GODOX AD300Proの発表が火を付けたストロボ買い替え熱
GODOX (ゴドックス) AD200が「GODOX AD200Pro」にバージョンアップし、上位モデルである「GODOX AD300Pro」も2020年6月19日に発売。調光制御がどちらも1~1/256となったことなどから、これを機にどちらかのモデルに買い替えたいという買い替え熱がフツフツと湧いてきた。
調光制御が1~1/128から1~256へと拡大し、より細かな光の制御が可能なったことは、スタジオでカメラやレンズの実写チャートなどを撮影している筆者にとっては、ストロボ買い替えの大きな要因である。また買い替えにあたっては、屋外で明るいレンズの開放付近で撮影する際にストロボが活用できる、ハイスピードシンクロ機能も必須項目の一つと考えている。
現状の不満を解消するのは最新のAD300Proか、それともコンパクトなAD200Proなのか
国内販売が開始された「AD300Pro」のスペックをみて、スタジオ用のモノブロックストロボシステム (家庭用100V電源対応の400wの2灯) と屋外用のストロボシステム (単3形電池を電源とするYONGNUO SPEEDLITE YN560 III×2 + Manual Flash Controller YN560-TX) を「AD300Pro」の2灯もしくは「AD200Pro」の2灯+ワイヤレスコントロールシステムに一本化できないかというのが、今回の買い替えプランである。
現在のそれぞれのシステムに対する不満は、自宅用ストロボシステムでは調光制御が1~1/16と細かな調光ができず、電源を含めたすべてがワイヤード (ケーブル接続) だということ。屋外用ストロボシステムは、ワイヤレスのシステムではあるが光量が弱く、TTLやハイスピードシンクロに対応していないことだ。ワイヤレスで複数のストロボを発光させるというと、かなり高度な撮影テクニックのように思えるかもしれないが、最近では自動で光量を決定してくれるものも登場し、かなり手軽にできるようになっている。
スペックを比較してみた
自宅スタジオと取材先での両方で使うことを考えると、コンパクトさとストロボパワーとのバランスが重要になる。また、当然コストパフォーマンスも見逃せない要素になってくる。まずは、現在使用している「YONGNUO SPEEDLITE YN560 III」と「GODOX AD200Pro」「GODOX AD300Pro」の機能を表にして比較してみた。
GODOX AD200Pro | GODOX AD300Pro | YONGNUO SPEEDLITE YN560 III | |
フラッシュモード | TTL / マニュアル / マルチ | TTL / マニュアル / マルチ | マニュアル / マルチ |
ガイドナンバー | スピードライトヘッド : 52 (ISO 100、35mm) フラッシュチューブヘッド : 60 (ISO 100、28mm) 200Ws |
300Ws | 58 (ISO 100、105mm) |
ワイヤレス対応 | ○ | ○ | ○ |
調光制御 | 1〜1/256 | 1〜1/256 | 1〜1/128 |
ハイスピードシンクロ | 最高1/8000秒 | 最高1/8000秒 | 非対応 |
電源 | リチウムイオンバッテリー | リチウムイオンバッテリー | 単3形乾電池 |
リサイクルタイム | 約0.01〜1.8秒 | 約0.01〜1.5秒 | 約3秒 |
発光回数 | 約500回 (フル発光) | 約320回 (フル発光) | 100〜1500回 |
大きさ | 172×54×75mm (フラッシュヘッドを除く) | 約190×100×90mm | 約190×60×78mm |
質量 | 約590g (フラッシュヘッド、バッテリーを除く) | 約1270g (バッテリーを含む) | 約350g (本体のみ) |
実勢価格 | 48,000円前後 | 69,000円前後 | 7,500円前後 |
▲フラッシュモードや光量、調光制御など、ストロボとして気になるスペック部分をピックアップして比較してみた。発売時期や販売形態の違いなどもあり、実勢価格の差が大きい。
