キヤノンの一眼カメラ「EOSシリーズ」のなかでも、ミラーレスカメラの「EOS Mシリーズ」は初級者を中心に“最初のミラーレスカメラ”として注目度が高い。そうしたなか、初心者向けではありながら、上級者のサブカメラとしても十分対応できそうな新モデル「EOS M6 Mark II」が、2019年9月27日に発売された。本稿では、このEOS M6 Mark IIを実写し、その特徴や画質、使用感などをレビューする。
基本スペックをチェック
EOS M6 Mark IIの基本スペックを見てみると、最初に目を引くのは有効約3250万画素のAPS-Cサイズセンサーと映像エンジン「DIGIC 8」の採用だろう。これらは、同じく2019年9月発売の一眼レフ「EOS 90D」に採用のものと同等の仕様であり、現時点での同社の最新デバイスの組み合わせということになる。結果、画素数に関しては、同社のミラーレスカメラ(フルサイズ含む)でいちばん高画素なモデルとなっている。
このほか、連写枚数は最高約14コマ/秒となっており、独自の像面位相差AF方式である「デュアルピクセルCMOS AF」の性能も含め、動体撮影でどの程度の実力を発揮するのかといった点は気になるところだろう。外観の基本デザインは前モデルを踏襲しているが、「瞳AF」や4K動画撮影に対応するなど、全体的に前モデルであるEOS M6からパワーアップが図られている。
操作性をチェック
EOS M6 Mark IIは質量約408gという軽量機であり、ボディも小型で持ち運びしやすいサイズだ。しかし、こうした小型機はボタンが省略されていて操作が煩雑だったり、ボタンが小さくて操作しにくかったりするケースも少なくない。
しかし、本機は大きめのグリップを備えていてホールドしやすく、ダイヤル類も上面にメインとサブ、2つの電子ダイヤルを配置。背面には「コントローラーホイール」も配置され、3つのダイヤルやホイールで露出設定などを素早く変更できる。
さすがにダイヤルなどのサイズはやや小さめだが、カメラを持ったときに指がくる位置に最適に配置されているようで、自然に操作することができた。そのほかのボタン類も右手側に集中配置されていて、撮影時だけでなく、画像再生や設定時も操作しやすく感じた。
背面モニターは上下チルト式で、タッチ操作に対応したもの。個人的にはできればバリアングル式を採用してほしかったところだが、それによって本体の質量が重くなっても本機のメリットを損なってしまうので難しいところだ。
また、本機はEVF非搭載のモデルだが、ホットシューに付けて使うタイプの外付けEVF(別売・付属キットあり)が用意されている。約236万ドットの有機ELパネルが採用され、十分な精細さで被写体を確認できるだけでなく、ホットシューが光軸上に配置されているために視差が少なく使いやすい。この点は、レンジファインダー式カメラのユーザーや、本機が初めてのレンズ交換式カメラというユーザーにとってはあまり気にならないかもしれないが、これまで一眼レフを使ってきたユーザーにとっては、違和感なく使用できて使いやすいはずだ。EVFの視野は、ほかのEOS Mシリーズなどと大きく変わるものではないが、接眼部が大きめの円形で見やすく、眼鏡をかけた状態でも使いやすい。
高感度画質をチェック
画質面では、約3250万画素と高解像なだけでなく、高感度でも比較的画像の破綻が少なく、常用最高感度はISO25600(拡張ISO51200)となっている。前モデルであるEOS M6も常用最高感度の数値は同じであったが、1段分の拡張感度が使えるようになった点や画素数がアップしている点を考慮すると、画像処理や映像エンジンが高度化しているのがわかる。実際に高感度撮影してみると、さすがにISO25600は画質的に厳しいと感じたが、ISO6400~12800なら実用的な印象だ。
<ISO6400>
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<ISO12800>
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<ISO25600>
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上の比較写真では、[高感度撮影時のノイズ低減]を[標準]に設定して、感度を変えて撮影している。ISO6400では、多少画像の荒れは見られるものの質感などは損なわれていない。ISO12800では像全体がやや粗くなってくるが、大きくプリントするのでなければ問題ないレベルだ。ISO25600も粗さが見られる程度でノイズが目立つことはないが、やや色が浅く感じられる。高感度は少し余裕を見て、ISO10000程度でとどめたほうがよさそうだ
連写性能をチェック
本機は連写性能が高いのも魅力の1つで、最高約14コマ/秒という高速連写が可能だ。ただし、連続撮影可能枚数はJPEGラージ/ファインで約54枚(約3.8秒)、RAW+JPEGラージ/ファインで約23枚(約1.6秒)、C-RAW+JPEGラージ/ファインで約34枚(約2.4秒)となるので、RAWデータでの高速連写は少し厳しいように思う。というのは、画素数が多く、連写速度も速いので撮影後の書き込みもそれなりに時間がかかるのだ。もし、撮影場所の明るさ(露出)が安定しないなどの理由でRAW記録が必要な場合は、連写する時間をできるだけ短くする工夫をしたほうがいいだろう。
このほか、本機ではシャッター全押しの約0.5秒前から約30コマ/秒で記録し、撮影後に最適な画像を選んで保存できる「RAWバーストモード」を搭載。電子シャッター使用で画面の中心部のクロップ(約1800万画素)となるが、決定的瞬間を逃したくない場合の保険として有効な機能といえるだろう。
動画機能をチェック
前モデルのEOS M6では、動画撮影がフルHD/60pまでだったが、本機では4K/30pでの撮影に対応。動画撮影時も高速で高精度な「デュアルピクセルCMOS AF」が作動し、「瞳AF」も可能だ。動画からの静止画切り出しも本体内で行える。
イヤホン端子は装備されていないので音声をモニターしながら撮影するのは難しいが、上下チルト式モニターを見ながらの撮影は、ボディが軽いこともあり、思いのほか快適。手持ち撮影でも「5軸+コンビネーションIS」が機能し、ブレの目立たない仕上がりにできる。ただし、4K動画を確実に記録するには高速連写時以上に高速なメモリーカードの使用が重要となる。本機はUHS-IIのSDメモリーカードにも対応しているので、できるだけ高速なカードを用意しよう。
まとめ
EOS M6 Mark IIは、初級者向けということになってはいるが、機能的には中級者向け一眼レフ、EOS 90Dのライブビューモードにかなり近い性能を持っている。スペック面での違いは機械式シャッターの最高速度(EOS 90Dは1/8000秒まで対応)やマイク端子の有無程度で、連写速度など、EOS M6 Mark IIのほうが上回っている部分も少なくない。そう考えると、初級者はもちろんだが、中・上級ユーザーが使っても不満の少ない機種といえる。
むしろ、ファインダーをあえて内蔵せずに小型化しているため、いざというときのサブ機としてカメラバッグに入れておいても負担の少ないサイズと重さに仕上がっている。アダプターを介せばEFレンズも使えるので、フルサイズ機で画素数が近い、EOS 5D Mark IVなどと組み合わせて使っても面白いのではないかと思う。