機材レポート

現代人のニーズに応える新機能とは? 国産RAW現像ソフト「SILKYPIX」の最新版を使ってみた

「RAW現像」という言葉を聞いたことはあるだろうか。「興味はあるけれど、なかなか始めるきっかけがない」「マニア向け、難しい、手間がかかる」……そんなイメージを持っている人もいるかもしない。しかし、せっかく買った高機能なカメラを十二分に使いこなし、その性能をフルに引き出すにはやはりRAW現像はマスターしたいところ。そうしたRAW現像ビギナーにおすすめのソフトが2月に発売されたばかりの市川ソフトラボラトリー「SILKYPIX Developer Studio Pro 10」である。

 

そもそもSILKYPIX Developer Studio Proといえば、数あるRAW現像ソフトのなかでも画質と使い勝手に定評のある製品だ。特に発色と階調の美しさ、ノイズ低減のバランスの良さは優秀であり、プロや愛好家層からも高い評価を得ている。一方で、発色や階調に関するプリセットが非常に豊富で、初級者でも取っつきやすい操作インターフェイスとなっている点も魅力の1つだ。

▲純国産RAW現像ソフト「SILKYPIX Developer Studio Pro 10」。Windows/Macの両方に対応する。販売はダウンロード版のみで、価格は税込22,000円。30日間の無料体験が可能なほか、3月末まで割引価格で購入できる発売記念キャンペーンも実施中(詳細は本記事末を参照)

 

筆者自身、SILKYPIX Developer Studioシリーズはかれこれ15年以上使っているが、色選びの柔軟性の高さはとりわけ気に入っている。例えばホワイトバランスのプリセットだけでも19種以上もあり、そこから任意のものを選ぶだけで素早く色の雰囲気を切り替えられるのが便利だ。もちろんプリセット選択後に、さらにスライダーを動かして微調整も行える。

 

そのSILKYPIX Developer Studio Proが今回「バージョン10」となり、大幅な改良が行われた。なかでも注目は、いまの時代ならではの新機能をふんだんに盛り込んだこと。近年、ミラーレスカメラの台頭やセンサーの高画素化、スマホカメラの高性能化、SNSの普及など、カメラや写真を取り巻く状況は大きく変化している。そうした“いま”を生きる「現代人」のニーズに合った、新時代のRAW現像ソフトに生まれ変わっているのだ。

 

ここからは、そうしたニーズごとにSILKYPIX Developer Studio Pro 10の新機能をチェックしていこう。

■SILKYPIX Developer Studio Pro 10の詳細を公式サイトで見る

■SILKYPIX Developer Studio Pro 10の無料体験はこちら

■SILKYPIX Developer Studio Pro 10の購入はこちら

 

【RAW現像って何?】

ミラーレスカメラや一眼レフカメラ、高級コンパクトカメラなどでは、一般的なJPEG形式のほかに、RAW形式で画像を記録できる。RAWとは「生(なま)」の意味であり、カメラの撮像センサーから得られたデータをあまり加工せずに保存するファイル形式のこと。そしてRAWデータをパソコンに取り込み、さまざまな編集を加えてからJPEGなどの一般的なファイル形式に変換して出力することを「RAW現像」という。RAW現像のメリットとしては、発色や明るさ、階調などを狙いに応じて自由に変更できることや、さまざまな編集を加えても画質がほとんど劣化しないことなどが挙げられる。

 

ニーズその1:他の人とはひと味違うインパクトのある作品に仕上げたい

撮影機器が身近な存在になり、SNSなどで個人が写真を手軽に発信できる昨今、目の前の景色をそのまま記録するだけでは面白みがない。他の人とは違った、もっとインパクトのある写真を撮りたい――。そんな願いを持つ人には、SILKYPIX Developer Studio Pro 10に新搭載された合成機能をおすすめしたい。

 

これは複数の画像を重ね合わてユニークなイメージを作り出す機能だ。具体的には、カメラで行う多重露光と同等の効果が得られる「多重露光」のほか、星空や花火の撮影などに役立つ「比較明」、動いているものを消し去る「動体除去」、動いているものを重ね合わせる「ストロボモーション」、手前から奥まで深くピントが合った画像を作り出す「被写界深度合成」など6種類が用意されている。

