5,000円以下限定“安良”カメラバッグ探訪 第4回(番外編) マウンテンハードウェア フリューイッドベストパック 10
本連載は、タイトルのとおり5,000円以下のカメラバッグを実際に購入して使い勝手を検証していこうという企画なのだが、4回目にして早くも番外編。というのも、実は完全に私物のつもりで購入したバッグがひとつあったのを思い出したのだ(一体いくつバッグを買えば気が済むのだろう)。自宅近所のアウトレットモール・レラで購入した、マウンテンハードウェアの「フリューイッドベストパック 10」である。そもそもカメラバッグではなく、かつ購入価格が6,820円(税込)であったため、この連載で紹介する予定はなかったのだが、このバッグを使ってちょっとしたDIYをしてみたので、番外編として紹介したい。
150-600mmの超望遠を背負って軽快に動きたい
我が家の近所の千歳市青葉公園にはエゾリスがたくさんおり、愛らしい姿が撮影できる。そのため、筆者はこの冬、Sony α7R IIIにSIGMA MOUNT CONVERTER MC-11でマウント変換、SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporaryを装着して、約4kmのコースを歩きながら毎日のように撮影していた。
冬の間は道が凍結したり、雪が積もったりしていて転倒の危険が高く、カメラ機材にも気を配りながら慎重に進む必要があった。しかし、コースの雪が溶けたいま、もっと軽快に動き回りながら撮影を楽しみたいという欲が出てきた。なんなら撮影のついでにちょっとしたウォーキングもできれば健康的では? そんな発想から、超望遠レンズを背負いつつ、軽快に動けるカメラバッグを探すことにした。
移動中の荷物や持ち物の“揺れ”が負担を大きくする
ウォーキングやジョギングをした経験がある方ならわかると思うが、移動中に荷物や持ち物が揺れるのは非常に気になるし、不快で疲れる。以前、ジョギングにハマっていたときに、揺れるiPhone Plusが気になって嫌になり、購入したのが上の写真のマウンテンハードウェアのシングルトラックレースベストパックだ。上半身を包み込むように密着するのでフィット感がすさまじく、ポケットに入れたスマホなどの揺れもほとんど気にならないスグレモノである。
このマウンテンハードウェアのシングルトラックレースベストパックの背中側にはリュックのように荷物を収納するスペースがある。ここにSony α7R IIIにSIGMA MOUNT CONVERTER MC-11とSIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporaryを装着した状態で収納すれば、身体に密着させた状態で負担が少なく持ち運べるのではないかと考えた。
しかし、問題はふたつ。この収納スペースにはSony α7R IIIにSIGMA MOUNT CONVERTER MC-11とSIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporaryを装着した状態どころか、SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary単体すら入らない。さらにもうひとつの問題は、走ることを主目的としているランニングベストは軽量化のためペラペラで、クッション性がまったく期待できないのだ。
レンズケースを自作するところからはじめてみた
当初はカメラにマウントアダプターとレンズを装着した状態でレンズ部分に市販のレンズケースやレンズポーチ、レンズ用巾着といった製品を入れ、シングルトラックレースベストパックよりもう一回り大きなランニング用ベストかバッグにレンズを下にして入れればいいと考えていた。
しかし、レンズフードを含めた直径が約12cm、長さが約30cm(レンズフード逆付けの状態)というサイズのレンズケースやレンズ用巾着は見つからない。150-600mm専用ケース的な製品はあるが、レンズ単体を収納してファスナーできっちり閉じるフタがあるので今回の目的には適さない。
欲しいものがないならば、作るまで!
極論するなら内径約12cmで高さ約30cmの円筒形のクッション材でできたものならよいのである。自宅のなかで目に付いたのが、車中泊用の銀マット。ホームセンターなどで数百円レベルから購入が可能だ。我が家にはたまたま、使ったあとの切れ端があった。接着剤は、これも以前なにかを作ったときに余っていた黒の布ガムテープ。設計図を作るなどはせず、レンズにそのまま巻き付けて、仮止め、あとは必要なサイズにハサミで切って、外側を黒ガムテープで補強した。作業時間は約10分。
SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | ContemporaryにSIGMA MOUNT CONVERTER MC-11を付けてα7R IIIを装着することもあれば、SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporaryに直接EOS 6D Mark IIなどのキヤノン系一眼レフを装着することもある。するとレンズ先端からボディまでの長さが変化して、クッション材の接触する部分がレンズ先端だけになったり、ボディやボディグリップ部分だけになったりして負荷が分散されなくなることを恐れて、ケースの底に入れるクッション材の枚数を調整することでケースの深さを調整できるように工夫した。
レンズケースごと入るバッグを探す
あとは、このレンズケースがぴったり収納できる大きさのバッグを用意するだけだ。前述の通り、機材が揺れてしまうと歩きづらいため、なるべく身体に密着する構造のものが望ましい。ということで、ラニングバックパックやトレイルラン用リュックなどを中心に探してみることにした。
収納したときの安定性を考えると、ギリギリぴったり入るバッグを選択したい。幸いなことに我が家の近くにあるアウトレットモール・レラには数多くのアウトドアブランドが出店している。ショップを巡り、トレイルラン用リュックなどの目的に合ったバッグを見つけるたびに、実際にレンズケースごと機材を入れて試したところ、ぴったりと機材が収まったのが、冒頭で紹介したマウンテンハードウェアのフリューイッドベストパック 10であった。
このバッグの容量は10Lということだが、15Lや20L容量の製品でも機材が収まらないこともあったので、実際に試してみないとわからないものだ。近くにショップなどのない方は、アマゾンなら「Prime Wardrobe」でいくつかの商品を取り寄せて試してみる方法もあるが、安価な製品はほとんど対応していないのが残念である。
フリューイッドベストパック 10の使い勝手
予想していた以上にぴったりとしたサイズのバッグを購入できて、非常に満足した。容量10Lタイプなので予想以上にコンパクトなのもうれしい。また、ベストパックの名前の通り、しっかりと身体を包むように覆うベストのような作りも、揺れが少なくなりそうでいいかんじだ。
フリューイッドベストパック 10は、その名のとおり、バッグではなくベストパックであるというスタンスを崩さないようである。確かにリュックのストラップというよりは、メッシュ素材のベストにバッグ部分を装着したイメージに近いデザインになっている。ストラップ(ベスト)部分にはゴム製の2本のチェストストラップが用意されており、さらにしっかりと身体にバッグを密着させてくれる。実際に撮影に出掛けてみても、移動中、背中の荷物をあまり気にすることがなく、非常に快適だった。2本のチェストストラップを使って、しっかりと身体にバッグを密着させるのがコツだ。
入れたいレンズとカメラ本体の大きさに考慮して慎重にバッグを選択する必要はあるが、(手作り)レンズケースとランニング用バッグの組み合わせで超望遠レンズを持ち歩くのは予想以上に気持ちがよい。徒歩での移動が多いような撮影シーンでは意外とありな選択肢かもしれない。ただし、正統派のカメラバッグほどのクッション性はほとんど期待できないので、転倒や機材の落下などには細心の注意を払う必要がある。