実写作例
35mm判フルサイズで115.7°の広い画角と明るい開放F2.8
広い画角と明るい開放F値の本領が発揮される星景撮影。画面中央部にまるで真上に向かって立ち上るように配置した天の川をしっかりと描写してくれた。
周辺までシャープな描写
本レンズの解像力のピークであるF11を選択。画面中央部はもちろん、周辺部分に至るまで海面の波の様子や木々の葉など、とてもシャープに描写している。
結論! 買うならリニューアルした「SAMYANG MF 14mm F2.8 MK2」だ
筆者は今回のレビューを書くために参考にしたAmazon Kindle電子書籍『SAMYANG MF 14mm F2.8 MK2 レンズデータベース』だけでなく、それ以前に『SAMYANG 14mm F2.8 ED AS IF UMC 機種別レンズラボ』を制作している。このときのカメラはキヤノン「EOS 6D Mark II」で異なるが、同じように解像力やぼけディスク、周辺光量落ちなどの実写チャートを撮影し電子書籍にまとめた。
メーカー発表では「光学系は変わっていない」ということだが、公式サイトのMTFグラフが変わったり、絞り羽根枚数が変わったりしているので、その影響がどの辺りにあるのか、『SAMYANG 14mm F2.8 ED AS IF UMC 機種別レンズラボ』を参考に検証した。
ぼけディスクについては、絞り羽根枚数が6枚から9枚に変わった影響がしっかりと結果に現れていた。「14mm F2.8 ED AS IF UMC」は、開放のF2.8ではぼけの形は真円に近い。しかし、わずかに絞ったF3.2で絞り羽根の形の影響を受け、ぼけは明らかに6角形になる。一方、9枚の絞り羽根を採用する「MF 14mm F2.8 MK」は、開放のF2.8でぼけの形が真円に近いのはもちろん、絞っても絞り羽根の形は目立たず、円形に近いぼけを保っていた。周辺光量落ちと最短撮影距離と最大撮影倍率のチャートは、2本のレンズを比べても特段大きな違いは見られなかった。
気になったのは、解像力チャートである。レンズ構成などは従来モデルと同様で「世界のお客様から愛されている従来の14mmレンズの優れたイメージングクオリティーはそのままに維持」と公式サイトにも記載されている。しかし、同じ公式サイトに掲載されているMTFのグラフは明らかに異なっている。
そこで、過去に「14mm F2.8 ED AS IF UMC」とキヤノン「EOS 6D Mark II」でB1サイズの解像力チャートを撮影したデータと、今回「MF 14mm F2.8 MK2」とソニー「α7R III」でA1サイズの解像力チャートを撮影したデータを比較した。すると画面中央部の解像傾向には大きな差はみられなかったが、周辺部においては「MF 14mm F2.8 MK2」のほうが解像力の高い傾向が確認された。特に絞り開放付近の実写チャートにおける解像感は、地味ながら進化を感じた。
わかりやすい機能追加として、14mmのF2.8で星景写真を撮影することが多い筆者はフォーカスロックとウェザーシーリングを高く評価したい。フォーカスロックは星を撮影する際に無限遠で合わせたピントを確実に保持できるため、暗闇で撮影をする際にとても便利だ。ぜひ、ほかのレンズでも採用してほしい。さらに星景撮影ではレンズの結露防止にヒーターなどを使うこともあるため、カメラとレンズの装着部分からの水分やホコリの侵入を防ぐウェザーシーリングは、従来モデルになかったほうが不思議といえるだろう。
強く打ち出されていないが、地道な進化が感じられる光学系性能、さらにユーザーニーズに合わせた使い勝手の向上と、メーカー公表では光学系の変更はないということだが、「14mm F2.8 ED AS IF UMC」との実勢価格の差があっても、筆者は新型の「MF 14mm F2.8 MK2」を選択したいと感じさせる仕上がりだ。