 

いずれも中級以上の写真愛好家にとってはおなじみのテクニックだが、それぞれの作業を行うには、従来はレタッチソフトや専用ソフトを別途用意する必要があった。それをSILKYPIX Developer Studio Pro 10では、RAW現像の過程のひとつとして、ごくシンプルな操作だけで素早く各種の合成処理が行えるようになっている。しかも、三脚を使わない手持ち撮影した素材であっても、独自の画像一致点検出技術によって位置ずれをソフトが自動補正して合成してくれるのが便利だ。

▲合成するコマを選択し、「選択コマを合成」のアイコンをクリックする。するとこの画面が表示されるので、合成方法と出力形式を選ぶだけ。手持ち撮影した素材の場合は「手持ち撮影時の位置ずれを補正する」にチェックを入れることで位置ずれを自動で検出・補正してくれる

 

いくつか具体例を見ていこう。

 

比較明合成

選択した画像の明るい部分を優先して合成を行う「比較明」。今回素材として使った写真は、シャッター速度を15秒にセットし、約1時間30分かけて、約300枚を連続撮影したものだ(以下のギャラリーはその一部)。そのままだと一般的なビル夜景だが、これを合成すると・・・

<素材(一部のみ表示)>

<完成!>

真っ暗に見えた空に星の軌跡が出現し、華やかな作品に。1枚1枚ではあまり目立たない小さな星でも、比較明合成を行うとこのように明るい光の軌跡として表現できる。

 

ストロボモーション

静止している部分はそのままに、動いているものを重ね合わせる「ストロボモーション」。言葉だけではイメージしづらいと思うので、実際の例を見ていこう。素材は、高速連写によって捉えたジャンプの瞬間8コマだ。

<素材>

<完成!>

かなりインパクトのある1枚に仕上がった。現場で味わった感動と迫力を1枚の静止画で再現できるのは画期的だ。

 

動体除去

動いているものを消し去る、その名も「動体除去」。素材は、ビル街を撮影した4コマを使用した。手持ち撮影なのでカットごとに微妙な位置ずれが生じているが、前述の画像一致点検出技術によって問題なく合成できた。

<素材>

<完成>

歩行者が消え、ゴーストタウンのような雰囲気になった。景勝地などで観光客の姿を消し、建物や風景のみを際立たせたいときにも役立つだろう。

 

周辺ぼかし(線形)

合成機能のほかには、「効果」ウィンドウに追加された「周辺ぼかし(線形)」にも注目したい。これは画像の上下や左右を直線的に区切ってぼかしを加える機能だ。風景写真をミニチュアのようなイメージに加工できる。俯瞰で撮影した人の行き交う街並みなどをジオラマ風に仕上げるのが鉄板だが、今回は高所から撮影したモノレールで試してみた。

<素材>

<完成>

左下と右上をぼかすことで、まるでオモチャのようなイメージになった。意外なシーンがぴったりハマることもあるので、いろいろな写真で試してみると面白いだろう。

 

▲周辺ぼかし(線形)の設定画面。操作は、「周辺ぼかし」ウィンドウの「種類」から「線形」を選択し、「ぼかし」でボケ量を、「効果範囲」でボケの面積を、「角度」でボケの向きをそれぞれ設定する。また「部分補正ツール」が強化され、色や明るさだけでなく、マウスドラッグによる直感操作で部分的なぼかしを加えることも可能になっている。

 

ニーズその2:再生機器の高精細化やプリント技術の向上により画像の細部まで見えてしまうので可能な限り高画質にしたい

最近のカメラは高画素化が目覚ましいが、それと連動するようにテレビや液晶ディスプレイ、カラープリンターなど再生/出力機器の高画質化も進んでいる。その結果、かつては見えなかったような画像の細かい部分までクッキリと再現できるようになった。

 

