韓国・ソウルで2月4日~2月9日まで行われたISU四大陸フィギュアスケート選手権2020。男子は羽生結弦選手が優勝。これにより羽生選手はジュニアとシニアの主要大会を完全制覇した。そして3位には16歳の鍵山優真選手が入った。
女子は紀平梨花選手が優勝し、この大会2連覇を飾った。4位に樋口新葉選手、5位に坂本花織選手と続く。ペアは三浦璃来&木原龍一組が8位、アイスダンスの小松原美里&ティム・コレト組は11位、深瀬理香子&張睿中組は13位だった。
男女ともに日本の選手が優勝し、国内からの注目度も高かったであろう本大会。現場ではスポンサーであるキヤノンがプレスセンター内にカメラのサービスブースを設置し、世界中から取材に来たカメラマン達のサポートを行った。そのなかで、当時発売直前だったフラッグシップ一眼レフカメラ「EOS-1D X Mark III」の試用貸し出しも行われたのだ。今回は、実際の現場で使用したEOS-1D X Mark IIIの率直な使い勝手をレポートしたい。
16コマ/秒の高速連写と確かなAFで安定した撮影が可能
カメラの設定はEOS-1D X Mark IIとほぼ同様なので迷うことなく設定ができた。そして、露出やホワイトバランスを設定しチェックのため撮影したファーストショットの画像を見て、このカメラの虜になった。
まず撮影したのは女子の公式練習。練習の時は競技時の鮮やかな衣装と違い、黒い練習着で滑る選手が多い。コントラストがない黒い服だとAFが迷いがちだ。ところがこのカメラではその迷いがなく黒い服に対してもAF精度が良い。しかも黒つぶれすることなくディテールがきっちり出て、選手の肌も美しく再現されていた。一気に信頼度が上がり、競技撮影に挑むことができた。
高速連続撮影は16コマ/秒となり、EOS-1D X Mark IIに比べ2コマ多くなり、コマ間隔のファインダー消失時間が短くなったので連写中も選手の手先、足先の動きを確認しながら追えるようになった。連写中のシャッターショックとともにシャッター音も抑えられているので安定した撮影が行えた。
AF関連の設定は状況に応じてカスタマイズするのが良いだろう。今回の撮影で使用した主な設定は以下の通り。
測距エリア選択モード>自動選択AF
自動選択AF時のサーボAF測距開始測距点>AUTO
AIサーボAF特性>CASE1
被写体追尾の詳細設定>人物優先
被写体の乗り移り設定>しない
この設定にすれば顔や頭部を検知して、はじめに捉えた選手をAFで追尾し続けてくれるのでフレーミング重視の撮影ができる。光学ファインダーではフォーカスエリア内でのみAFが可能だが、ライブビューではほぼ全面がフォーカスエリアとなり、AF/AE追従も可能だ。
また、ライブビューにすることでシャッター方式をメカシャッター、電子先幕、電子シャッターに切り替えられる。電子シャッター方式を使うと、シャッター作動音のない撮影が可能となる。スポーツの現場でもシャッター作動音に敏感になる競技があり、その場の空気感を大事にしたい撮影の時に有効だ。今回のフィギュアスケートの撮影では選手を追ってレンズを速く振った際に背景に少し歪みが出ることがあったが、かなり歪みは抑えられていると感じた。
高感度画質も新世代映像エンジンのDIGIC Xの搭載でノイズを抑えた高画質が得られた。EOS-1D X Mark IIに比べて1絞りほどは良くなっている印象だ。
それと、バッテリーが長持ちするようになったと思う。大会最終日は朝の公式練習から男子フリー、エキシビジョンまで1日中撮影しても電池残量が8%残った。カット数は26712。
新機能をすべて試すことができたわけではないが、今後もフィギュアスケートなどスポーツ撮影には欠かせない信頼性があるカメラだと感じた。