実際に表にしてみると、最大の違いは価格ということになる。「AD300Pro」と「YONGNUO SPEEDLITE YN560 III」では、価格差がざっくり約10倍ある。「Manual Flash Controller YN560-TX」の実勢価格が4,000円前後なので、「YONGNUO SPEEDLITE YN560 III」×2 + コントローラーの「YN560-TX」まで買い揃えても2万円以下と、コストパフォーマンスは抜群だ。ワイヤレスのストロボシステムで、撮影してみたいユーザーにとっては、魅力的な価格と言えるだろう。ただしこのシステムでは、発光量を自動調整できるTTLには対応していない。
「AD200Pro」「AD300Pro」ともにGODOX X ProTTL対応フラッシュトリガーなどで、ニコン、キヤノン、ソニー、富士フイルム、オリンパス / パナソニック、ペンタックスの各カメラでのワイヤレスでのTTL撮影に対応する。調光制御は1~1/256で、最高1/8000秒のハイスピードシンクロに対応しており、専用リチウムイオンバッテリーでの駆動と、希望する基本的なスペックは十分にクリアされている。あとは使い勝手を左右する光量、大きさ、質量。そして実勢価格だ。
光量を比べてみよう。「YONGNUO SPEEDLITE YN560 III」はGN 58 (ISO 100、105mm)。買い替えを検討している「GODOX AD200Pro」のスピードライトヘッド時GN 52 (ISO 100、35mm) と同等かそれ以上に見えるが、照射角が105mmの数値となっているので、同じ照射角35mm時の光量を確認するとGN 39 (ISO 100、35mm) となっている。つまり発光量は、「AD200Pro」のほうが大きい。また、「AD200Pro」のフラッシュチューブヘッド時はGN 60 (ISO 100、28mm) 相当だ。「YONGNUO SPEEDLITE YN560 III」のISO 100、28mm時の発光量はGN 30だから、ガイドナンバーでの光量差は約2倍あることになる。圧倒的に「AD200Pro」が上に見えるが、フラッシュチューブヘッドにどのようなリフレクターを装着するかによって、実際の明るさは変わってくる。
ちなみに、ストロボの光量を示すガイドナンバー (GN) は、感度ISO 100で1mのときの値を示しており、大型ストロボでは出力をワットセカンド (Ws) という単位で表すのが一般的だ。大型ストロボでは、発光部 (バルブ) がむき出しの状態のものが多く、一般にはリフレクターを装着して光をコントロールする。バルブ、そしてリフレクターのサイズや形状などによって、同じ発光量でも被写体を照らす明るさが変わってくる。そのため、GNとWsを単純に比較することはできない。
なお「AD200Pro」は、スピードライトヘッドとフラッシュチューブヘッドを交換できる特殊な構造となっており、スピードライトヘッド装着時にはGNで、フラッシュチューブヘッド装着時にはWsでそれぞれ光量が表示されている。
いずれにしても、「YONGNUO SPEEDLITE YN560 III」の不満点のひとつである光量不足は、GODOXの」AD200Pro」で問題なく解決できそうだ。「AD300Pro」は、「AD200Pro」よりも大光量なので、こちらも選択肢としては問題ない。
光量の差以上に気になった大きさと重さ
「AD300Pro」と「AD200Pro」の光量差は、筆者にとって大きな問題にはならないため、気になるのは大きさ、質量の使い勝手ということになる。「AD300Pro」と「AD200Pro」の違いは、色温度調整可能なモデリングライトや色調整コンスタントモードによる発光色温度の変化を±100K以内に保つ機能など。基本的な機能というよりはプラスα的な機能という印象だ。なお「AD300Pro」は、ニューGODOXマウントを採用しており、「GODOX WITSTRO AD400Pro」などと共通のアクセサリーを使用することができる。
大きさについては、「AD300Pro」が約190×100×90mmの円筒形で、質量が約1270g (バッテリーを含む) に対して、「AD200Pro」は約172×54×75mm (フラッシュヘッドを除く) で質量が約590g (フラッシュヘッド、バッテリーを除く) と公開されており、2倍近い質量の差というイメージだ。
ただし、購入後にバッテリーとスピードライトヘッドを装着して実測すると「AD200Pro」は約895gだったので、質量差は約1.5倍程度といえる。基本2台セットで取材時などの持ち出すことが考えると、この大きさと質量の差はかなり大きい。モバイル性能では「AD200Pro」のほうが優位といえるだろう。
付属バッテリーの容量が違う?