だからこそRAW現像の際は、最終的な写真の発表や鑑賞の形態を考慮しつつ、もし大きく見せるのであれば、細部のノイズやシャープネスにもしっかりと気を配って自分が納得できるベストな状態に仕上げたいところ。

 

SILKYPIX Developer Studio Pro 10は、前述した合成機能を応用することで写真のノイズを目立たないように除去し、画質をいっそう高めることができる。また、同じくノイズ低減の新機能として加わった「ファインディティール」モードも見逃せない。

 

多重露光(夜景)

まずカメラを固定して同じシーンを複数枚撮影する。そしてSILKYPIX Developer Studio Pro 10に読み込んで、その複数枚を選択し画像合成の「多重露光」または「多重露光(夜景)」を適用。すると、通常のノイズリダクションを超えた、精密で広階調な写真に仕上がる。なお、手持ちで撮影した写真の場合も、ある程度までの位置ずれであればソフトが自動補正して合成してくれるので、三脚が使用できない夜景スポットなどでも重宝するだろう。

<Before(複数枚の素材のうち1枚を表示)>

<After>

ノイズはほぼ完璧に除去され、夜の都会の無機質で未来的なイメージがいっそう際立った。

<拡大比較(左:Before 右:After)>

 

ファインディティール

通常のノイズ低減以上に複雑で広範囲の画素エリアを鑑みた演算処理を行うことで、細部のシャープネスを維持しながらノイズを抑える機能。処理時間は通常のノイズ低減よりもやや長くなるが、細部にこだわる場合は積極的に利用したい。先ほどの多重露光とは違い、この方法では素材を複数枚用意する必要はない。

<Before>

<After:「標準」のノイズ低減>

<After:「ファインディティール」のノイズ低減>

標準/ファインディティールともにノイズは大幅に低減されている。両者を見比べてみると、ファインディティールのほうが細部のシャープネスが残っていることがわかる。

<拡大比較(左:Before 中央:「標準」のノイズ低減 右:「ファインディティール」のノイズ低減)>

 

ニーズその3:カメラの高画素化で表示の待ち時間が長くなるのを解消したい

カメラの高画素化によって画質が向上した一方でデータ容量は大きくなり、パソコン上での処理が遅くなってしまいがち。かといって、よりハイスペックのパソコンにすぐ買い換えるのも難しい。そんな悩みを持つ人はSILKYPIX Developer Studio Pro 10の新しくなった操作インターフェースに注目してほしい。

 

これまでのSILKYPIX Developer Studio Proは、画像の入力から調整/出力までの一連の作業を同じ画面内で行うようになっていたが、今回のバージョンでは新たに「セレクト/調整/印刷」という3つのセクションに分かれたユーザーインタフェースを採用している。

 

このうち「セレクト」セクションでは、画像データに内包されているプレビュー画像(サムネイル画像)を活用することで、従来以上の高速表示を実現。たとえ高画素カメラのRAWデータであっても、ストレスを感じない速度で画像のチェックやセレクトが行える。

<「セレクト」セクション>

左のフォルダツリーから任意のフォルダを選択すると、その中身が素早くサムネイルで表示される。サムネイルのサイズを調整したり、個々の画像にレーティングやユーザーマークを設定したりもできる。

 

<「調整」セクション>

色や明るさ、シャープネスの調整など各種の編集加工を行うセクション。各種のパレットやウィンドウの位置は自由にカスタマイズできる。

 

<「印刷」セクション>

プリンターを選択し、各種の印刷設定を行うセクション。コンタクトシート印刷やカラーマネジメント、アンシャープマスク、日付焼き込みなども行える。

 

ニーズその4:フィルムカメラが人気。自宅で簡単にネガフィルムを画像化したい

いまやカメラといえばデジタルが当たり前だが、ときには趣味としてフィルムカメラで撮影するのも楽しい。すぐに結果がわからないドキドキ感や、1枚1枚を大切に撮る充実感、偶然が生み出す新発見、ザラザラとした粒状感などは、デジタルでは味わえない感覚といっていい。

 

そんな魅力的なフィルム撮影をさらに深く楽しむための機能として、SILKYPIX Developer Studio Pro 10では「ネガフィルム反転ツール」を搭載した。

