2020年のCP+が中止になってしまったのは実に無念だったが、例年通り開催されていれば間違いなく台風の目になっていたであろう製品がある。2月13日にキヤノンが開発発表したフルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」だ。
3月13日には一部の仕様が追加で公開されたものの、センサー画素数をはじめいまだ明らかにされていない部分も多い。今回、そのEOS R5のプロトタイプ機の外観のみ公開され、撮影が許されたので、既存の情報と外観からの推論をしてみたいと思う。ちなみに撮影ではプロトタイプ機に接触するのも、他のカメラを並べて比較するのもNG。底面、レンズを外した状態は見ることもNGであった。
お披露目されたボディ外観からわかること
せっかくお披露目されたので、まずは外観から見てみたい。
上の画像は、EOS R5とEOS Rの画像を重ねてみたもの。両機ともマウントサイズは同じなので、ここで大きさが揃えられる。全体的にはEOS Rの高さでは数mm、グリップ逆サイドを5mmほど大きくしたような印象で、頭がわずかに低くなっている。底面が少し高くなったぶん、この画像ではほぼEOS Rとほぼ同等の高さで、あまり変わらないコンパクトな印象だ。
気になるのはプロトタイプだからなのか、上面カバーパーツの切れ込みが目立ちやすいところだ。ペンタ部の両側に線が入っており、この線自体はEOS RやEOS RPでもあったが、ここまで目立つ形で処理してなかった。RやRPよりも、ラインにエッジが立たず、緩やかになっているぶんちょっと目立つ形になっている。
このヘッド部分は他機種同様にWi-Fiなどの電波通信機能、GPSにも対応するため、金属カバーにはなっていない部分であることが推測されるが、製品時にはもっと差が目立たない仕上がりになってくると思う。
続いて正面からその違いを見てみよう。EOS R5では3つ、ボタンのような部分がある。右のグリップ中ほどにあるのは、おそらく赤外線の受信窓ではないだろうか。マウント右下はファンクションボタン、左下のゴムカバー状のものは、おそらくEOS 5D Mark IVなどにもあるリモートレリーズの端子カバーだと思われる。リモートレリーズは、EOS Rでは小型のタイプだったが、EOS R5では上位機種で使われている大型のタイプであることが推測できる。
背面はEOS Rからは大きく変わった印象を受ける部分だ。といっても、マルチコントローラーやサブ電子ダイヤルなど、一眼レフ上級機ユーザーからしてみるとお馴染みのインターフェースが並び、安心感さえ覚えるレイアウトになっている。特にジョイスティックインターフェースとなるマルチコントローラーは大きめで、操作しやすそうだ。
EOS Rでは搭載されなかった、EOSの代名詞といってもいいインターフェースである背面のサブ電子ダイヤルも復活。一方で、EOS Rで搭載された上面のサブ電子ダイヤルもそのまま残っているようだが、どちらも操作しやすい位置にあり、便利に使えそうなのは何よりだ。あと、SETボタンとQボタンが別になり、左上にはRATEボタンも用意されている。
ひとつに気になるのはバリアングルで動く画面の比率で、EOS Rと比べると、かなり縦長になっている。うっすら見えている画面サイズは従来と同じに見えるが、空いた下のスペースはただ空いているだけなのか、なんらかのタッチインターフェースが置かれるスペースになるのかが気になる。
ファインダー周りでは、光学系が変わっているかどうかはわからないが、視度補正ダイヤルのポジションが左右変更されて右手側に移り、親指での操作がしやすくなっている。アイカップ形状も変更されており、蛇腹のようなクッション形状が加えられ、少し固めだったEOS Rよりもソフトタッチになっているようだ。取り外しが可能かどうかは不明。
上面を見てみると、メインスイッチのポジションはそのままだが若干形状が変わり、操作しやすくなっている。EOS Rでは、ちょっと奥まりすぎていた。
シャッター周りでは、ほぼEOS Rのボタン配置そのままで、前述の通り上面のサブ電子ダイヤルは背面サブ電子ダイヤルが搭載されながらも残った。このポジションは露出補正などに割り当てると操作しやすいので歓迎だ。
上面表示パネルの液晶は、EOS Rとほぼ同じサイズの正方形に近いタイプになっている。ドットマトリックスタイプになっているようで、メインスイッチオフでも、ここは表示できるようになるだろう。
