーズ、モニター表示などが非常にスムーズで快適。しかも、電子シャッターなので無音シャッターに対応し、瞳AFも可能だ。小さく普段持ち歩くカメラとして最適なのはもちろん、画質面で有利なフルサイズ機なので、気軽に高画質な写真撮影が楽しめるはずだ。
小型ボディなので、70-200mm F2.8の大口径ズームなどを付けるとさすがにホールディングしにくくなるが、大型のグリップやLCD VIEW FINDERを装着することで安定した状態でホールディングできるようになる。標準ズームなどに向く、小型のグリップも用意されている。
レンズについては、シグマ純正はもちろん、ライカやパナソニックのLマウントレンズも使え、現時点でも数多くの交換レンズが用意されている。しかも、マウントアダプターを介せば、様々なオールドレンズが装着可能。最新レンズから往年の名レンズまで、写りの違いを楽しむことも可能だ。
▲グリップは通常サイズのHG-11と大型のHG-21を用意。手やレンズの大きさに合わせて使い分けられるようになっている。
▲fpにアダプターを介して一眼レフ用の70-200mm F2.8を到着し、LVF-11とHG-21をセットした状態。大口径望遠レンズを使うと重量はそれなりに重くなるが、アクセサリーの装備しだいで手持ちでも安定して構えられる。
コンパクトな動画撮影システムの構築やドローンへの搭載も想定
動画撮影に関して、従来はフルサイズカメラで本格的に撮ろうとすると、ミラーレスカメラを使用しても、大掛かりな装置(リグ)が必要であった。しかし、本機であれば、より小さなシステムで本格的な動画撮影が楽しめるのではないかと思う。
ただし、これにはサードパーティーによる機材の開発やユーザーの工夫が必要になる。その点、前述のとおり同社の仕様公開によりそうした製品が十分期待できるのは、長年レンズメーカーとして取り組んできたシグマらしく嬉しい点だ。
▲fpを動画撮影用のリグにセットした状態。こうした本格的な動画撮影にも対応できるパフォーマンスを持つ。
▲ドローンへの装着例。ボディが小型・軽量なので、ドローンやスタビライザーを用いての撮影にも有利だ。
現時点で、発売時期の目標は今年秋とのこと。その具体的な日程や価格は未定だが、もし2400万画素クラスの普及価格帯のカメラと同等程度の価格が実現できるとしたら、小型・軽量のミラーレスカメラという点でエントリーユーザーからベテランユーザーまで幅広い層が対象になる可能性がある。
なおかつ動画撮影の性能を見ると、動画撮影のエントリーユーザーからプロの映像作家までが対象になる、稀有なカメラではないかと期待する。