光量とモデリングライト、色温度調整などの機能を除くと、ストロボとしての基本性能は非常によく似た「AD300Pro」と「AD200Pro」。ともにリチウムイオンバッテリーで動作が可能だ。GODOXのサイトでは、「AD300Pro」でも「AD200Pro」と「AD200」に採用されているリチウムイオンバッテリー「WB29」が使用可能と明記されているので、形状はほぼ同じなのだろう。
しかし、不思議なことに「AD200Pro」に付属する「WB29」は14.4V・2900mAh・41.76Whなのだが、「AD300Pro」に付属する「WB300P」は14.4V・2600mAh・37.44Whとわずかながら容量が小さいのである。付属のリチウムイオンバッテリーを使ったときのフル発光回数は、「AD200Pro」が約500回に対して、「AD300Pro」が約320回となっている。どちらもフル充電しておけば、取材先で電池切れといったトラブルはまず起きない十分な発光回数だが、「AD300Pro」に「AD200Pro」と同じバッテリーを採用すれば、発光量が大きいとはいえ発光回数が350回くらいまで伸びるのではないかと思ってしまう。なんらかの理由があるだろうが、ちょっと釈然としないものを感じる。
ストロボメーカーGODOXとは?
中国・深圳を本拠地にするGODOXの創業は1993年で、自社ブランドを持たないOEM生産を含めて、スタジオフラッシュやスピードライトの設計・製造などを手がけてきた。いわゆる中国新興系メーカーとしては老舗といえるストロボメーカーの一つである。ちなみにGODOXの漢字表記は「神牛」。WEB検索でヒットするから、ご存知の方も多いに違いない。
現在では、今回購入した「AD200Pro」や最新モデルの「AD300Pro」をはじめ、多機能で汎用性の高い高性能なワイヤレスストロボシステムを提供するメーカーとして、中国国内はもちろん日本やアジア諸国、アメリカ、ヨーロッパなどでも高い評価を受けている。GODOXのサイトには「1000人を超える優秀なスタッフと4つの製造施設、金型開発センター、金属/プラスチック射出センター、ハードウェア処理センターを含む合計30000m2の工場を通じて、製造コストの削減と製品化までの時間を短縮できます」とある。この設計・製造体制とマンパワーで、市場のニーズにいち早く対応しているのだ。
日本では、ケンコープロフェッショナルイメージング (KPI) が正規代理店として、販売からアフターサービスまでを担っている。ちなみに2020年8月現在、YONGNUOの正規代理店は日本にはないため、並行輸入などに頼ることになり、アウターサービスは期待できない。
いろいろ考えた結果、AD200Proを選択
「AD200Pro」で十分な光量を確保することができ、「AD300Pro」との光量の差も筆者の使い方では気になるほどのものではないことから、モノブロックストロボ的な使い方も、クリップオンストロボ的な使い方もできる「AD200Pro」を選択することにした。「AD200Pro」本体×2にコントローラー「GODOX X Pro」のキヤノン用をセレクトし、システムとしての導入を決めた。「X Pro」を使ったマニュアルでの発光はアクセサリーシューの形状が同じであれば可能なので、TTLの精度と使い勝手を検証してから、ほかのボディに対応する「X Pro」を増やす予定でいる。
実勢価格は「AD200Pro」が税込48,000円前後で「X Pro」が11,000円前後なので合計10万円強。「AD300Pro」を2灯購入すると15万円弱と、総予算で約1.5倍になる。そうした価格差も、「AD200Pro」を選んだ理由の一つだ。
買うなら保証付きの「国内正規品」を選びたい
また、購入時に気を付けたいのが日本国内正規品であるKPIの製品を選ぶこと。筆者は「YONGNUO SPEEDLITE YN560 III」などのYONGNUOストロボを日本国内に正規代理店などがないことを理解したうえで購入している。故障などのトラブルが生じた際には、修理することは考えず、処分するか買い替える覚悟でいる。しかし、さすがに安価とはいえ、システムで10万円を越えるGODOXの 「AD200Pro」を同じ覚悟では購入することはできないので、KPIの製品を選んだ。正規代理店がある今、あえて並行輸入品を購入するメリットはないだろう。
コストパフォーマンスの高いGODOXストロボ
最新モデル「AD300Pro」の発売をきっかけに、ワイヤレスストロボシステムの導入を検討したが、結論は「AD200Pro」となった。安価で使いやすく、高性能なGODOXのストロボは、自宅スタジオでの物撮り、屋外でのポートレート撮影、お店紹介といった『ストロボがあれば、もっとプロ並みに撮れるのに……』といったシーンを劇的に変えてくれる。
今回は、使いこなしまでには言及できなかったが、すでにストロボ撮影を行っているユーザーはもちろん、ストロボ撮影に挑戦してみたいというユーザーにも、周辺アクセサリーの充実度なども含めGODOXのストロボはおすすめできる。
筆者の選択した「AD200Pro」はもちろん、多くの機種が自動調光できるTTLを含めた制御が可能なシステムになっているので、チェックしてみてはどうだろうか。