インターフェイス類は、リモートレリーズの端子が大型タイプになって正面に移動、そのスペースにシンクロ端子が搭載され、より上級機という位置づけになっていることがよくわかる部分だ。カバーが外せなかったので想像するしかないが、HDMIは従来のタイプC(miniHDMI)、USBはタイプC(USB3.1)だと推測する。あとはマイク端子とヘッドホン端子のみとなっているようだ。
グリップサイドには少し大きめのメモリーカードスロットがあり、デュアルスロットではあるが、どのメモリーカードを採用しているのかはまだ不明だ。利便性を考えるとSD UHS-II+CFexpressのデュアルだと嬉しい。
現時点で発表されている機能から考察してみた
内部機能としてすでに公表されている主な項目は、3月13日発表の内容を含めて以下の通り。
■8Kに対応した動画撮影機能
→フレームレート29.97fpsを実現
→水平方向クロップなしでの撮影可能
→動画撮影でも全モードでデュアルピクセルCMOS AF可能
→8Kでメモリーカードへの記録可能
■高速連写性能は電子シャッター最高約20コマ/秒、メカシャッター最高約12コマ/秒
■ボディ内手ブレ補正に対応し、レンズISとの協調で補正量もアップ
■AF被写体検出は「犬・猫・鳥」の「全身・顔・瞳」に対応
■新サービスであるimage.canonに対応し、カメラからの自動画像送信ができる
まず気になるのは8K対応だろう。これは開発発表当初から明らかにされていた部分だが、特に注目したいのは3月13日に追加で発表された「水平方向クロップなしでの撮影可能」というところ。
8K動画のサイズは「7680×4320=3317万7600画素」。それより撮像素子の画素数が多くなると、一度リサイズの処理が入ったり、あるいは8K相当部分のみの画素を使って(クロップして)撮影する。しかしながら、EOS R5では「水平方向クロップなし」と公表されているので、おそらく横幅はその画素数に沿ったもの、つまり横幅7680画素で3:2となると、7680×5120ピクセル=3932万1600画素。よって、センサーの有効画素数は約3932万画素あたりと予想する。開発発表当初はもっと大きな画素数をベースにクロップ対応での8Kだと考えていたが、「水平クロップなし」という情報から考えれば撮像素子の画素数はこの線が妥当のように思える。
8Kは興味がない、動画は興味ないという人も、8Kが撮れるほどの画像処理エンジンを搭載している、あるいはそこから静止画の切り出しもできるとなると、話は別だろう。8K動画のサイズは、先ほど触れたように「7680×4320=3317万7600画素」。ここから切り出した静止画の画質はEOS Rのラージサイズ「6720×4480=3010万5600画素」で撮影した画素数よりも大きくなる。
画像処理エンジンDIGICも、おそらく8ではなく9、あるいはひとつ飛ばしてDIGIC-Xとかになるのだろうか。ただ、8K動画を記録するには、それ相応の高速対応のメモリーカードが必要になり、CFexpressは必須となるだろう。
また、撮像素子は、従来と同じく有効画素が撮像と位相差AFの機能を兼ねるデュアルピクセルCMOS AF対応。AF認識機能としては、瞳AFはもちろんのこと、新たに「犬、猫、鳥」の「全身・顔・瞳」に対応と公表されている。他社も動物認識が強化されているが、EOSがどこまで認識度があるのか楽しみなところだ。同時に、この認識度の高さはEOS RやEOS RPにもファームアップで反映してほしいと願う。
連写性能では、EOS Rシステムとしては初めてメカシャッターを搭載しているのも興味深い。また、EOS M6 Mark IIのように電子先幕シャッターは非搭載にしてしまうのか、EOS 90Dのように選択肢として残すのか、そのあたりは気になるところ。電子先幕シャッターは有用なので、できれば高速シャッターを1/2000秒に制限して残してほしい。
あとボディ内手ブレ補正機構は搭載しつつ、EOS Rとほぼ同じサイズに収めている点は素晴らしい。注目はこれがどのくらいの効果なのか。ニコンが約5段効果なので、同等かそれ以上を望みたいところだ。
このような感じで、外観の説明と、そこから伺える予想を立ててみたが、昨今の情勢を鑑みると、若干登場が遅れることもあるだろう。ただ、間違いなくEOS R5はEOS Rシステムの中核機となるだけに、業界全体を盛り上げる起爆剤になってほしいと願うばかりだ。