機材レポート

シグマからレンズに関する3つの大きな発表が! キーワードは「Lマウント」「EF-Mマウント」「ビンテージルック」

2019年7月11日に東京都内で行われたシグマの新製品発表会について、新たなフルサイズミラーレスカメラ「fp」が開発発表されたのはすでにお伝えしたが、本発表会の“メイン”はLマウントレンズの製品発表とキヤノンEF-Mマウントレンズやシネマ用レンズなどの開発発表だ。本稿では、これらのレンズについて詳しくお伝えする。

▲新製品として発表された3本の交換レンズ。左から「14-24mm F2.8 DG DN | Art」、「35mm F1.2 DG DN | Art」、「45mm F2.8 DG DN | Contemporary」。いずれもフルサイズミラーレスカメラ用でライカLマウントとソニーEマウント用が用意される。

 

▲発表会のプレゼンテーションを行った、株式会社シグマ 代表取締役社長・山木和人氏。CP+のステージ発表などでも大人気の山木氏だけあって、約1時間と長時間のプレゼンながら、わかりやすい解説と演出によって絶えず聴衆を惹きつけていた。

 

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Lマウント用レンズ3本が新登場

新製品発表会でまず最初に登場したのは、「35mm F1.2 DG DN | Art」、「45mm F2.8 DG DN | Contemporary」、「14-24mm F2.8 DG DN | Art」の3本の交換レンズの発売についてだ。

35mm F1.2は、ライカLマウント及びソニーEマウント用AFレンズとしては初となる大口径F1.2レンズで、ミラーレス用ならではのショートフランジバックとカメラ内補正機能を前提とした設計となっている。そのため、後処理の難しいサジタルコマフレアなどは光学設計で徹底除去する一方、歪曲収差や周辺減光はカメラ内補正機能を効果的に活用する手法で、大口径ながら5000万画素以上に耐える高解像な描写が得られるという。

▲35mm F1.2には、AFロックボタンと絞りリングのクリックを解除するデクリックボタンを装備。動画撮影にも最適な仕様だ。

価格はメーカー希望小売価格で19万円と高価で、万人向けとは言いにくいが、12群17枚構成でSLDガラスレンズ3枚、非球面レンズ3枚(両面非球面含む)と贅沢な設計になっている。しかも、大型の超音波モーター、HSMを用いたAFは静かで速く、バイワイヤ駆動となるMF時のトルクも適度で快適に操作できる。写真撮影用としては背景のボケを生かしたポートレートや大口径を生かした室内、夜景、天体撮影などに活用でき、動画撮影用の常用レンズとしても使いやすそうだ。

【35mm F1.2 DG DN | Art製品概要】

●レンズ構成/12群17枚 ●絞り羽根枚数/11枚(円形絞り) ●最小絞り/F16 ●最短撮影距離/0.3m ●最大撮影倍率/1:5.1 ●フィルターサイズ/82㎜ ●最大径×長さ/87.8×136.2㎜ ●質量/1090g ●発売予定/2019年7月26日 ●希望小売価格(税別)/19万円

 

45mm F2.8は、標準域の常用単焦点レンズとして性能とサイズのバランスを追求したとのことで、その小ささと描写力が魅力のレンズとなっている。なかでも、そのボケ描写は絞り値こそF2.8ではあるが、絞り解放付近での二線ボケを抑えた滑らかなボケ描写と絞りを絞ったときのシャープさを両立させたとのこと。


▲45mm F2.8は手の平サイズで215gと軽量。操作感も抜群だ。

本レンズは描写だけでなく、操作感にもこだわったとのことで、絞りリングのクリック感やピントリングのトルクが適度で、フルマニュアルで使っても違和感なく使える印象だ。同時に開発発表された小型フルサイズミラーレスカメラ「fp」の標準レンズとしてバランスに優れるほか、パナソニックのSシリーズやソニーα用としても、このレンズの小ささや軽さは魅力となるはずだ。

メーカー希望小売価格は7万5000円で、最新の高性能レンズとしては比較的低価格な設定。外装の仕上げに高級感があり、どんなボディに装着してもマッチしそうだ。

【45mm F2.8 DG DN | Contemporary製品概要】

●レンズ構成/7群8枚 ●絞り羽根枚数/7枚(円形絞り) ●最小絞り/F22 ●最短撮影距離/0.24m ●最大撮影倍率/1:4 ●フィルターサイズ/55㎜ ●最大径×長さ/64.0×46.2㎜ ●質量/215g ●発売予定/2019年7月26日 ●希望小売価格(税別)/7万5000円

 

14-24mm F2.8は、ミラーレスに最適化された設計で高い解像感と操作性を目指した超広角ズームレンズ。13群18枚構成中、FLDガラスレンズ1枚、SLDガラスレンズ5枚を採用し、非球面レンズも3枚使用。色収差やコマ収差などが効果的に抑えられているという。

