伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』本誌人気連載の「レンズパラダイス」。2021年2月号の「レンズパラダイス」Other Shotsは、100回記念スペシャルと題して“今”気になるレンズを標準・望遠・超広角・単焦点のジャンル別にベスト5=計20本をリストアップ。誌面では紹介できなかった、第1位のレンズ以外のレンズを含めた20本の作例を紹介する。
標準ズームレンズ ベスト5
- 第1位 オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO ★
- 第2位 パナソニック LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6
- 第3位 ソニー FE 24-105mm F4 G OSS ★
- 第4位 ニコン NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S ★
- 第5位 ニコン NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
★は伊達淳一カメラマンが自分で所有し使っているレンズ
第1位 オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■2秒くらいまで手持ちでブレなく撮れ最短撮影距離も短い
5軸シンクロ手ブレ補正搭載のE-M1系ボディと組み合わせれば、1/2秒のスローシャッターは余裕でOK。2秒くらいまでは手持ちでブレずに撮れるので三脚いらずだし、24〜200mm相当の広い画角をカバーしているにもかかわらず、最短撮影距離も非常に短いのが魅力だ。
第2位 パナソニック LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6
■ワイド側の画角が広く寄りにも強い
20mmスタートの新世代標準ズームで、最短撮影距離がワイド端で15cmとレンズ前数cmまで寄れ、開放F値は並だが背景を大きくぼかせるのが魅力。レンズ重量も350gと軽く、ワイド端20mmの画角も実に使いやすく、室内やスナップ撮影に威力を発揮する。
第3位 ソニー FE 24-105mm F4 G OSS
■ズバ抜けてはいないが、全般的に水準以上の描写性能
飛び抜けて高画質というわけではないが、開放F4の標準ズームとしては絞り開放の周辺解像や色収差、ボケも水準以上。AF-Sのライブビュー拡大で狙った箇所にピントをしっかり合わせるのがポイントだ。最短撮影距離が38cmと短めで、テーブルフォト的な撮影も問題なくこなしてくれる。
第4位 ニコン NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
■絞り開放から安定した周辺画質
個人的には24-70mm F2.8ズームを積極的に買いたいとは思わないが、このレンズだけは別。絞り開放の周辺画質は、「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」をF5.6まで絞ったものよりも上。被写界深度やボケのコントロール以外に絞る必要性を感じないレンズだ。
第5位 ニコン NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
■高倍率ズームと思えない開放からキレのある描写
一般的な標準ズームに比べると最短撮影距離が長めで、開放F値もあまり明るくはないが、24mmから200mmまでカバーする高倍率ズームとは思えないほど、絞り開放から安定した描写。一眼レフ時代の高倍率ズームとは比べものにならないほどのキレの良さだ。
望遠レンズ ベスト5
- 第1位 キヤノン RF70-200mm F2.8 L IS USM ★
- 第2位 ソニー FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS ★
- 第3位 ソニー FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS
- 第4位 ニコン AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR ★
- 第5位 オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO ★
★は伊達淳一カメラマンが自分で所有し使っているレンズ
第1位 キヤノン RF70-200mm F2.8 L IS USM
■ほかのレンズと並行して持ち歩けるコンパクトさが魅力
個人的には200mmではまったく望遠が足りず、しかも、テレコンが装着できないので、本来であればアウトオブ眼中なレンズ。ただ、檻越しの撮影など開放F2.8の明るさを必要とするシーンもあるわけで、100-400mmズームにプラスαして携行できるコンパクトさと高速なAF駆動で、悩んだ末、遂に自腹購入してしまった。
第2位 ソニー FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■オールラウンドに使える稼働率No.1レンズ
ここ数年でもっとも稼働率が高い望遠ズーム。400mmまでカバーできる望遠力、被写体をロストしても瞬時にリカバリーできる高速なAF駆動、絞り開放からニジミのない描写 (周辺部はちょっと倍率色収差が残るけど) が魅力。動物園からヒコーキ、花の望遠クローズアップ撮影まで幅広く撮影できる。
第3位 ソニー FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS
■レンズ長は長いが、焦点距離の長さは武器になる
「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」に1.4倍テレコンを装着するよりも、「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」のほうが解像性能は上。野鳥や軍用機など、近くに寄れない撮影は焦点距離の長さが武器となるが、インナーズームでレンズ長が長いので、お気楽に持ち歩けないのがウィークポイント。
第4位 ニコン AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR
■24-70mm標準ズーム並みのサイズ感が魅力
PFレンズ採用で、300mmの単焦点レンズとは思えないほどレンズ長が短いのが特徴。24-70mm F2.8ズーム並みのサイズ感なので、70-200mm F2.8ズームにプラスαして持って出られる機動力が魅力。開放F4の明るさがあり、1.4倍テレコンと組み合わせ、420mm相当の超望遠撮影ができるのもイイ。
