解像力チェック
解像力の実写チャートは、小山壯二氏制作のオリジナルものを使用。A1サイズのオリジナルチャートを画面いっぱいに撮影し、各絞りでの描写の違いを観察している。チャートの0.8を完全に解像するには約4500万画素、チャートの0.7を完全に解像するには約5000万画素の解像力が必要となる。各種チャートは基本的にカメラのデフォルト設定で撮影。以下では、中央部と周辺部をそれぞれ抜き出した。撮影したJPEGデータを観察して評価を行っている。本記事にはその一部を掲載した。
絞り開放から優秀な中央部、画面全体の解像力ならF11がおすすめ
今回のテストではソニー「α7R III」(有効約4240万画素) に「MF 14mm F2.8 MK2」を装着して行ったので、基準となるチャートは0.8になる。「MF 14mm F2.8 MK2」は14mmの超広角で開放F値2.8と明るくコストパフォーマンスの高いエントリーモデル。そのため、絞り開放にはあまり期待はしていなかったが結果は良好であった。
絞り開放では中央部のシャープさに比べ周辺部の解像力の低さが目立つ。F11まで絞ると14mmの超広角だが十分に解像する。
<撮影条件>
ソニー α7R III 絞り優先AEにて各絞りで撮影 マニュアルフォーカス ISO感度 : 100 露出補正 : +1 1/3EV WB : オート カラーモード : スタンダード 画質 : JPEG X.FINE その他 : レンズ補正などは「α7R III」の初期設定のまま LEDライト使用
■中央部は絞り開放から十分以上に高解像
中央部は絞り開放のF2.8からかなりシャープ、基準となるチャートの0.8はもちろん、さらに小さな0.7も8割がた解像している印象。絞っていくとチャートを構成する白と黒のラインのコントラストが変化するレベルでシャープネスがアップする。ただし、中央部のシャープネスを得るために絞る必要性は感じない。周辺部の解像力を必要としないシーンでは好きな絞りを選択するといいだろう。
■周辺部はしっかり絞れば解像力は十分
周辺部分は、さすがに中央部の解像力の高さに比べるとかなり解像力は落ちる。とはいえ、絞り開放のF2.8でも、にじむようなソフト描写だが、筆者の予想よりも解像している。基準となるチャートの0.8で4割程度、さらに大きな0.9で6割程度の解像だ。基本的に絞るほどに周辺部の解像力はアップしていく。
F5.6あたりで周辺光量落ちの影響が軽減するためか、解像感がワンラックアップする。周辺部の解像力が中央部並みになるのはF8.0からF11あたりだ。筆者個人はF11のほうがおすすめである。F11でも、さすがにチャートの0.7までは解像しないが、0.8については8割がた解像した。
■歪曲は陣がさ型で発生、必要なシーンでは後処理で補正を
絞ると画面全体がシャープになるレンズだが、絞り過ぎでは解像力が低下する。特にF16以降では明らかに小絞りぼけや回折の影響でシャープさを失う。最大絞りはF22だが、F16以降は基本的に使わないのがおすすめだ。
開放F値がF2.8と明るいので、開放時には画面周辺で色収差の影響が大きいと予測したが、影響は軽微であった。ただし、歪曲収差の影響は大きい。陣がさ型にかなりはっきりと発生するので、撮影シーンによっては後処理などで補正する必要があるだろう。Adobe Camera Rawには原稿の執筆時点で「MF 14mm F2.8 MK2」のレンズプロファイルはないが、メーカーは同じ光学系を採用しているという「14mm F2.8 ED AS IF UMC」のレンズプロファイルがあるので、これを使うとよいだろう。
基本的には、中央部は絞り開放からシャープ。周辺部まで解像力を必要としないシーンでは好きな絞りを選択するといいだろう。また、周辺部まで高い解像力を必要とするシーンではF11前後をおすすめする。