さらにコーティングには、スーパーマルチレイヤーコートと新開発のナノポーラスコーティングを採用。逆光撮影などにおいても、ゴーストやフレアの極めて少ない、クリアな描写が得られる。


▲14-24mm F2.8ではフロントフィルターが使用できないため、脱落防止ロック機構を備えたリアフィルターホルダーを装備

 


▲新開発のナノポーラスコーティングは、第8レンズに施され、光の透過率の向上や鏡筒内での光の乱反射などを効果的に抑制しているという。

このレンズも操作感に優れ、ステッピングモーターによるAFも高速かつスムーズだ。AFロックボタンやリアフィルターホルダーの採用など、超広角ズームとしての使い勝手も良い。メーカー希望小売価格は19万円と、開放F2.8の大口径超広角レンズとしては良心的な価格設定で、プロからハイアマチュアまで幅広い層に人気のレンズとなりそうだ。

なお、この14-24mm F2.8と35mm F1.2の2本は防塵防滴機構を備え、レンズ最前面には撥水・防汚コートも施されていて、タフな環境下でも安心して使用可能。45mm F2.8にも簡易防塵防滴機構が採用されている。

【14-24mm F2.8 DG DN | Art製品概要】

●レンズ構成/13群18枚 ●絞り羽根枚数/11枚(円形絞り) ●最小絞り/F22 ●最短撮影距離/0.28m ●最大撮影倍率/1:7.3 ●最大径×長さ/85.0×131.0㎜ ●質量/795g ●発売予定/2019年8月下旬 ●希望小売価格(税別)/19万円

シグマ初のキヤノンEF-Mマウント用レンズを開発発表

3本の新製品レンズに加えてシグマとしては初となる、キヤノンEF-Mマウントの交換レンズの開発もアナウンスされた。それは、「16mm F1.4 DC DN」「30mm F1.4 DC DN」「56mm F1.4 DC DN」の3本。いずれも現行のContemporaryラインの製品の対応マウント追加となる。今回は開発発表ということで、発売時期などは未定だ(2019年秋頃発売を目指して開発中とのこと)。


▲シグマ初のEF-Mマウントレンズ。3本とも現行レンズのEF-Mマウント仕様だが、いずれも大口径で画質も優秀。EOS Mユーザーは要注目だ。

キヤノン EOS Mシリーズは、小型のミラーレスカメラとして最近人気だが、エントリーユーザーが中心のためか、純正の交換レンズはまだまだ少なく、F1.4クラスの大口径単焦点レンズはEF-M32mm F1.4 STMのみで、ほかはアダプターを介してEFレンズを使う必要がある。それだけに、ミラーレスに特化した高性能レンズの登場は、小型・軽量なEOS Mシリーズの魅力をさらに高めてくれるはずだ。

 

ビンテージレンズを再現した新たなシネ用レンズシリーズ

今回の発表会では写真用レンズだけでなく、シネ用レンズについても「ビンテージルック」と呼ばれる、新しいバリエーションのレンズの発表も行われた。これは、ノン・コートガラスを多用し、ビンテージレンズの持つ暖色系色調の再現を目指したレンズ。1950年代から60年代頃のビンテージレンズを最新のデジタルカメラで使うという最近のトレンドにシグマが最新の技術を用いて答えた製品だ。

会場ではサンプルムービーも上映されたが、シャープな写りでありながら逆光でフレアが盛大に発生するビンテージレンズらしい写りで、スチルでも使ってみたいと思わせるほど個性的なレンズだと感じた。「Classic Art Prime」と名付けられたシリーズで、同社の現行のシネレンズ10本のバリエーションとして用意されるとのことだ。


▲既存のレンズと基本的な仕様は同様とのことだが、ノン・コートレンズが採用されたことでTナンバーは、わずかながら暗くなる。ただし、F値は同様なのでボケの大きさは同じだ。鏡筒にある「Classic」の文字は、製造工場のある会津若松の特産品、会津漆器に用いられる蒔絵で描かれているという。

シネ用レンズは、写真用レンズに比べて価格が高く(シネ用としてはシグマ製レンズは低廉なのだが)、購買層は動画作家やプロが中心と思われる。とはいえ、写真用としても魅力的な描写なので、機会があったらぜひ使ってみたいシリーズだ。こちらも開発発表だったが、2019年のIBC(International Broadcasting Convention)で正式発表の予定とのこと。

 

【まとめ】実際の描写に大いに期待

2018年の9月にライカ、パナソニック、シグマの3社で「Lマウントアライアンス」による協業が発表されたが、今回、発売が発表された3本のレンズは、その成果の第一弾といえるレンズだ。

発表会では試作機を手にすることができたが、いずれも操作感に優れており、質感も非常に高い印象であった。それだけに、これらのレンズがどういった描写なのか、大いに期待したいところだ。

このほか、開発がアナウンスされたEF-Mマウント用レンズとシネ用レンズについては、既存のレンズのバリエーションではあるが、いずれもユーザーにとっては待望のレンズであり、ぜひ発売にこぎつけてほしい製品だ。