第5位 オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO
■マイクロフォーサーズでも堪える高い解像力
300mm F4レンズとしては割高感のあるレンズだが、センサーサイズの小さいマイクロフォーサーズに求められる高い解像性能を備えていて、換算600mmの超望遠とは思えないほどカリカリの描写が得られるのが特徴だ。1.4倍、2倍テレコンも併用でき、最長1200mm相当の超望遠域までカバーできる。
超広角ズームレンズ ベスト5
- 第1位 ニコン NIKKOR Z 14-30mm f/4 S ★
- 第2位 ニコン NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
- 第3位 シグマ 14-24mm F2.8 DG DN | Art ★
- 第4位 ソニー FE 12-24mm F4 G ★
- 第5位 LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE Zoom ★
★は伊達淳一カメラマンが自分で所有し使っているレンズ
第1位 ニコン NIKKOR Z 14-30mm f/4 S
■フィルターも使え、総合力No.1
沈胴収納で携帯性に優れ、14mmという超広角をカバーしているにもかかわらず、82mm径の円形フィルターがレンズにそのまま装着でき、レンズ保護フィルターを始め、NDやPLフィルターも使えるのは超便利。F14前後まで絞るとキレイな光条が得られる。総合力No.1の超広角ズームだ。
第2位 ニコン NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
■収差が少なく、周辺まで安定した画質ではこちらが上
無限遠では、絞り開放から四隅の点がちゃんと点に写るので、星景撮影には最強の超広角ズームだ。それだけ周辺の収差が少なく解像力も維持しているので、絞って被写界深度を深くしたときの周辺解像も際立っている。逆光耐性も素晴らしい。画質で選べばこれがNo.1だ。
第3位 シグマ 14-24mm F2.8 DG DN | Art
■お手ごろ価格ながら周辺まで安定した描写性能
前玉が突出した出目金ズームだが、このレンズも絞り開放から周辺の点像性能に優れているのが特徴。星景撮影に適しているのはもちろん、周辺画質にこだわる人も納得の超広角ズームだ。一眼レフ用よりも小型軽量で、価格的にもF2.8の超広角ズームとしてはお手ごろだ。
第4位 ソニー FE 12-24mm F4 G
■12mmスタート超広角ズームながら軽量なのが特徴
画面内に非常に強い光源を入れると、緑の円弧状のゴーストが生じやすいのがウィークポイントだが、約565gと見かけよりも軽量で、12mmスタートの超広角ズームとしては手が出しやすい価格。少し倍率色収差は残るが、周辺画質は画角の広さを考えると驚くほど整った解像が得られる。
第5位 LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE Zoom
■世界最広角ズームのワイド感が魅力
魚眼を除く超広角ズームとしては世界最広角。AFではなくMFレンズだが、絞り羽根をあえて5枚にし、絞り開放から鋭い光条が出やすいのが特徴だ。周辺画質は絞っても多少乱れは残るが、APS-C撮像範囲内の描写は絞り開放からかなりシャープ。16mmで縦位置でようやく入る建物が、10mmなら横位置でも余裕で入る画角の広さだ。
単焦点レンズ ベスト5
- 第1位 ソニー FE 135mm F1.8 GM ★
- 第2位 ソニー FE 20mm F1.8 G
- 第3位 フォクトレンダー MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5
- 第4位 富士フイルム XF35mmF1.4 R ★
- 第5位 タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD ★
★は伊達淳一カメラマンが自分で所有し使っているレンズ
第1位 ソニー FE 135mm F1.8 GM
■浅い被写界深度を生かした望遠撮影に最適
極めて浅い被写界深度からもたらされる大きなボケと、動きの速い被写体にも追従できるAFの速さを兼ね備えているのが特徴。焦点距離135mmで70cmまで寄れるので、花をフワッとボカした撮影には最適。動物園の檻越しの撮影で、動物との距離が比較的近い場合でも檻をボカして目立たせなくできるのが強みだ。
第2位 ソニー FE 20mm F1.8 G
■星景写真で使ってみたい高い点像再現性
絞り開放でも解像性能は極めて高く、周辺の点光源もほぼ点に写る。残念ながら借り物でしか使ったことがないので、星景撮影をする機会には恵まれていないが、開放F1.8と明るいので、F2.8超広角ズームよりも露光時間を半分にできるのが強み。近接撮影にも強く、後ボケもきれいな広角レンズだ。
第3位 フォクトレンダー MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5
■軸上色収差が徹底的に抑えられたマクロレンズ
ピント面だけではなく、アウトフォーカス領域まで軸上色収差が徹底的に抑えられていて、絞り開放からボケの色づきがまったく感じられない。AFではなくMFレンズで、ヘリコイドの回転角が極めて緩やかなため無限遠から等倍まで約1周と1/3回転もする。その分、デリケートなピント合わせが可能だ。
第4位 富士フイルム XF35mmF1.4 R
■軸上色収差はなく、球面収差による適度なにじみが好み
最近の大口径単焦点レンズは、絞り開放からニジミのないシャープな描写が得られるのが特徴だが、個人的には、軸上色収差はしっかり抑えつつ、最短撮影距離からポートレート撮影距離付近までは、絞り開放で球面収差による適度なニジミが出るレンズが好み。このレンズはまさにそういったテイストが気に入っている。
第5位 タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD
■旧タイプから定評のあるタムロン90mmのボケ描写
タムロンの90mmマクロ (タムキュー) といえば、マクロレンズにもかかわらず、ボケがキレイなことで有名なシリーズ。昔のタムキューに比べ、解像性能が向上し、色収差が少なくなった分、ボケが硬くなったという声もあるが、それでもどこか優しさを感じるのはボクの思い込みだろうか?
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