▲ネガフィルム反転ツールの設定画面。ネガフィルムをデジタルカメラで撮影したRAWデータを素材として使用する

 

使い方は、まずネガフィルムをLEDなどの上に置いてデジタルカメラで撮影してデジタル化する(RAWで撮影)。そしてSILKYPIX Developer Studio Pro 10に読み込み、「ネガフィルム反転ツール」を使ってフィルムのエッジ部分をクリックする。すると、自動的にネガ/ポジ反転処理が行われ、カラー写真になる。そのあとは、狙いに応じて色や明るさを微調整するだけでOKだ。

 

ネガフィルム反転ツール

<素材>

<完成>

 

ニーズその5:手軽に作品イメージを変えたい。でもスマホアプリの加工は少し飽きてきた……

近ごろは、スマホのカメラアプリを使って写真にさまざまなエフェクトを加えることが珍しくない。ただ、スマホアプリは手軽な反面、多用すると飽きるのも早い。似たような仕上がりになりがちなので差別化も難しい。

 

SILKYPIX Developer Studio Pro 10は、クリック1つで写真に多彩なエフェクトを加えられる「テイスト」機能がいっそう充実した。前バージョンから56種類追加され、全67種類ものテイストが用意されているのだ。

その67種類から好きなテイストを選択するだけで効果を素早く適用できるほか、必要に応じてさらに色や明るさ、階調などの微調整も行える。これなら人とは違った自分だけのイメージに仕上げることが可能だ。しかも画質劣化のないRAWからの調整なので、画質は格段に高い。例えば旅先で出会った絶景をいっそう華やかに仕上げたり、ありふれた日常風景を映画のワンシーンのように見せたりするのも面白いだろう。

 

テイスト機能を使った作例をいくつか見ていこう。

 

デジタルクロスプロセス

写真フィルムを現像する際に施す特殊効果をデジタルで擬似再現したテイスト。幻想的な雰囲気を生み出せる。

<Before>

<After>

 

シネフィルム(Roadmovie)

文字通りロードムービーのようなイメージを作り出せるテイスト。16:9などの横長にトリミングして、いっそう映画風にするのもアリだ。

<Before>

<After>

 

スウィートライト(ピンク)

階調をいっそう滑らかにしつつ、全体を淡いピンク色に染めるテイスト。ウェディングや女性ポートレート用にも好適だ。

<Before>

<After>

 

鶏卵紙

19世紀半ばに発明された古い写真の技法を擬似再現するテイスト。一般的なパラメーター調整だけで、この雰囲気を作り出すのは難しいはず。

<Before>

<After>

 

退色(グリーン)

色あせたプリントのような色調になるテイスト。たとえ被写体が現代的なものでも、懐かしく味わい深い印象を付加できる。

<Before>

<After>

 

ポートレートエフェクト3

肌を明るくピンクっぽい色合いに仕上げられるテイスト。周辺ぼかしなど他の機能と組み合わせるのも効果的だ。

<Before>

<After>

 

まとめ&キャンペーン情報

このように、SILKYPIX Developer Studio Pro 10は、まさに現代人のニーズにぴったり適したRAW現像ソフトに仕上がっている。今回は新機能を中心に紹介してきたが、色再現性や階調性といった従来からの強みはこの最新版でも十二分に発揮されており、これからRAW現像を始めたい人はもちろん、かつてRAW現像に挫折してしまった人、他の人とは違った写真を目指したい人にもおすすめできる。

 

なお、2020年3月31日(火)までの期間限定で、通常価格(税込22,000円)よりも3,200円お得な税込18,800円で購入できる「SILKYPIX Developer Studio Pro10 発売記念キャンペーン」が開催中だ。最新バージョンがお得に購入できる、このチャンスをお見逃しなく。

■SILKYPIX Developer Studio Pro 10の詳細を公式サイトで見る

■SILKYPIX Developer Studio Pro 10の無料体験はこちら

■SILKYPIX Developer Studio Pro 10の購入はこちら