5,000円以下限定“安良”カメラバッグ探訪 第1回「Amazonベーシック カメラリュック 一眼レフ用 12.1L ブラック」
インターネットでカメラ機材を眺めていると「うそ! こんなに安いモノがあるの!?」という製品を発見することはないだろうか? しかし、賢明な読者諸氏のほとんどは「きっと、安いのにはそれなりの理由があるはず」と冷静になり、購入に至らないことも多いだろう。とはいえ、気にはなっている。今回は、そんな格安カメラ機材のなかでも“使い心地”がものをいうカメラバッグについて、実際に購入して試してみようという企画である。
今回の企画に際し、購入の目安として「5,000円以下」という金額設定を設けた。これが高いのか? 安いのか? については、さまざまな意見があるだろう。しかし、バッグのサイズなどにもよるが、数十万円~場合によっては中身の合計価格が100万円超える機材を入れることもあるカメラバッグの価格が5,000円以下というのは、冷静に考えるとちょっと不安になるのも事実である。
参考までに私が現在メインで使用しているカメラバッグ「タムラック アンビル23」のケンコー・トキナーオンラインショップ公式店での記事執筆時の価格は約54,450円であった。レビュー用の機材を借りることが多いので、安全に機材を運べるように信頼度の高いカメラバッグを意図的に使っている。これに対し、今回の連載で自腹購入するカメラバッグは約1/10の価格帯。不安がないとはいわないが、レビューアーとしては実に興味をそそられる。積極的にポチっていきたい。
世界でいちばん売れているかもしれないカメラリュックを購入
本企画の内容が決定した時点で避けて通ることはできないと考えたのが、Amazonのプライベートブランド「Amazonベーシック」のカメラバッグである。実は、リュックタイプやショルダータイプ、スリングバッグタイプなどさまざまなタイプが用意されている。そして、どれも安い。
今回購入したのは「Amazonベーシック カメラリュック 一眼レフ用 12.1L ブラック」(以下、12.1Lバッグ)である。価格は3,039円(税込)に10% OFFクーポンを適用して2,751円(※)。筆者はAmazon Primeユーザーなので送料は無料だった。
※編集部注:価格は筆者購入時点ものです
購入時に気になったのは、カスタマーレビューの評価数が購入時点で16,690件もあったことだ。よくいわれる5%理論みたいなものから推測すると、購入者の20人にひとりが評価を行っているとして(そんなに多いか?)、推定購入者数は333,800人。北海道第二の都市である旭川市民のほぼ全員に配布できるレベルで売れていることになる。この数字はあくまで想像なので実際のところはわからないが、とにかくカメラバッグとしては規格外だと思う。
高級感はないものの、すべてがしっかりそろっている点に感心
大前提として約3,000円のカメラバッグである。それを思うと当然といえるのだが、全体にちょっと素材が薄くて、なにか密度が足りないスカスカとしたやわらかさが気になるという点は感じられる。しかし、それ以外は本当によくできているのにびっくりする。
例えば、外寸で約29.2×18.3×39.6cmとさほど大きなカメラリュックではないのだが、ウエストベルトやチェストストラップまでしっかりと装備されており、ある程度機材を詰め込んでも持ち歩く際の負荷が小さくなるように配慮されている。ちなみに、中身を何も入れない状態でのバッグの実測での重さは約0.89Kg(これを計測するための秤もAmazonで購入。筆者は数値化すると安心するタイプである)。
また、大型の三脚を装着するのは難しそうだが、バッグのサイドには三脚用のストラップもしっかり用意されている。メイン収納部分を9つに仕切るクッションの出来も悪くない。仕切りは面ファスナーで固定されており、レイアウトの変更が可能だ。メイン収納部分のフタに装備された透明なポケットも高級なカメラバッグの専門ブランドなどと同じような仕様になっている。
さまざまなカメラバッグを研究して必要な部分は採用し、必須ではない部分をカットしてコストダウン。加えてAmazonの販売力による大量生産でさらにコストダウンしたのだろう。価格の割に、非常によくできたカメラリュックという印象だ。
