小振りなボディに太めのレンズ鏡筒。正直、ちょっとアンバランスな感じだけど、このあたりからも“写りに対するこだわり”が感じられる。
レンズ鏡筒の周囲にはコントロールリングが設けられている。レンズ設計の関係もあり、キヤノン パワーショットS100のリングよりも出っ張りが目立つが、ボディ自体はけっこうスリムである。う~ん、リング脇の「Vario-Sonnar T* F1.8」の文字がシブいねぇ。
本日(6月6日)発表された、待望の高級コンパクト『ソニー サイバーショット DSC-RX100』を先日使用したので、その実写レポートをお送りしますっ! いや、何が待望って、2005年11月発売の「サイバーショット DSC-R1」以来だからねえ、ソニー製の“高級コンパクト”って呼べる製品は。まあ、あのDSC-R1はレンズ性能を含めた写りは良かったけど、さっぱりコンパクトじゃなかった(笑)。しかも、ボディ素材に高級感もなかったし…。
でも、今回久しぶりに登場した最新のRシリーズは「これぞ高級コンパクト!」と呼べる仕様&性能だった。掌(てのひら)に収まるコンパクトサイズのボディは、アルミ製でマットブラック仕上げのとても高品位なもの。また、人によって好みは分かれるだろうが、エッジをきかせたシンプルな造形は、高級コンパクトに相応しい“上品で飽きのこないデザイン”だと思う。
スペック面に目をやると、開放「F1.8」を誇る光学3.6倍ズームの「カールツァイス バリオ・ゾナーT*」が目を引く。カールツァイスブランドの中でも「特上」になるT*(Tスター)仕様のレンズを搭載する高級コンパクトって、これまたDSC-R1以来になるよねぇ。
そして、そのT*レンズが描き出す像を受け止める撮像素子は、1.0型・2020万画素の「Exmor CMOSセンサー」。ちなみに、この1.0型(13.2×8.8mm)の面積は、一般的なコンパクトデジカメに搭載される1/2.3型の約4倍。1画素あたりの受光面積も、従来サイバーショット(1/2.3型・1800万画素)の約3.6倍である。
レンズ、センサー、画像処理エンジン「BIONZ」。…この“三位一体”で生み出される画像は、期待に違わぬ高品位なものだった。当初は「1.0型・2020万画素」という高画素ぶりが逆に心配だったけど、その描写は期待以上だったね。同じ“広角F1.8”のレンズを搭載していても、1/1.7型や1/1.8型とはひと味違うボケ描写が得られるし、一眼ライクな繊細な描写もかなりイイ感じ。変な話、「APS-C・2430万画素」にも引けを取らないでしょ、この描写は!
最短撮影距離は広角側で5cm(望遠側は55cm)。特に寄れる数値ではないが、1.0型センサーと開放F1.8によって、かなり大きなボケ効果が得られたよ。
◆ソニー サイバーショット DSC-RX100 28ミリ相当で撮影 絞り優先オート F1.8 1/2000秒 WB:オート ISO125 JPEG
ここでは花みたいには接近してないけど「1.0型センサー・F1.8」の組み合わせにより、広角側でも背景がイイ感じにぼかせた。
◆ソニー サイバーショット DSC-RX100 28ミリ相当で撮影 絞り優先オート F1.8 1/40秒 -0.3補正 WB:太陽光 ISO125 JPEG
望遠側のボケ具合はこんな感じ。まあ、適度なボケ効果は得られるよね。レンズ描写もかなりイイ感じ!
◆ソニー サイバーショット DSC-RX100 100ミリ相当で撮影 絞り優先オート F4.9 1/125秒 WB:太陽光 ISO125 JPEG
操作面では、任意の機能が7つまで割り当てられる「ファンクションボタン」と、レンズ鏡筒部の「コントロールリング」との連携が素晴らしい。同様のリングは、キヤノンのパワーショットS100にも搭載されているが(名称はコントローラーリング)、複数の機能をスピーディーに選んでコントロールできるという面では、サイバーショット DSC-RX100のリングの方が格段に上。
ちなみに、ファンクションボタンに割り当て可能な機能は、露出補正、フォーカスモード、オートフォーカスエリア、ISO感度、ドライブモード、測光モード、フラッシュモード、露出補正、ホワイトバランス、DRO/オートHDR、クリエイティブスタイル、ピクチャーエフェクト、美肌効果、画質、画像サイズ、顔検出/スマイルシャッター、横縦比、未設定…と、多彩である。
あと、パワーショットS100のコントローラーリングには「カチカチ」とクリック感があるが、サイバーショット DSC-RX100のコントロールリングはクリック感がなくて滑らかに回転する。そのあたりの違いも興味深い。
その他の、基本性能&仕様の高さも特筆したいね。上の“ファンクションボタン割り当て機能”でも触れてるけど、一眼カメラと同様の仕上がり設定「クリエイティブスタイル」も搭載されている(サイバーショット初)。しかも、画質設定(JPEGかRAWか)に関係なく使用できる。これはウレシイねぇ~。「コンデジと言えども、一眼カメラと同様に基本機能や画質にこだわってます!」っていう主張が感じられてさ。
このシーンはISO400で撮影してるけど、これも予想以上に高画質(ノイズ感が気にならない)だった。ちなみ、元画像を等倍でチェックしたら、すんごくシャープ!
◆ソニー サイバーショット DSC-RX100 100ミリ相当で撮影 絞り優先オート F4.9 1/100秒 -0.7補正 WB:曇天 ISO400 JPEG
開放F1.8から最小絞り(F11)まで、どの絞りで撮影しても、かなり安定した描写が得られる。…が、ベストの描写はF2.8~F4くらいかな?(広角時)
◆ソニー サイバーショット DSC-RX100 30ミリ相当で撮影 絞り優先オート F2.8 1/125秒 WB:オート ISO125 JPEG
28ミリ相当の広角撮影でも、被写体にある程度接近したら、ボケ描写が楽しめるのがウレシイ。
◆ソニー サイバーショット DSC-RX100 28ミリ相当で撮影 絞り優先オート F1.8 1/200秒 -0.3補正 WB:太陽光 ISO125 JPEG
昼食を取った蕎麦屋の店内にて。行燈に描かれた水墨画(印刷だが)と、背後の蕎麦を食べる客のシルエットが印象的だった。
◆ソニー サイバーショット DSC-RX100 28ミリ相当で撮影 絞り優先オート F1.8 1/160秒 WB:太陽光 ISO125 JPEG
あと、これも基本性能になるんだけど、高級コンパクトも含めた多くのコンパクトデジカメは、連続的(連写モードではなく)に撮影しようと思っても、一眼レフのようなレスポンスでシャッターが切れないことが多い。1回シャッターを切ったらワンテンポ待たされる、みたいな感じで。その“ワンテンポ待ち”が感じられないんだよね、今回の「DSC-RX100」は。そのあたりも一眼ライクで「これは、かなり快適に使えるカメラだな!」と感じたね。
ポケットに収まるサイズと、上質な素材や仕上げのボディ。優れた描写性能と、上級ユーザーを納得させる機能や操作性。…そういった要素を高いレベルでバランスを取っている「ソニー サイバーショット DSC-RX100」は、他の高級コンパクトとはひと味違う、とても魅力的な製品だと思う。当然、ボク自身も買うだろうね(笑)。