2019年9月20日に発売されたキヤノン「EOS 90D」。2016年3月に発売されたEOS 80D以来、同社が久々に発売したAPS-Cサイズ中級一眼レフということもあり、幅広いユーザーから注目を集めている。スペック的にはセンサーが約3250万画素に増えただけでなく、高感度性能や連写性能などもアップ。多くの部分で上位モデルである「EOS 7D Mark II」をも凌ぐスペックとなっている。本稿では、EOS 90Dの実写を行い、その上で実力や特徴をチェックした。
フルサイズ機を凌ぐ約3250万画素のセンサーを搭載
EOS 90D最大のトピックは、APS-Cサイズで約3250万画素のセンサーを採用した点だろう。これは、いわゆるベイヤー型のAPS-Cサイズセンサーとしては最高画素数であり、フルサイズのEOS 5D Mark IVの約3040万画素を超える高精細なものだ。実際、撮影した画像をチェックすると、大きく拡大しても十分な立体感があり、解像感は抜群。しかもISO6400程度までは高感度でも像の乱れが少ないので、薄暗い場所でも安心して撮影できる(常用感度はISO100~ISO25600)。
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上の作例を見ると、約3250万画素ということもあり、かなり細かい部分まで描写されていることがわかる。風景撮影などで、できるだけ細密な描写を得たいなら、最新のLレンズシリーズなどの高性能レンズを選びたい。
高感度実写比較
<ISO6400>
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<ISO25600>
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上の写真は、[高感度撮影時のノイズ低減][標準]でISO6400(上)とISO25600(下)で撮影したもの。ISO6400では、ノイズも許せる範囲で細部描写も破綻していない。さすがにISO25600で拡大すると多少ノイズが目立つが、それでも細部描写の破綻は限定的。できるだけ低ノイズで、かつ高感度で撮りたい場合は、ISO12800程度までに抑えて[高感度撮影時のノイズ低減]を[強め]に設定するとよさそうだ。
キヤノンの中級機の伝統を引き継いだ快適な操作性
次に操作性について見ていこう。
EOS 90Dは、ボディ上面右手側に撮影情報液晶やメイン電子ダイヤルを備えた、キヤノンの中級機の伝統を引き継いだ配置を採用。カメラの状態を素早く確認できるのはもちろん、露出補正なども含めて撮影に必要となる多くの操作をワンアクションで行える。しかも、背面にはマルチコントローラーが2つ用意され、AFフレームの移動などが素早く行えるようになっている。
また、ペンタプリズムを使用した一眼レフとしては軽量な部類で、バッテリーとカードを含む質量は、スペック上で約701g、実測で698gという軽さだ。
ライブビュー撮影時は瞳AFに対応するなど、シーンを問わず使いやすい
操作性の面では、ライブビュー撮影時の使いやすさも気になるところ。その点、本機はタッチ操作対応のバリアングルモニターを採用しており、ローポジションやハイポジションでの撮影も快適だ。しかも、同社独自の「デュアルピクセルCMOS AF」を搭載し、測距可能エリアは最大で映像表示範囲の横約88%×縦約100%をカバー。AFフレーム選択ポジションは最大で5481ポジションと多く、あらゆる構図でダイレクトにピントを合わせられる。
また、ライブビュー撮影時には、最近トレンドとなっている「瞳AF」も可能なので、ポートレート撮影にも好適。さらに、EV-5の低照度でもピント合わせが可能だ(ファインダー撮影時はEV-3まで)。ボディが思ったより軽量なこともあり、シーンを問わず使いやすい仕様となっている。
最高約10コマ/秒の高速連写と光学ファインダーで動きの速い被写体を捉える
本機は最高約10コマ/秒の高速連写(ファインダー使用時。ライブビュー時はAF固定で最高約11コマ/秒)に対応しているのも魅力。ただ、画素数が増えていることもあり、データ量が多くなる[RAW+JPEG]での連写撮影は少し注意が必要だ。
スペック上の連続撮影可能枚数は、[JPEGラージ/ファイン]で約57枚、[RAW]で約24枚(C-RAWでは約39枚)、[JPEGラージ/ファイン]で約23枚ということなので、RAWでの撮影は2秒間強の連写が可能ということになる。実際にはAF作動などの要因も影響するので、感覚的には1.5~2秒程度の連写なら問題ないといったところだ。
今回、実際に連写してみたが、筆者所有の「UHS-I、U3」のSDメモリーカードでは、秒間約10コマ連写でおよそ2秒間(20枚)撮影したあと、急速に連写速度が遅くなった。ただ、90Dは「UHS-II」のカードにも対応しているので、連写することが多いなら、UHS-II対応のカードなど書き込み速度の速いものを用意したほうがよさそうだ。
4K対応・イヤホン端子装備など充実の動画性能
EOS 90Dは、同社の中・上級APS-Cサイズ一眼レフとしては初となる4K動画撮影対応モデルだ(入門機ではEOS X10が対応する)。しかも、動画撮影時もデュアルピクセルCMOS AFが機能し、瞳AFも可能。このほか、録音状態を確認しながら撮れるイヤホン端子を装備し、輝度差の大きなシーンでの階調破綻を防ぐHDR撮影機能(フルHD撮影時)を搭載するなど、かなり本格的な動画撮影が可能だ。
加えて、動画からの静止画切り出しもボディ内で行える。ただ、4K動画撮影時は、前にも触れたUHS-II(V60)対応のメモリーカードが必要という。低速なカードでは、撮影中にストップしてしまうことがあるので注意したい。
まとめ
EOS 90Dは、高画素・高感度・高速AF・4K動画など、最新のデジタルカメラのトレンドを数多く取り入れた注目機種だ。しかも、昨今話題のフルサイズ機などよりも比較的購入しやすい価格帯なので、中級機ではあるが、入門者からハイアマチュアまで、幅広いユーザーにおすすめできる一眼レフに仕上がっている。
一方で、最近はより小型軽量であること、あるいはラインアップが増えたことなどから、ミラーレスカメラが存在感を増しており、どちらにするか悩む人も多いと思う。特に、同時期発売で同等のセンサーと映像エンジンを搭載するミラーレスカメラ「EOS M6 Mark II」と本機を比較・検討する人は多いだろう。EOS M6 Mark IIのほうがEOS 90Dよりも約300g軽く、携帯性を求めるならあちらに軍配が上がる。
一方で、EOS 90Dのライブビュー撮影モードはよくできており、サイズ感は別として、機能的にはミラーレスカメラに近い感覚で撮影できるだろう。しかも、バリアングルモニターや光学ファインダーを装備しているので、撮影の自由度は高い。そのため、ミラーレスカメラは気になるが、すでに一眼レフ用のEFレンズやEF-Sレンズを持っているユーザーや、非常に高速な被写体を撮るケースが多くて光学式ファインダーが必要、あるいはEOS Kissなどからのステップアップで本格的な光学式ファインダーを使ってみたいといったユーザーにとっては、ベストなモデルといえるだろう。