1点だけ、これがないのか? と思ったのはレインカバー。実は以前に同じAmazonベーシックの「Amazonベーシック カメラリュック 一眼レフ用 ラップトップ収納可 22.8L」(以下、22.8Lバッグ/参考価格:4,480円)を購入したことがあるのだが、その際は付属していた。今回の12.1Lバッグでは別売ということなのだろうか。
実際に機材を入れてみたら、驚いた
続いて、肝心の収納力について見ていく。以前に購入したAmazonベーシックのカメラリュックが22.8Lなのに対して本製品は12.1L。この数値による容量の違いのみを認識していたので、22.8Lバッグの半分くらいしか入らないだろうと予測していたわけだ。
しかし、実際には、
●カメラボディ(ソニー α7R III)
●レンズ
・シグマ 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary
・キヤノン EF17-40mm F4L USM
・キヤノン EF85mm F1.8 USM
・キヤノン EF100mm F2.8 マクロ USM
・シグマ MOUNT CONVERTER MC-11(マウントアダプター)
●アクセサリー
●ブロアー
●メディアケース
●予備バッテリー×2
●レンズクロス
が、ややぎっちり目ではあるものの普通に収納できる。機材を詰め込んだ状態の実測での重量は約5.89Kgであった。
これは簡単な取材なら12.1Lバッグだけでいけてしまうレベルだ。私の感覚からいうと22.8Lバッグと収納量的にほとんど変わらない印象だったのである。
気になったので比べてみた。
数値上の容量では22.8L対12.1Lと2倍近い差があるふたつのバッグだが、実際にレンズを入れてみると、それほどの差は感じない。実は22.8Lバッグは、背負った状態で下になる部分では約12cmある深さが上部では約7.5cmしかなく、レンズによっては立てて入れることができないという弱点がある。これが容量の数値ほど実際の収納量に差を感じない1つの要因かもしれない。ただし、22.8Lバッグにはメイン収納部の下にノートパソコンを収納するスペースが存在する。
22.8Lバッグを買ったときに、今回購入した12.1Lバッグも非常に気になっていた。しかし、22.8Lバッグの写真などを見て「容量22.8Lでこの程度の収納量なのだから、12.1Lはエントリー機のダブルズームキットレベルの機材しか入らないだろう」と勝手に思い込んでいた。22.8Lと12.1Lという数値スペックに惑わされたのである。実際買ってみないとわからないものだ。
結論:不満点は細かなもの。コスパは確かに最高だった
高級感はないものの、サブバッグとしては十分な収納量に、価格の安さ、完成度の高さ。レンズやカメラを入れるメイン収納部分の深さが全域で約12cm確保されているので、多くのレンズを立てて入れることができるのも重要なポイントだ。多くの口コミにもあるように、コスパは最高である。
さて、自腹で購入しての不満点はないのかと聞かれれば、細かなものがいくつかある。
まずはファスナーの引き手部分である。黒地に白文字で大きく「amazonbasics」のロゴが入ったものが全部で7つ。個人的には私のカメラバッグがアマゾンベーシックであることをアピールする予定はないので「amazonbasics」のロゴはないほうがうれしかった。ちなみに22.8Lバッグには「amazonbasics」のロゴがタグで付いていたので縫い付けてあった糸を切って外した。でも、ファスナーの引き手は外せないじゃないか。
あと、22.8Lバッグも同じだったが、なぜリュックを背負うとレンズを付けたカメラがいちばん下になるレイアウトでメイン収納部が仕切られているのか。望遠レンズを装着して収納すると液晶モニターがいちばん下になるレイアウトなのが納得できない(記事内の写真では機材を入れる時点で仕切りを動かして逆になるよう直している)。あと、数百円レベルの価格アップなら構わないのでレインカバーは付属にしてほしい。
不満点についてはこのようにスケールの小さい、重箱の隅をつつくようなものがいくつかある程度だ。
実際に何度も撮影に背負っていった感想としては、思っていた以上に機材が入るので、長い時間歩き回っていると「この容量のリュックにいるのかな?」と思っていたウエストベルトやチェストストラップを予想以上に重宝した。収納量、価格、大きさなどを含め、ひとつもっていると誰にとっても便利なカメラバッグに仕上がっているといえる。ただし、推定30万人オーバーの世界のフォトグラファーとおそろいという点は心強くもあり、ちょっとイヤかもしれない。